文学極道ガイド

詩の投稿・批評サイトである文学極道(http://bungoku.jp)で年間各賞に輝いた詩人たちの作品を紹介。 膨大なネット詩の海の中で、どの作品を読んだらいいかについて羅針盤になれば幸い。 @osamuhirota@namatamago_tori が、それぞれの詩人のお薦めの一篇を選び、批評を添える。 今のところ@osamuhirota は2005-2009年まで、@namatamago_tori は全受賞者について紹介してある。 なお、選外でも注目すべき詩人は取り上げていく。
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生卵を喰う鳥 @namatamago_tori

中村かほり「日常(せいけつな老人)」http://t.co/l0MEqYNwBF夏に老人が外で桃の皮を剥いて、剥いた皮を水に浮かべて、切った桃は食べずに腐らせる、というだけの詩なんだけどとても面白い。分らないものも反復してしまえば日常となり、日常も上手に切りとればこんなに美しい。

2014-01-28 19:53:14
alchemist @allplusnothing

2006年実存大賞、まーろっく「豚」http://t.co/KtWu8OB3GO 不条理から幻想から認識・比喩・叙景と多彩な作品を書く。この作品は下手に「詩」にしようと小細工せず、細密な描写と状況設定で詩を作り出している点で注目した。展開で読ませようとする詩。

2014-01-28 03:44:43
生卵を喰う鳥 @namatamago_tori

まーろっく「さらばドラッグストア」http://t.co/fR9iCl338b「○○なければならい」という文末を重ねていき緊張感が高まっていく。誰もが恋をする時というのは、わけもなく力んだり、些末なことに注目したりしていたのかもしれない。知らない。音読が気持ちの良い恋愛詩。

2014-01-28 17:29:49
alchemist @allplusnothing

2006年実存大賞、Canopus「対決!VS フラワー団総統(雨の日と紫陽花とMr.チャボと)」http://t.co/LBOSBP2y1j ピエロのように扮しながら、そのピエロであることが後々の筋の裏切りのための伏線になっているかのような。キャラ設定で詩がここまで面白くなる。

2014-01-28 04:01:48
生卵を喰う鳥 @namatamago_tori

Canopus(角田寿星)「屋根の上のマノウさん(改訂版)」http://t.co/iZfGvFOhw5マノウさんが何者かは分からない、何かの寓喩なのかすら。ただ、見落としていたものをひとつひとつ拾いあげて、それらと一緒にならべられるマノウさんが、感傷にユーモアをもたらしている。

2014-01-28 19:40:21
alchemist @allplusnothing

2006年新人賞、ヒダリテ「冬の夜、僕は悲しくて」http://t.co/kPDER3LbNx 詩書きとしての懐の深さを感じさせる。この作品は、死んだ先生とのやり取りや過去の恋人の思い出が錯綜する中、喪失のただなかにありながら、ただ生きることの深い悲しみをかみしめている。

2014-01-28 03:57:12
生卵を喰う鳥 @namatamago_tori

ヒダリテ「ちきゅうのふもとで、犬と暮らす」http://t.co/6Sdg4rEOjIいえーい下ネタ。女性の体を大地に見立ててそこで犬と暮らすことを空想する「僕」のお話。とてもかわいらしい。可愛らしさには予め滅びてしまっているかのような、危うさがある。斉藤倫さんの言葉を思い出す。

2014-01-28 20:11:51
生卵を喰う鳥 @namatamago_tori

いかいか「Storywriter,Poemwriter,Songwriter,Hatenanikki」http://t.co/WwKL7D1Rlz 5つの短編から描かれ、そのどれもがとても美しい。神話的な光景は清濁が混沌とし破壊と創造が共存する。嘔吐物から生まれる蝶の美しさよ!

2014-01-28 18:18:25

2007年

alchemist @allplusnothing

2007年殿堂入り、一条「母のカルテ」http://t.co/i2UK9EkoPV この書き手は人間の奥の方にある日の当たらない領域を白日の下にさらしているように感じる。常識とか倫理で削り落とされる以前の領域を。この作品では悪意と不条理が示されていて、虚構に実存性が託されている。

2014-02-01 06:14:56
alchemist @allplusnothing

2007年創造大賞、宮下倉庫「スカンジナビア」http://t.co/D5X8kcDNQO 優れた描写力を持ちながらも、描写してハイ終りでは済まない書き手。絶妙な飛躍や大胆な比喩、ストイックな抒情が絡められていく。この作品は何よりも前半の描写の強度により飛躍と抒情が担保されている

2014-02-01 07:11:13
生卵を喰う鳥 @namatamago_tori

宮下倉庫「サイクル祖母」http://t.co/zv9kdXxYTl「祖母」という記号にまつわる話、あるいは、誰もが記号としての関係の網に回収されてしまうという話。「新しい名」とは新しい関係の網が築かれたことであり、配偶者や子孫からの視線であるが、死者はいつも現在地を循環する。

