Peter Jacob らによる論文「福島県の超音波検査と甲状腺がん」部分和訳と疑問点

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Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

しかし、市町村によっては、年齢が低い子ども達の平均甲状腺被ばく線量が100mSvかそれ以上でさえあると報告された(WHO2013)。 これらの被ばく線量推計値は、環境放射線および食物の検体の測定に基づいている(WHO2012)。

2014-01-15 19:04:50
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

一方、体内に取り込まれたヨウ素131の測定は、その集団での甲状腺被ばく線量がWHO推定値よりも低かったことを示している。

2014-01-15 19:05:19
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

福島第一原発事故によって誘発される甲状腺癌についての懸念がある。この懸念は、チェルノブイリ事故によって子ども時代に大きな被ばくをした人達の間での甲状腺癌の大増加によって引き起こされている。

2014-01-15 19:05:50
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

甲状腺癌をモニターするために、定期的な甲状腺超音波検査が事故当時に18歳以下であった福島県民全員に行われてきた。過去数十年間に甲状腺癌罹患率が世界的に増加はしているが、甲状腺癌は稀な疾患である。この増加は、改善された診断方法によるものかもしれない。

2014-01-15 19:05:57
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

超音波検査は、生存中に臨床的関連性を持つ事がない、いわゆる潜在癌を検出する可能性が大きい。そのような潜在癌の存在は、剖検により、ギリシャでは1.5%、フィンランドでは36%の有病率で見つかっている。

2014-01-15 19:09:51
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

有病率の定義は、文献によって異なる。この論文では、「ある時点において集団の中で疾病に罹患している人の割合」という定義を用いている。一方、発生率は、継続した検出と報告の下で、一年間に、特定の人数の集団で新たに生じた疾病の症例数を示すものである。

2014-01-15 19:09:58
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

ゆえに、超音波検査の新しいプログラムの一巡目で得られるのは甲状腺癌の有病率であり、その後の検査では、一巡目で検査された人達の間での発生率が得られることになる。

2014-01-15 19:10:18
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

広島と長崎の原爆被爆者で癌を発症しなかった2,327人の剖検では、甲状腺乳頭癌の微小癌が106件見つかり、ほとんどが硬化型だった。これは、有病率が4.5%ということになる。剖検結果は主に成人に適用される。小児における甲状腺潜在癌のはっきりとしたデータはない。

2014-01-15 19:10:38
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

超音波で検出される潜在癌の数は、機器と調査プロトコールに依存する。コホートの年齢性別構造や、国あるいはグループに特有の甲状腺癌の頻度のようないくつかの他の要因が、超音波検査における有病率(一巡目)と発生率(一巡目以降)に影響を与える。

2014-01-15 19:10:54
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

2013年7月31日の時点で、2012年4月までの検査の対象である福島県の13市町村の住民である41,296人の子ども、ティーンエイジャーと若者らにおいて、2011年3月11日に(?)超音波検査が行われた。

2014-01-15 19:11:25
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

5mm以上の結節あるいは20mm以上の嚢胞が見つかった214人において二次検査が必要であった。二次検査は165人においては終了しており、若い集団における甲状腺癌の有病率の最初の推計ができた。穿刺吸引生検の細胞診により、癌疑いが14人見つかった。

2014-01-15 19:12:08
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

このうち10人が手術を受け、9人が甲状腺乳頭癌、1人が良性結節と確定された。この、甲状腺癌確定(9人)と甲状腺癌疑い(4人)の13例は、有病率の13 /41,296=0.031%に該当する。

2014-01-15 19:13:12
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

二次検査が必要でも終了していない49人で甲状腺癌が見つかるかもしれないので、有病率は増加する見込みである。

2014-01-15 19:14:07
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

2番目の市町村のグループは、2012年4月から2013年3月の間にスクリーニングの対象であり、135,586人がスクリーニング検査を受け、穿刺吸引生検の細胞診により、30人の甲状腺疑いが検出された。

2014-01-15 19:14:29
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

2013年7月31日の時点では、二次検査が必要な人達の55%しか検査を終了していなかった。ゆえに、これらの市町村での有病率は、現在の有病率の0.022%より高くなることが予期される。

2014-01-15 19:14:52
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

チェルノブイリ事故が起こった1986年4月26日に18歳以下だったウクライナ人から成り立つウクライナ・米国コホートの超音波検査が行われてきている(Tronkoら2006)。事故当時のコホートの性別年齢分布およびベースライン発生率に関しては、福島県の調査グループと比較できる。 

2014-01-15 19:16:19
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

しかし、一巡目のスクリーニングは、1998年−2000年、すなわち、被ばくの12−14年後に行われた。調査プロトコールは、さらなる基準(低エコー性の結節、微小石灰化のある結節、不規則な境界、甲状腺被膜外浸潤や疑わしいリンパ節)を満たしたら5−10mmの結節のみを二次検査に選んだ。

2014-01-15 19:17:09
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

ゆえに、このプロトコールは、それ以外は同じ条件下ではあるが、福島県での調査プロトコールよりも低い有病率に繋がる。しかし、ウクライナ・米国コホートの甲状腺癌確定症例でチェルノブイリ事故による放射線被ばくと関連していないと評価された症例の有病率は、福島県で予期されるよりも高かった。

2014-01-15 19:19:14
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

これは、一巡目のスクリーニングでのコホートメンバーの年齢が、平均して12歳上だったからである。 ウクライナ・米国コホートでは、また、超音波検査の再検査も行われた。ウクライナのベースライン甲状腺発生率との比較は、報告された発生率に対するスクリーニングの影響の評価を可能にする。

2014-01-15 19:19:44
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

甲状腺スクリーニング増加の影響は、また、ベラルーシとウクライナの集団でも分析された。これらの3調査に基づいて、この論文では、継続中の調査の状況下での甲状腺癌発生率のベースライン(福島第一原発事故による放射線被ばくに関連していない)が推定されている。

2014-01-15 19:20:02
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

電離性放射線への外部被ばくによる長期の甲状腺癌リスクは、色々な研究で分析されてきた。しかし、福島県民における高い甲状腺被ばく線量は、主に、放射性ヨウ素の取り込みによって引き起こされた。

2014-01-15 19:20:36
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

放射性ヨウ素への被ばく時の低年齢とチェルノブイリ事故後の最初の20年間において、リスクの増加が示されてきた。しかし、リスクの情報は外部被ばくほど完全ではない。

2014-01-15 19:21:07
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

この研究では、原爆被爆者のデータから放射線リスクを導き出し、チェルノブイリ原子力発電所由来のヨウ素131に被ばくした人達の研究から得られた結果との整合性が調査されている。

2014-01-15 19:21:24
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

LSSリスク関数は、ウクライナ・米国コホートでの経験および超音波検査プロトコールの違いに基づいたスクリーニングファクターを適用することにより、福島県での過剰発生率の予測に使われている。

2014-01-15 19:21:32
Yuri Hiranuma @YuriHiranuma

(材料と方法、結果、議論は割愛。いきなり結論へ。) 結論 ここで提示された結果に基づいて、福島県民の超音波検査は、2007年の日本での甲状腺癌罹患率と比較して、甲状腺癌発症率を大幅に引き上げるだろう。推定される増加は、大きな不確実さを伴うが、最良推定値は約7倍である。

2014-01-15 19:23:49