大罪戦闘企画

第三十公演《Die Kinder in einer Kiste》
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華夏の勇者 @battle_atom

「私の【箱】は、【箱庭】は、中の物を守る為にあるの。留める為にあるの。」 その感覚を出来るだけ顔に出さない様に、少女は淡く微笑んだ。 感情を欺くことは、少女に出来る数少ないものの一つで、その声からも、彼女の感情は汲み取れない。

2013-12-27 17:39:26
華夏の勇者 @battle_atom

「私の宝箱は、サンクチュアリ。永遠に消える事も、終わる事も、朽ちる事もない」 あの日、少女が己の全てを詰め込んだその【箱】は、今に至るまで永遠を紡ぎ続けている。 ――本来は争う為のものではない、少女の【罪科】。 けれど、自分達が護り続けてきた箱を壊そうというのなら話は別だ。

2013-12-27 17:40:03
華夏の勇者 @battle_atom

「もしあなたが私の大切な物(タカラモノ)をしまってしまうというなら、私は、それに抗わなくてはいけないわ」 憂いを含んだ、けれども、何かを決意した目で、少女は【嫉妬】の深い深海を見据えた。 ……その口元は、未だ笑みの形を崩さずに。

2013-12-27 17:51:04
紺青ものえ @almiyy

「それはよかった」 目を細め、涙を零しながら新たに黒い箱をふわりと浮かべる。細い手の先に不釣合いな黒い箱。指先から転がすようにすべらせて、遊ぶように。 黒い靴で砂を踏んで、 「最低なこの舞台で、『特別』な君たちと出会えてとても悲しいよ」 一歩進み、目を伏せて。

2013-12-27 20:57:01
紺青ものえ @almiyy

「君たちをどれだけしまえるだろう」 軽く投げるように、箱を飛ばす。しかし箱その速度は弾丸のように。 「しまうだけの、『特別(中身)』は在るだろうか」 向かうは少女。黒は真っ直ぐに。

2013-12-27 20:57:04
華夏の勇者 @battle_atom

【嫉妬】の手先に浮かんだのは、先程と同じ黒い箱。 それを此方へ投げる様な軽い動きを見せた、その瞬間。 少女の視界はぶれ、身体には衝撃が襲う。 「ひゃっ、」 小さく上がった少女の悲鳴は、少年の腕の中から。 どうやら箱が少女にぶつかる前に、少年が少女の身体をとっさに引き上げたらしい。

2013-12-27 21:31:42
華夏の勇者 @battle_atom

「…もうちょっと、優しく抱き上げて欲しかったわ」 少し拗ねたように、少女が頬を膨らませたのも束の間、その顔は直に破顔し、少女はその両腕を少年の首後ろへと回した。 「ねぇ、またあなたに辛い思いをさせちゃう…ごめんなさい」

2013-12-27 21:32:14
華夏の勇者 @battle_atom

その声は、小さく。相変わらず、その声に浮かぶ感情は読み取りづらいけれど。 「…大丈夫だよ、僕らの【箱】は、永遠だ」 少女に淡く笑いかけた少年は、少し離れた位置に少女の身体を下した。 そして向き合うは、相手の深海の瞳。 周りを劈く様な咆哮をあげ、少年は【嫉妬】の元へと駆け出した。

2013-12-27 21:33:57
紺青ものえ @almiyy

外れたと認識した瞬間、箱を此方へ引き戻す。少女は少し離れた場所へ。そして向かい来るの咆哮の主。悲しいな、争わないといけないなんて、と意識は悲しみに沈む。 「君の『腕』はあの子を救う『特別』なものだね」 深海は陰鬱に、その右腕を捉えた。先ほど少女を助けた腕の片方。

2013-12-27 22:23:05
紺青ものえ @almiyy

(誰かを助けることができる腕)(伸ばしても届かないこの腕とは違う)(触れて、掴めて、握れて、慈しめて)(羨ましい)(特別な) 「――しまっちゃおうね」 箱が無音のまま、その片腕を飲み込もうと影を濃くして。 それと同時に地を蹴って後方へと、跳んだ。

2013-12-27 22:23:56
華夏の勇者 @battle_atom

みしり、と。 片腕から感じる嫌な雰囲気。 見れば相手は再びその【箱】を手にしていた。 (またか…) あれは【特別】な物をしまうものではない。奪い、消し去ってしまうものだ。 少年は足に力を入れ、更に強く地面を蹴る。

2013-12-27 22:57:12
華夏の勇者 @battle_atom

このままではこの片腕はきっと使えなくなってしまう。 ならばせめて、その前に奴に一矢報いねば、と少年は奪われかけたその腕を大きく振りかぶった。 天に振り上げた腕は、少年本来のものよりも、太く、長く。 みっしりと鱗に覆われ、大きな爪を要するそれは、まるで怪物の様だ。