2014-02-08 23:13:12
alchemist @allplusnothing

2007年創造大賞、りす「赤い櫛」http://t.co/Cqu5TxCwHq 印象的なモチーフを核として、そこから世界を丁寧に広げていく手法が多い。「赤い櫛」は身体となじむものでありながら余分な美しさを持つもの。描かれる詩行もまた赤い櫛のように余分でありながらなじみやすい。

2014-02-08 00:43:36
alchemist @allplusnothing

2007年抒情詩賞、浅井康浩「ヒバリもスズメも」http://t.co/YLO8xkGfcw 言葉のチョイスに気を配って美しく滑らかな叙述に成功している。「わたし」も「あなた」も特定の生臭い人間を指すというよりは、テクストの整合性を保つための連結機として作用している。

2014-02-08 00:55:35
生卵を喰う鳥 @namatamago_tori

浅井康浩「No Title」(あした、チェンバロを)http://t.co/x2rmwmqQIZ同じ内容なのに面白い話をする人とつまらない話をする人がいる。つまり、私たちは内容ではなくどのような語り方なのかということを重視している。スープの味を想像させるのは、語り口の妙味だ。

2014-01-31 21:05:58
alchemist @allplusnothing

2007年抒情詩賞、泉ムジ「corona」http://t.co/BDdaNFMIVE とても不思議な書き方である。特に目立つようなモチーフや技巧はないが、それでも読み進めていくうちに少しずつ感慨が積み重なっていく。派手でも地味でもない程よい具合のレトリックの積み重ねが感興を生む

2014-02-08 01:02:29
alchemist @allplusnothing

2007年実存大賞、軽谷佑子「ウィンターランド」http://t.co/vOkWvSXW4x 「うつくしい」「あかるい」「楽しい」「きれい」という言葉を非常にうまく使っている書き手。この作品で描かれる情景も全て、美しさ・明るさ・楽しさによって底の方から支えられているのだろう。

2014-02-08 01:52:15
生卵を喰う鳥 @namatamago_tori

軽谷佑子「晩秋」http://t.co/1AR68l8WfU懐かしさと寂しさが少しの温かさのなかに溶け合っている。階段を駆け下りるイメージが落葉へ変わり、最後には垂直へ降りる鳩に収められる。何かが終わってしまっていたことに不意に気付かされてしまったときの、はっ、とした感じ。

2014-01-28 19:26:56
alchemist @allplusnothing

2007年実存大賞、みつとみ「白の誕生日」http://t.co/e6O9SNZXxL 何気ない日常の描写のように思えるが主体は緩やかに雪を待っている。この雪が一体何を意味するのか読者は詮索しなくてもいいのだろう。だが雪は確かに何かを意味していて、その確信だけが作者をここに導いた

2014-02-08 01:58:34
生卵を喰う鳥 @namatamago_tori

みつとみ「ペンギン」http://t.co/Eo7ny5COmk飛べない、ということを学ぶお話。ウルトラマンのように飛べないことを学ぶみたいに、ペンギンと同じように飛べない自分を、車内=郷愁をともに過ごす空間に閉ざされたペンギンのぬいぐるみ重ねてくる。諦観もまた希望である。

2014-01-31 19:25:01
alchemist @allplusnothing

2007年新人賞、兎太郎「地蔵盆」http://t.co/6ni9FMn7rj 文極では割と異質な書き手ではないだろうか。詩語の選び方がフォークソング的。土臭いイメージから現代的なイメージまで、ノイズの多いイメージを好み純粋なイメージが少ない。そこで織り成される異質なネットワーク

2014-02-08 02:03:43
生卵を喰う鳥 @namatamago_tori

兎太郎「施餓鬼」http://t.co/Nyziz3WqUC餓鬼、修羅、無縁物、釈迦。仏教用語が頻出するが、この詩のキモは冒頭の「せみ」を喰らうシーンだと思う。仏教的世界観を背景にしつつも、前景化しているのは「ぼく/きみ」の関係であり、「ぼく」が「きみ」を見る眼差しである。

2014-02-14 22:52:38

2008年

alchemist @allplusnothing

2008年創造大賞、黒沢「プラタナス」http://t.co/WxZRZcEQU2 この書き手はとても器用だ。どうやったら詩ができるかきちんと心得ている。本作では、日常に起こる些細だけれど重大なな内面のドラマを、その顛末も含めて簡潔に描きだし、日常の深層に踏み込んでいる。

2014-02-10 02:34:47
生卵を喰う鳥 @namatamago_tori

黒沢「オフィーリア」http://t.co/UzZYxyiOA5絵画のポスターを目にする、東京の街を「オフィーリア」を通して見つめていく。川に浮かぶ女性を想像しながら、小雨の降る東京を見つめつつ、世界は雨だと口にする語り手の視線。溺死してアイコンとなった者と、雨に濡れる街の対比。

2014-02-14 19:30:54