お玉さんのほぼ日刊御手洗潔レビュー(2)

お玉さんによるほぼ日刊御手洗潔レビュー。 『数字錠』、『ギリシャの犬』、『異邦の騎士』、 『切り裂きジャック・百年の孤独』、『山高帽のイカロス』の5本を収録。 続きを読む
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お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

だけど僕の認識は、『占星術殺人事件』から『数字錠』までが御手洗モノの第一期。 ……この『ギリシャの犬』からはもう次のステージに移っていると考えるのだ。(二期の終了が何かはまだナイショ♡) このあたりから無尽蔵とも思えた才能が徐々に擦り減り始め、下の世代からの突き上げに苦悩し始める

2014-02-12 01:10:58
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

自由闊達な作風が「冒頭の魅力的な謎」という枷に縛られ、本格ミステリのパイオニアという立場に祭り上げられことで、明らかに物語に制限が掛かり、いろいろと苦しくなってくるのが、この第二期の特徴である。 この期で『奇想、天を動かす』みたいな島田荘司の最高傑作もモノにしてたりするわけだが…

2014-02-12 01:11:42
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

……この期にあるのは艱難辛苦であり、いかに他の作家以上のスケールを作り上げるかに奔走し、いかに、他の作家が掘り起こしていない題材を掘り起こすかに終始している。 いかにしてオンリーワンになるか? その予兆は今回の『ギリシャの犬』でも多少感じられる。

2014-02-12 01:12:14
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『ギリシャの犬』はホームズの某長編を連想させる船の描写がある。屋台紛失の謎が絡んでくる。犬とはしゃぐ御手洗がいる。誘拐がある。都市の秘密がある。もちろんロープも。 それらが一つの短編に凝縮されている。 小粒ではない。が、これまでの島田作品と比較すると、小さくて、とっちらかっている

2014-02-12 01:12:31
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

一番印象に残るのが、犬に対する御手洗潔の接し方って。 その微笑ましい光景のみだけで、一本の短編で得られる満足度としては及第点まですでに持っていける状態だったのね。 先の話であるが『SIVAD SELIM』やダンスでの『近況報告』みたいな内容でも短編として成立するわけだ。

2014-02-12 01:13:55
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

第二期の作品は、御手洗潔と石岡クンのキャラクターに助けられている部分も大きいんだよなぁ〜(>人<;)

2014-02-12 01:15:20
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

しかし、「アメリカ在住の英国富豪アレクスン氏が、例の水晶のピラミッド事件のお礼を兼ね、われわれをモナコのホテル・ド・パリに招待してくれたのだ」の記述に見られる、いろいろな問題点がっΣ(゚д゚lll) 実際に書き上がった『水晶のピラミッド』を読むと、うそっぱち、うそっぱち!

2014-02-12 01:16:26
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

というわけで『ギリシャの犬』はおしまい。……んっ、ほとんど内容に触れてないような気もするよ。 だって、東京都民じゃないので、アレが意味不明だし、だからどうしたの? という感じなんだもん。あとどんだけロープを巧みに扱うつもりなんだ? アレはどんだけ往復しても……、ムリだろ!

2014-02-12 01:16:40
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

さて、ほぼ日刊御手洗潔レビューその8『異邦の騎士』です。 1988年4月刊行。 とにかく人気の高い一作ですね。おなじみの東西ミステリー100では56位でした。(全然、話は変わるが『奇想、天を動かす』が51位なのはナットクできんのぉ〜) あっ、黒田研二さんが一票投じてますね♫

2014-02-13 00:33:53
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

さて……、もうぶっちゃけ言っちゃうけど、『異邦の騎士』におけるトリッキーですっごく人造的なミステリ要素、それと御手洗潔という探偵役の存在をブッコ抜いちゃうと、……これ、……まんま『夏、19歳の肖像』になっちゃうんだよねΣ(゚д゚lll)

2014-02-13 00:34:52
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

もう皆様ご存知だと思いますが、この『異邦の騎士』は『占星術殺人事件』でのデビュー以前に書かれた作品だということ。 過去の習作のストーリー内容が意識下に残っており、それが『夏、19歳の肖像』内での人間関係に昇華されたということは、二作品の近似から、簡単に推理できる。

2014-02-13 00:36:30
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『ギリシャの犬』から第二期にと昨日呟いたわけで、ここらの時期から島田荘司、アヤ付き始まるんよね。 この当時を見ると、他作家からのトリック盗用問題の影に隠れてしまってる感はあるが、いくらストックが尽きたとはいえ、『夏、19歳の肖像』という先行発表と激似の作品の提示って、問題じゃね?

