大罪戦闘企画

第三十公演《Die Kinder in einer Kiste》
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紺青ものえ @almiyy

「『特別』は、端の端まで繋がる限り『特別』だ」 特別とは自分が決めるだけではない。他人から押し付けられた物事ですら『特別』。そう、ただの子供を『箱』に入れ『特別』とするように、其処に当人の意思は必要ない。 既に目の前の怠惰も、この嫉妬も、『特別』で。 「拒んでも」

2013-12-28 15:14:07
紺青ものえ @almiyy

それに、とオリア・レゾンは目を細める。泣き腫らした目元が痛みを伝え。箱は黒さを増して、大きく膨れたような感触をその冷たい指先に与え。 「『特別』は箱にしまって、そして、終うべきでしょう?」 ……それだけが、箱に遺され忘れられた存在の価値で、理由。

2013-12-28 15:14:11
紺青ものえ @almiyy

(外界に存在する『特別』と自らを比べ)(『悲観』し嫉妬する)(僕は)(ぼく、は)(ああ) (――羨ましい)(―――な)(『遮断(しまって)』しまおうか) 悲観が低く、低く、虚ろに反響した。 (何故)(僕は)(       ?)

2013-12-28 15:14:20
紺青ものえ @almiyy

吹かれた炎にこの涙も焼かれるのだろうか。 ……『罪』を燃やすことのできる炎。 痛む体をさらに後ろへと。向かう炎に叩きつけたのは、尾をしまった箱。大きく膨れた箱を弾丸のように向かい来るそれに。 ……間に合わないな。 じりと焼ける熱に皮膚と服を焦がし、炙られた淡い青が煙を上げた。

2013-12-28 15:14:29
紺青ものえ @almiyy

火傷の熱と痛みに苛まれ、涙は止めど無く。血液は血を濡らし、思考はただ悲観に悲哀に沈む。 「僕は外にいる『君たち(特別)』に嫉妬する」 (自由で羨ましい) 「『特別』なモノはしまっちゃおうね」 見たものは、こちらを向いている、その人外の眼と口を持つ『頭』。 きっと守護に必要な、それ

2013-12-28 15:16:19
華夏の勇者 @battle_atom

「【特別】は…愛しいもの…」 片腕も、尻尾もなくなって、ついには頭まで狙われるなんて、と少年は内心大きく舌打ちをした。 あの腕は、愛しき少女を抱きしめる為のものだったのに。 あの尻尾は、少女を守る為のものだったのに。

2013-12-28 16:23:47
華夏の勇者 @battle_atom

きっと自分は、この相手を許す事は一生涯出来ないのだろう。 そんな思いが、少年の心に渦巻いて。憎しみは、恨みは、増幅する。 「愛しいものを、留めておこうとは思っても。終わらせることは、僕には…出来ない」 この頭さえなくしたなら、少年はもう、少女の願いを叶えてやる事はできない。

2013-12-28 16:24:46
華夏の勇者 @battle_atom

少女のたった一つ願いすら、奪おうとしている。 (だったら…、もう、願いをかなえてあげられないのなら…せめて、) ――最後の宝物だけは、【番人】として、自分は守らなければならない。 「竜を倒すのは…いつだって勇者の役目だ。でも、お前は勇者にはなれないよ、させないよ、だって…」

2013-12-28 16:25:14
華夏の勇者 @battle_atom

みしみしと嫌な音をたて、少年の身体は異形へと変わっていく。 片腕がもげ、尾を失っていても、それは、絵本にでてくる様な、竜の姿そのものだった。 『勇者は、何かを護る者だ!しまう者でも、奪う者でもない…!』 その太い脚で地を蹴り、大きな翼で風を裂いて、竜は【嫉妬】へと襲い掛かる。

2013-12-28 16:27:11
華夏の勇者 @battle_atom

少女を二度と両手で抱きしめられない悲しみと、少女を守る尾を失った口惜しさと、何よりも……自分たちの【楽園】を壊された、その憎しみを。 それら全てを込めて、全てを振り絞って、竜となった少年は大きく口を開く。 奪われそうになっているその頭部で、同じく相手のソレを食いちぎらんと――…。

2013-12-28 16:27:51
紺青ものえ @almiyy

(目の前の少年の憤慨は、仕方のないことだ)(わかっている)(悪いのは)(僕) (それでもしまい続けるしかない)(罪悪と悲観は両立させない、と爛れた指先を強く握って) (箱の外に、そして、目の前に『特別(それ)』があるならば) 目に溜まった涙に血が混じって。

2013-12-28 19:10:03
紺青ものえ @almiyy

(罪悪を持って、再び、『特別(オリアのように特別だと認識されたもの)』をしまおう) (外に在る彼らを箱に) 後ろで手を組んで、待っていたかのようににっこりと笑って泣いた。 少年――竜の形を深海で見据え、悲しげに。

