マイ・フーリッシュ・ハート#0

ニンジャスレイヤー二次創作・テキストカラテのまとめです。 続き→http://togetter.com/li/621904
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ひたちえぼ @EVO_Hitachi

*間髪入れずに始める。こういうものは勢いがタイセツなのだと天国のおばあちゃんも言っている*

2014-01-16 23:57:34
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

*実況やケジメ事案の発生時には #owl_nj をお使いいただくと実際便利*

2014-01-16 23:59:40
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

*この物語はフクロウが見た夢であり、実際平坦であり、本編とはなんら関係のないことを宣言する*

2014-01-17 00:00:44
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

*猥褻とカラテは一切無い*

2014-01-17 00:02:43
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「またね」薄手のキモノ一枚を羽織って、彼女は部屋から男を送り出す。豊かな黒い髪を揺らし、目尻のあがった瞳を優しげに細めて。 1

2014-01-17 00:07:19
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

彼女はネオサイタマの止まり木。様々な男が彼女で羽を休めて巣へ帰る。帰る巣には、誰かが待つかもしれないし、孤独かもしれない。けれど、それは彼女には関係ないことだ。 2

2014-01-17 00:09:22
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

相手が何者で自分が何者かは、この小さな部屋では些細なことだ。やりとりする体温と、少しのセンチメントがあれば相手を暖めるには十分だと、彼女は思っていた。3

2014-01-17 00:15:29
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

彼女はこの部屋にいる間、三つのルールを自らに課している。ひとつ、対価の分だけ仕事をする。ふたつ、詮索しない。みっつ、身の上話をしない。男も、彼女も、そうすることで傷つかないと知っているからだ。4

2014-01-17 00:19:08
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

彼女の名前はノナコ。オイランだ。5

2014-01-17 00:20:53
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「マイ・フーリッシュ・ハート」#0

2014-01-17 00:21:50
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

その日も雨だった。飛び込みの男がノナコを買ったとノーティスが入り、ノナコは軽く身支度を整える。ほどなく、招き入れた男は、背が高く、精悍な面差しで、鋭いが疲れた目をしていた。久々に好みの男が来たので、いつもより口角がつり上がる。「ドーモ、初めまして。ノナコです」 6

2014-01-17 00:27:39
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「ドーモ。カギ・タナカです」「よろしくね、タナカ=サン。アタシを選んでくれてアリガト」一見客への常套句だったが、嘘はなかった。男のコートを受け取り、ハンガーにかける。(タナカ=サン、って感じ、あんまりしないなァ。でも、カギ、はワカル。似合ってる) 7

2014-01-17 00:30:04
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

(じゃあ、この人には、なんて付けよう)ノナコは考える。彼女は、客を鳥の名前で管理することにしている。こうしておけば、誰が誰かはノナコにしかわからない。彼女自身の覚えやすさと、客の情報を守ることを兼ねているのだった。 8

2014-01-17 00:34:12
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

(何がいいかな……イーグル? 違う違う。もっとギリギリで飛んでるアトモスフィア……コウモリは……鳥じゃないし。カラス……うん、カラス)群れを飛び出して、行く当てのないカラス。 9

2014-01-17 00:36:50
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

ノナコの目に、男の腰に吊ったカタナが目に入る。ドス・ダガーより長いが、ノナコが見てきたカタナよりは小ぶりだ。「お客さん、ケンドーする人?」「……イアイドだ」「イアイド」両者の違いがよくわからないので、とりあえず感心したように微笑んだ。この客が続くようなら、なにかで調べよう。 10

2014-01-17 00:40:01
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「カタナが珍しいか」「そういうカタナは初めて見るから」男は彼女がカタナを預かろうした手を無視して、カタナを壁際に立てかけた。(あら、触らせない程の物なの?)ノナコは伸ばした腕を引っ込める。 11

2014-01-17 00:42:23
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

(大事な物には触らせない人。それでカタナを使うなら、用心棒か、もっとコワイな仕事のどっちかだよね)ならば、不必要に探る必要はない。ノナコはそう決めた。話したい男は自分から話すものだ。そうでないなら、ルールに従うべし。 12

2014-01-17 00:45:25
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

ノナコがコワイな仕事、と推察した理由はもう一つある。この男からはある種のサツバツの匂いを感じるのだ。ヤクザの男達とも関わっているノナコは、そうしたサツバツには少し敏感だった。 13

2014-01-17 00:48:10
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

彼女はそうした経験に基づく嗅覚や、外見や仕草、些細な会話から相手との距離を測る。そうして探り当てた距離間で、心地良い関係を作る。関係が心地よくなれば長続きし、カネになる。 14

2014-01-17 00:51:15
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

それは、さながら初対面の二人で踊るワルツじみたものだと彼女は考えている。相手がリードしたいのか、されたいのか、どう足を運びたいか。それを察しきって、相手を楽しませることがノナコの仕事だ。 15

2014-01-17 00:54:17
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

この男はどうだろうか。ノナコは考える。カラスの佇まいは、荒んでいて、乾いていて、少し疲れている。距離を詰めすぎても、離しすぎても逃げられるだろう。それは惜しい。この男を逃がすのはもったいない気がしている。 16

2014-01-17 00:57:42
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

そんな風に考えている間にも、ノナコはカラスのタバコに火を点け、灰皿を差し出し、サケは要るか、つまめる物は欲しいかと尋ねては、その反応を見ていた。カラスの言葉には無駄がなく、ノナコのヒントになりそうな物は少なかった。 17

2014-01-17 01:01:30
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

(いつまでも向こうの一歩を待ってても、しょうがないか)自分で動いて感覚を掴むしかない。「ねぇ、タバコ、消して」対面に立って男のシャツを脱がせると、均整の取れた上半身と、そこに刻まれた幾つかの傷跡。(やっぱり、あのカタナは護身用じゃなくて、お仕事用だ) 18

2014-01-17 01:03:19