【第一部-陸】誰かを見つめる時雨の初夢 #見つめる時雨

時雨×扶桑、山城
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誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

僕は山城に抱き着いた。もう声にならない声で、二人の名前を呼び続けていた。 「山城…扶桑…良かった…良かったぁ…」 二人が困惑する。僕が泣いている理由が分からないせいだ。でも、今僕にはそれを説明できる余裕がなかった。僕は泣くしか出来なかった。 山城の手が、僕を包んだ。

2014-01-03 03:39:01
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「大丈夫よ…大丈夫…」 山城が僕を抱きしめる。山城の温もりが、僕の冷えきっていた心を温めていった。 「僕……夢を…見たんだ…あの……戦いの……」 やっと振り絞って出した言葉。その言葉で、二人は全てを察したようだった。 「そう…大丈夫…私達はここにいるわ…」

2014-01-03 03:44:11
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「僕…あの時…一人だけ逃げ延びて…」 「何を言ってるのよ。貴女も私の艦隊の一員として、最後まで戦ってくれたじゃない。むしろ貴女だけでも生き延びてくれたことが、何よりの救いだったわ…」 扶桑が反対側から僕を抱きしめた。 「謝るのは私達の方…貴女をたった一人、残してしまった…」

2014-01-03 03:49:25
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「辛い思いをさせてしまったわね…本当にごめんなさい…」 「そんな…そんなこと…」 扶桑たちを恨んだことなどなかった。皆を守りきれず、逃げ延びてしまった事が、僕の枷だった。でもそれは… 「私達は、時雨を恨んだことなんて、一度だってないわ…」 僕の枷が、綻んでいく音が聞こえた

2014-01-03 03:57:44
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「……落ち着いた……?」 ようやく嗚咽が収まってきた僕に、山城が声をかける。どれくらいの間抱きしめて貰っていたんだろう…二人は僕が落ち着くまで、ずっと抱いてくれていた。 「ねえ、時雨。今日はここで一緒に寝ない?」 既に扶桑が布団を敷き始めていた。

2014-01-03 04:03:24
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「……え? そんな……」 遠慮する僕の声など聞く気もないといった様子で、僕は山城に抱き上げられた。 「ふふ、ホント、時雨って軽いわね」 そして、そのまま布団の中央に寝かせられてしまった。

2014-01-03 04:06:56
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

両側に扶桑と山城がいる。二人とも、僕の方を向いていた。 「大丈夫、これからは……ずっと一緒だからね」 山城の優しい声が僕の耳をくすぐる。その声に、僕は心から安堵した… 「……時雨、おやすみ」 いつの間にか僕は瞼を閉じ、この安らぎの中で、眠りへと包まれていった……

2014-01-03 04:10:52

そして…

誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

後で聞いた話なんだけど、昨日、扶桑と山城はずっと提督室で秘書艦の仕事をしていたみたい。それで部屋に戻るのが遅くなったんだって。とんでもない勘違いだったね…はは、恥ずかしいや…

2014-01-03 11:40:05
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

本当、僕は二人に守ってもらってるばかりだ…。これからは、みんなを守れる僕で在りたいな。……ううん、違う。成るんだ。この髪飾りに誓って

2014-01-03 11:46:37