2013-12-28 19:10:07
紺青ものえ @almiyy

「勇者は人だけが成れるものさ、僕は屍に埋もれるただの、」 呟くそれは陰鬱な声は途中で途切れた。何処にも反響することのない、閉じた場所で響く声に、黒い『箱』は渦巻くようにその色を濃くして。 「その『怠惰(頭)』は、しまっちゃおうね。そして――――終えよ」

2013-12-28 19:10:18
紺青ものえ @almiyy

呟いて見たのは、眼前に迫る大きな顎門。 それは憎しみと悲しみが込められて。 「……あは」 いつだったか誰にも憎しみを向けられず終わったそれを思い出して――。

2013-12-28 19:10:42
華夏の勇者 @battle_atom

(喰らえ。喰らえ。) (目の前のこいつは、僕らの【楽園】を脅かした者。) (僕…【私】の、大切な人を、私の【兄さん】を、壊そうとした人。) (させない。させないよ。)

2013-12-28 19:47:29
華夏の勇者 @battle_atom

(…愚かで愛しい、【私】のたった一人の【兄さん】。) (【アナスタシア】としてしか生きられない、脆い私の片割れ。) (……私の、宝物(トクベツ)。) このまま頭を飲み込んだとして、果たして自分は助かるのか。それとも、この【嫉妬】と共に消えるのか。竜にはわからない。

2013-12-28 19:48:18
華夏の勇者 @battle_atom

消えたら…少女は、やはり悲しむだろうか。 【少女】の恰好をした、化物(自分)の愛しい【兄】は。 (また君の願い…叶えてあげられなかったら、ごめんね…) 心の奥、僅かに残る理性の中で小さく謝ると、竜は目の前の幼いその頭に… その上に浮かぶ【箱】ごと、思い切り食らいついた。

2013-12-28 19:52:15
紺青ものえ @almiyy

深海は濡れて、しかし閉じないまま、ただじっと食らいつく凶悪な顎門、その中の牙を舌を、喉の奥を見続けた。 (これが   )(       で  )(         った) そう途切れ途切れに呟く悲観の言葉に頷いて。

2013-12-28 20:14:50
紺青ものえ @almiyy

人外のそれが頭を、箱を砕くように閉じるその暗闇の感触に口の端を緩めて。後ろに回した手、その指先で、自らを示す印を空になぞって。箱に限界までしまいこみ、飲み込み、遮断して。 「―――、」 『箱(自分)』の砕ける感触を最後に意識は黒く塗りつぶされ―――。

2013-12-28 20:15:15
華夏の勇者 @battle_atom

竜が、最後に感じたのは、肉を食らう感触と……それから、何だったのだろうか。 訳が分からないうちに、ただ恨みと、愛しき片割れへの懺悔をもって、その意識が途絶えた事だけは確かである。 最後に【箱】は、しまわれてしまったのか、竜だった少年の亡骸には、頭が無かった。

2013-12-28 21:36:10
華夏の勇者 @battle_atom

「…壊されて、しまったの…?」 竜が守り通した【宝】である少女は、その亡骸に寄り添い、必死にその体を揺する。 「ねぇ。」「ねぇ。」と。どれだけ呼びかけても、返事はない。 当たり前だ。頭が無いのだから。

2013-12-28 21:36:48
華夏の勇者 @battle_atom

「もう…壊れないって。……今まで一緒にいれなかった分。ずっと、ずっと一緒に行ってくれるって…言ってくれたのに……ねぇ、ねぇヴァーニャ」 首なしの骸を抱きしめれば、まだ少し暖かかった。 まるでまだ生きているみたいで、ずっとずっと、抱きしめていたいと少女は思う。

2013-12-28 21:39:49
華夏の勇者 @battle_atom

「……大丈夫、大丈夫よ…体が壊れても、君の魂があるのなら、何度だって何度だって…【僕】は欺罔し続けるわ…」 「【私】は、何度だって、【箱庭】を作ってみせるさ」 「…たとえ命を賭けても、…だってほら、君も【僕】に【私】にそうしてくれたんだもの」

2013-12-28 21:40:35
華夏の勇者 @battle_atom

少しずつ崩れていく少女の言葉。 それはまるで自分自身に言い聞かせるように、大丈夫、と何度も繰り返して。 …大丈夫かどうかなんて、彼女にすら分からなかったけど。 それでも、立ち止まるわけにはいかないのだと、少女はその骸と自らの身体を引きずって扉へと進み始めた。

2013-12-28 21:41:21
華夏の勇者 @battle_atom

「…【箱】は、留めるものだもの。大丈夫、大丈夫だよ…【僕】らは【永遠】だ」 取り残された【嫉妬だったもの】の幼い亡骸を目に映して、少女は小さく呟いた。 それは、誰への言葉だったのか、返事などある筈もなく。 「…ずっと一緒だよ」 音はただ、空に飲み込まれて、消えた。

2013-12-28 21:42:57
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