個人的にはふなさんの評価に大部分同意するが、心理描写の切迫性が足りないというトマ村さんの評価にも頷けるところがあって、そこを強度の「欠如」と見るか、見かけ上の強度をあえて排することで逆に描けるものがあるのか、という問題が僕があの作品に対する評価を確定しきれない最大の原因である。
2010-10-12 09:04:53少なくともあの作品の語りは、思春期の私的な苦悩を成長という物語時間の中で解消したり、世界崩落感に結びつけてカタストロフを引き起こすような類の語りではないし、だからこそあのラストが引き出せたという点で、後者の語りを測るのと同じ尺度であの作品の語りの出来を測ることはできない、と思う。
2010-10-12 09:26:25見せ方の問題。投げっぱなしなのも別に構いやしないんだけど、描かれてるものがストレートかというと違う。キャッチャーミット目掛けて投げられたならストレートだろうと変化球だろうと構わない。でもあれはそういう次元じゃない。言うなればキャッチボールだ。
2010-10-12 09:39:00あの作品が「今」を語っているというのは言い得て妙で、「成長」というのは物語の時間が過去‐現在‐未来へと進んでいって、その中で登場人物たちが否応なしに最終回答を迫られる(成長も破滅もその帰結だろう)こと。だからそうした作品では切迫性というのが作品の強度を測る感情的な尺度になる。
2010-10-12 10:10:18で、『ストレンジボイス』で描かれてるのは、切り取られて標本化された「今」、過去と未来が欠如した「今」じゃなくて、むしろ「今」が永遠に引き延ばされて繰り返されるもう一種類の時間なんだと。だからこそ切迫性よりは諦念が漂うあの語りが要請されているのだと思うわけです。
2010-10-12 10:10:40そんでもって、僕は「成長」という未だ万人の信頼を勝ち得ているフィクションを作品の骨組みにしてストーリーを構築するよりも、『ストレンジボイス』のような時間を描くことの方が遥かに難しいことだと思ってて、それを描ききったあの作品はスゲエと、その点を熱烈に評価しているわけです。
2010-10-12 10:11:08ストレンジボイスの「今」はネガ方向で描かれてるから目新しく見えるだけで、ハーレムものがやろうとしてるもの、サザエさん時空の長期作品が必然的にやっているもの、けいおんがやろうとしていたものと本質的に差異がなく、評価対象にならない。
2010-10-12 10:20:24@tomahawque サザエさん時空が主に漫画の手法であることは重要だと思ってて、小説で描ける時間の流れはまた別のものだと思います。少なくともそういう時間を主題化するという決定的な一歩がなければあの話は書けないはずで、けいおんやハーレムものと同じと言うのは一般化しすぎな気が。
2010-10-12 10:39:13@sato2 しすぎ、と見るにしても、一般化すれば同じところに帰着できるという部分では同意、ということでいいでしょうか。日常にあるパーツのみでそれを組み上げたのはすごいのですが、組み上げようと思えば他の人たちも組み上げられたに違いない、というのがこちらの意図なので。
2010-10-12 11:01:44