2013-12-27 22:58:20
華夏の勇者 @battle_atom

「僕らの、邪魔を、するなぁああああああああああ!!!」 すっかりと怪物じみた形状のソレを、少年に向かって大きく振り下ろす。 奪われてしまう前に、せめて、せめて少しでも相手を傷つけることが出来れば、と。

2013-12-27 22:58:46
紺青ものえ @almiyy

箱はしまう。しまって、しまって、しまって、 「――あ」 目の前に迫ったのは今奪っている手。手? それは人のものではなく、大きな爪と鱗の在る大きな腕。今後退している自分の体よりも速く伸ばされて、腹部に爪が到達した。 (抉れたら、きっと痛い。痛い。痛いだろうなあ)

2013-12-27 23:12:21
紺青ものえ @almiyy

悲観がこれ以上の回避を諦めた。その代わり、 「――終え」 爪が腹部をえぐる感覚、痛いと思う前の赤くて濁った灼熱に、悲しみがまして、考えることよりも先に自分の手は箱を握りつぶした。

2013-12-27 23:12:26
華夏の勇者 @battle_atom

腕は、届いたのだろうか。 一瞬、ほんの一瞬だけ、肉を抉る感覚をその腕が拾い、少年に伝える。 けれどその感覚はすぐに失われ、代わりに少年を襲ったのは、焼き切れるような激痛だった。

2013-12-27 23:30:23
華夏の勇者 @battle_atom

「…っあ、ぐぅう…っ!!」 ちらりと見れば、少年のその片腕は肩口より少し下の辺りからごっそりと無くなっており、綺麗すぎる切断面からは思い出したように血が滴り始めている。 ――まずい。 ――でも、腹を抉る事は出来たのだから、あとは。

2013-12-27 23:31:00
華夏の勇者 @battle_atom

残った腕で傷口を抑えつつ、地を蹴りぐるりと体を反転させる。 彼の後ろからは、ひょろりと長い、しっぽの様な物が現れた。 先程消えてしまった腕と同じく鱗に包まれたそれ。 少年はその尻尾を、回転の遠心力に従い、抉った相手の腹の傷目掛け、大きく横に薙いだ。

2013-12-27 23:31:29
紺青ものえ @almiyy

腹部の痛みにぼろぼろと涙を零し、転がりかけた体を無理やり立て直す。猫のように着地して、しかしその衝撃で一瞬溢れたような、押し出されたような血液が流れる。ぼたぼたと血を流す腹部を押さえて。 「すごいね、君は」

2013-12-28 00:14:51
紺青ものえ @almiyy

(泣いてはいけない)(痛くても、それは相手も同じだから) (でも、それでも) (この痛みは、悲しいことをしているから)(受けたのだろう) (悪いことをしているだろうか)(そんなつもりはないのだけれど)

2013-12-28 00:14:55
紺青ものえ @almiyy

「君はなんだろうね」 悲観の言葉に深海が深く深く光を受け入れること拒否し、少年を映す。 「君のその『人ならざる形』は『特別』なの?」 見たのは尾のようなそれ。振り回されるそれを回避するには、自分は小さすぎる。しかし、避けないわけには行かないと地を蹴って、さらに後ろへ。

2013-12-28 00:15:01
紺青ものえ @almiyy

しかし尾の先は、腕と腹部を再び傷つけて。 「しまっちゃおうね」 痛みには涙を。傷には箱を。 言葉はぶれず、ただ真っ直ぐに。

2013-12-28 00:15:10
華夏の勇者 @battle_atom

「【特別】ではないよ。」 少年を再び襲ったのは、身体の一部がしまわれそうになるあの感覚。 次はどうやらこの尻尾らしい。 目の前の【大罪】の【特別】とやらがますますわからなくなってきて、少年は溜息をついた。 こんなものすら、相手の目には【特別】に映るのだろうか。

2013-12-28 11:37:35
華夏の勇者 @battle_atom

「この姿は、僕が背負うべくして背負ったもの。罪に対する、当たり前でごく普通の報いだ」 少女が宝を包む【箱】の核だとするなら、少年は、【箱】の守り人だ。 彼らが読んできた絵本の中では、いつだって、宝箱を守るのは怪物たる竜の役目だった。 なら、この姿は寧ろ必然と呼ぶべきものだろう。

2013-12-28 11:38:07
華夏の勇者 @battle_atom

「ただ普通と少し違うだけのものを、僕は、【特別】だとは思わない」 吐き捨てる様にそういうと、少年は思い切り息を吸い込んだ。 吸い込んで吸い込んで、辺りの空気を全て食らいつくほどの勢いで。 そして、相手をその獣眼で睨みつけると、それら全てを炎に乗せて、勢いよく吐き出した。

2013-12-28 11:38:33