アリストテレスの「政治体制6分類」 ギリシア語の原典から
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(承前)全体で「一人の、少数者たちの、あるいは多数の自己利益に向けたものは逸脱となる」となります。
2014-01-12 14:15:17「軍事」の場合
【アリストテレスの政治体制分類補足】『政治学』で「正しい政治体制」と「逸脱した政治体制」について論じた箇所を引用しましたが、実は両者の間にはかっこでくくられた補足がありますのでご紹介します。
2014-01-13 14:30:18【冒頭】"συμβαίνει δ᾽ εὐλόγως" "συμβαίνει"は"συμβαίνω"(ともに立つ・同意する)の直説法現在三人称単数能動態、"εὐλόγως"は"εὔλογος"(合理的な)の副詞型。「合理的に両立する」といった意味になります。
2014-01-13 14:35:15【「卓越性」に基づいて統べること】"ἕνα μὲν γὰρ διαφέρειν κατ᾽ ἀρετὴν ἢ ὀλίγους ἐνδέχεται, πλείους δ᾽ ἤδη χαλεπὸν ἠκριβῶσθαι πρὸς πᾶσαν ἀρετήν"(続きます)
2014-01-13 15:13:25(承前)"διαφέρειν"は"διαφέρω"(通して運ぶ)の不定法現在能動態。"κατ᾽ ἀρετὴν"は対格支配の"κατά"と"ἄρετη"の単数対格の組です。"ἄρετη"は「徳」と訳すことができるか―というと文脈上微妙なので「卓越性」としておきます。(続きます)
2014-01-13 15:14:00(承前)"ὀλίγους"は"ὀλίγος"(少ない)の複数対格、"ἐνδέχεται"は"ἐνδέχομαι"(受け入れる)の直説法現在三人称単数中・受動態。前段と組み合わせると「一者が確かに卓越性に基づき運営すること、又は少数者が受け入れる」となります。(続きます)
2014-01-13 15:14:39(承前)"πλείους"は"πλείων"(より多い)の男性形複数対格、"χαλεπὸν"は"χαλεπός"(難しい)の男性形単数対格又は中性形単数主格・対格、"ἠκριβῶσθαι"は"ἀκριβόω"(正確にする)の不定法完了能動態。(続きます)
2014-01-13 15:15:22(承前)"πρὸς πᾶσαν ἀρετήν"は「全ての卓越性に向けて」。"πλείους δ᾽ ἤδη χαλεπὸν ἠκριβῶσθαι πρὸς πᾶσαν ἀρετήν"で「より多くが全ての卓越性に向けて困難を明確にしたこと」となります。(続きます)
2014-01-13 15:20:14(承前)全体で「一者が確かに卓越性に基づき運営すること、又は少数者が(卓越性に基づき運営することを)受け入れ、より多くが全ての卓越性に向けて困難を明確にしたこと」となります。
2014-01-13 15:25:16【軍事】"ἀλλὰ μάλιστα τὴν πολεμικήν" "πολεμικήν"は"πολεμικός"(戦の)の女性形単数対格で、「しかし、最大なのは軍事を」となります。
2014-01-13 15:30:19【多数に】"αὕτη γὰρ ἐν πλήθει γίγνεται" "πλήθει"は"πλῆθος"(多数)の単数与格で"γίγνεται"は"γίγνομαι"(生じる)の直説法現在三人称単数受動態。全体で「それは多数に生じる」となります。
2014-01-13 16:00:30【戦時の力学】"διόπερ κατὰ ταύτην τὴν πολιτείαν κυριώτατον τὸ προπολεμοῦν καὶ μετέχουσιν αὐτῆς οἱ κεκτημένοι τὰ ὅπλα" "διόπερ"は「そこでは」。(続きます)
2014-01-13 16:30:17(承前)"κατὰ ταύτην τὴν πολιτείαν"は「これに従い政治体制を」。"κυριώτατον"は"κύριος"(力・権威を持つ)の最上級中性形単数主格又は対格。(続きます)
2014-01-13 16:35:16(承前)"προπολεμοῦν"は"προπολεμέω"(戦う)の現在分詞能動態中性形単数主格又は対格で、冠詞が付いているので「戦うこと」。ここまでで「そこでは、これに従い政治体制を戦うことが最高権威(とする)」となります。(続きます)
2014-01-13 16:40:15(承前)"μετέχουσιν"は"μετέχω"(共有する)の直説法現在三人称複数能動態、"κεκτημένοι"は"κτάομαι"(得る・持つ)の完了分詞中・受動態男性形複数主格、"ὅπλα"は"ὅπλον"(装備品)の複数主格又は対格。(続きます)
2014-01-13 16:45:15(承前)"μετέχουσιν αὐτῆς οἱ κεκτημένοι τὰ ὅπλα"で「装備品を持つ者たちがこれを共有する」となります。(続きます)
2014-01-13 16:50:15(承前)全体で「そこでは、これに従い政治体制を戦うことが最高権威とし、装備品を持つ者たちがこれを共有する」となります。
2014-01-13 16:55:15内容の整理
ここまでの全体構造は、 http://t.co/1L4ABWZq0y のようになります。 συμβαίνει δ᾽ εὐλόγως(導入) ἕνα ~ πολεμικήν(前半) αὕτη ~ γίγνεται(後半導入) διόπερ ~ (後半) という構成です。
2014-01-13 17:00:14前半は「これは合理的に両立する。一者が確かに卓越性に基づき運営すること、又は少数者が(卓越性に基づき運営することを)受け入れ、より多くが全ての卓越性、しかし就中軍事における卓越性に向けて困難を明確にしたこと」となります。
2014-01-13 17:05:14後半は「それ(軍事における卓越性)は多数に生じる。そこでは、これ(軍事における卓越性)に従い政治体制を、戦うことを最高権威とし、装備品を持つ者たちがこれ(軍事における卓越性)を共有する」となります。
2014-01-13 17:10:14(補足)
ここで言われている内容は、およそ次のとおりです。
① 単独統治であれ少数統治であれ、多数の者を統率しうる「卓越性」が必要であることに変わりはない。
② ことに(多人数を兵力として動員する必要がある)戦争においては、多数集団を統率する「卓越性」が必要不可欠。
③ 戦争の際には、「戦う」(戦闘を指揮する)者が最高の「卓越性」を持ち、主戦力となる騎兵・重装歩兵を編成できる市民が「卓越性」を共有する。