化学の目から見たNHK土曜ドラマ「足尾から来た女」

@fluor_doublet さんのつぶやきを中心にまとめました。 番組ホームページ http://www.nhk.or.jp/dodra/ashio/index.html 足尾写真館 続きを読む
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山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

今の銅鉱山廃水処理、例えば尾平なんかでは、pH 調整して、曝気して鉄を酸化して、これをさらにこれを沈降させてシックナーで落としてますよね。現象はたぶんほとんど同じです。生きている鉱山は銅濃度が高いので、沈殿銅回収が要りますが、pH 調整して中性~アルカリに傾ければ、銅も落ちます。

2014-01-18 16:35:21
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

銅精錬は、鉱山からの銅鉱石を選鉱し還元するのだけれど、古河は手選鉱の後に浮遊選鉱という方法を取っている。鉱石を粉にして、硫化物だけを石鹸水のようなもので浮かせて、これを回収する方法。この時に大量の廃石の粉が出てくる。これは、小沢をせき止めて、そのダムに放り込んでおくことが多い。

2014-01-18 16:44:02
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

これがよく大水で決壊する。決壊まで行かずとも、それを防ぐために、中に溜っている酸や金属イオンを多く含んだ廃水を大水の時に吐き出すので、これが大きな金属鉱山では問題になることが多い。ひどいと土石流みたいのを巻き起こし、人死にが出る。

2014-01-18 16:48:40
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

あとは、足尾は多金属鉱山で、銅は優先的に選鉱回収しているけれど、それ以外の金属はあまり相手にされなかった。特に古い時期には。pH 調整に鈍感な亜鉛、なかなか落とせないヒ素(足尾は硫砒鉄鉱が多い)、このあたりはガン無視だったろうね。

2014-01-18 16:51:35
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

砒鉱は、ヒ素が欲しい時には焙焼して出てきたガスを冷やして「亜ヒ酸」を落とすのだけれど、その設備がないところは煙突から放り出す。二酸化硫黄も硫酸製造設備がないところはよく放り出した。古河では昭和期は亜ヒ酸も硫酸も回収出荷していたけれど、明治期はヤバかったろうね。

2014-01-18 16:58:01
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

本山の精錬所は、あそこに煙突を立てていたので、このガスは全部松木沢のほうに流れてしまった。松木沢を枯らしたのはこのガスだ。ただ、坑木を古くから採収していたので、そのせいもあるのだろうけど。昭和の時期は群馬側からケーブルを引いて坑木を運搬していた。

2014-01-18 17:00:42
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

@Holyithylene @yamawaro_hydra ただ、微生物の作用ってバカにできないのよね。バイオリーチングと言って、足尾でもどこでも、銅鉱石から銅イオンを酸化して引っ張り出してくるのは微生物の仕業だ、というのが最近になってわかったようで。

2014-01-18 17:04:33
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

そういうのが混然一体となって「鉱毒」を作り出している、というのは言える。一番影響が大きいのは何といっても酸で、次に金属イオン、そしてヒ素などのオキソアニオンが次ぐ。

2014-01-18 17:07:43
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

ただ、銅は銅鉱山では大事にされる(それを狙って掘っているわけだから)ので、銅イオンが鉱害の主因だとはオレは思ってない。ブドウの農薬のボルドー液だって、固定化した硫酸銅だしね。

2014-01-18 17:09:53
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

ヒ素は厄介なんよね。土呂久もそうだけれども、煙突でさっぱり落ちず、みんな飛んで行ってしまい、どこかで水に溶けて悪さをする。土呂久もだいぶ森が禿げたという話。ただ、土呂久の焙焼釜は、亜砒酸を回収する設備はあっても、二酸化硫黄は完全に垂れ流しの構造になっていた。

2014-01-18 17:13:16
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

土呂久は鉱物種が硫化鉱メインだったので、さぞかし二酸化硫黄のガスを出したと思う。過去の本では、土呂久の森を枯らしたのは亜ヒ酸のせいだという書きっぷりのものが多いけれども、メインは二酸化硫黄由来の亜硫酸と硫酸じゃないかな。

2014-01-18 17:16:33
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

ヒ素、カドミウムは環境基準が厳しいので、よく公害問題では表に出てくるけど、じゃあそれが鉱害の主因元素かというと、そうでもない。カドミウムなんて、鉱石中にはほとんど入ってなくて、一緒にくるはるかに多くの亜鉛のほうが悪さをする。亜鉛は必須元素だが、多くいると問題を起こす。

2014-01-18 17:48:45
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

ただ、米に入っていると非常に厄介なので、カドミは忌み嫌われる。これはしょうがない。でも、作物の明らかな成長障害の原因かどうかは別の話で。

2014-01-18 17:50:25
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

古河の資料を読んでいるけれど、基本社内ヨイショだから、都合の悪いことは書かれていないなぁ。古河市兵衛の時代は、河鹿鉱床じゃなく鉱脈のヒ押しだったのね。ベッセマー式新精錬工場が明治26年ってある。これは炉の構造にかかるものだけれども。

2014-01-18 17:58:21
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

もともと渡良瀬川って明らかな暴れ川で堆積物も多く、それは流域の数段もの河岸段丘の地形を見てもわかるので、それを全部古河鉱業のせいにするのは違うと思うゾ。別に古河の肩を持つつもりはないんだけれども(むしろ古河は嫌いだ)。

2014-01-18 18:01:18
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

国策でバックアップしている企業(およそ環境負荷の見積もりが甘い)を悪者にし、それを下から叩くっていう構図は話になる。でも、ついつい範囲を超えて叩きすぎ、ついでに無いことまでなすりつけちゃうってのはよくある話だ。

2014-01-18 18:06:49

(考察その2:渡良瀬川支流の汚染土壌中の銅濃度)

山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

資料見てたら、公文書館に、足尾鉱毒事件の渡良瀬川支流汚染土壌の銅濃度分析データがあった。うわー。けっこう入ってる。800-1000 ppm がザラザラある。これは銅で生育障害が出るなー。

2014-01-18 18:42:58
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

これについては、神保小虎先生を含めた調査団が入っていて、水じゃなく、粉鉱が流れ出して悪さをしているって指摘している。

2014-01-18 18:45:52

(↑神保小虎(1867年6月19日-1924年1月18日)は日本の地質鉱物学者で明治大正期に活躍。明治25年=1892年から2年間ドイツ留学後、明治29年=1896年には母校帝国大学の教授に就任。
http://kotobank.jp/word/神保小虎

山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

ヒ素や鉛についても別枠で分析があって(亜鉛が見つからない)こっちはそれほどの値ではない。するとやっぱり銅なのかな。水素イオン濃度が入ってないのは気になるけど。

2014-01-18 18:48:09
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

ふーむ。いろいろ資料を見てみてなんとなく飲みこめた。明治期に沈殿池が何度も決壊しているので、この選鉱の尾鉱が渡良瀬川を流れて、ここから銅が今の環境基準の10-100倍ぐらいの汚染をしていて、それが下流域の作物の生育障害を引き起こしていたのね。

2014-01-18 18:53:04

(↑まとめ公開後コメント欄でご教示をいただきました。誤字と誤解しお恥ずかしい限りです↓)

Megatherium(メガテリウム) @Dairanju

尾鉱(=ズリ)とは、選鉱(鉱石から、目的の金属濃度の高いモノを選別する工程)で出た残りカスです。参考Wiki http://t.co/0dvRd8OWBt.. http://t.co/4NnTSyHmF4

2014-01-19 09:26:12