2014-02-13 00:38:09
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『夏、19歳の肖像』が男と女の間のみで帰結する物語なのに対して、『異邦の騎士』がトンデモ大陰謀モノΣ(゚д゚lll)表層のパッと見の見た目、それが違うと別のお話だよ、……そういうことなのかな? (ただ単に御手洗モノ以外の作品が読まれていない可能性もあるが……)

2014-02-13 00:39:03
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『異邦の騎士』はミステリ要素だけで判断するとトンデモ大陰謀モノ! よ。 『数字錠』同様、すごく良くて切ない物語にのっかっているミステリ部分は、穴ぼこだらけ〜、目が破れまくったザルの如きなんだよね。(後書きで、ミステリーでない、と宣言しているの。大人ってキタない(>人<;))

2014-02-13 00:40:00
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

主人公の「俺」が記憶喪失状態、さらにバットトリップのため鏡が見られない体質になっている。……という前提条件だけで『異邦の騎士』って何でもやりたい放題ヤン(>人<;) なのに犯人側の仕掛けが時間のかけ過ぎ、証拠の残しすぎ。 もし「俺」が警察にでも捕まったりでもしたら……破綻必須。

2014-02-13 00:41:15
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

「俺」が御手洗潔という友人や職まわりで様々な人々との関わりあいができた段階で、犯人側の仕掛けに不確定要素が紛れこむわけなんよね。いつ記憶喪失が回復するかもしれないわけだし……、というか「俺」が直情型ではなくて、「これ本当かな? もっともっと確認しようかしら?」でも破綻するんよね

2014-02-13 00:42:57
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

トンデモ大陰謀の計画図があまりにもイレギュラーを想定してないのよ。だからミステリ的な面白さは最後のビックサプライズに委ねられるんやけど、 けど、それが故に感想がネタバレに直結する可能性があるのも……、僕ら素人批評家泣かせなの。 ところで、皆さん、あのビックサプライズ好きですか?

2014-02-13 00:46:16
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

まぁ、アレが好きか嫌いかは置いておいて、『異邦の騎士』でアレをやってしまったせいで、御手洗潔シリーズは登場人物の変遷という縦の時間軸を持ってしまう結果となってしまったわけで……(>人<;) 事件が起きてそれを解決! という呑気なスタイルでの物語創作、それに制限かけちゃってるんよ。

2014-02-13 00:48:27
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

しかも、吉敷シリーズでの「通子さん」のような、かっての妻といったわかりやすぅい象徴ではなく、ここで仕掛けられた、禍根はかなり複雑で重い。 『異邦の騎士』でのアレがなければ、以後で石岡クンの内面の変化に触れなくてもよかったし、御手洗潔と石岡クンが袂を別つ結果も無かっただろう。

2014-02-13 00:49:24
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『異邦の騎士』はその後のシリーズの趨勢を舵取る、呪いを内包した物語だ。 だから、ミステリとしては「あちゃ〜」なことをやっているわけだが、「俺」の物語としては、感情を大きく揺り動かす何かが確かにある。 今回の20年ぶりの再読は、ラストのサプライズが頭に残っている分、余計に心揺れた。

2014-02-13 00:50:14
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『占星術殺人事件』でアレだけエゴ剥き出しの鬼畜狂人犯人を、爽やかに幕引きさせた島田荘司。 『夏、19歳の肖像』で無形の若さを目いっぱい書ききった島田荘司。 樹海都市短編群の何作かでは、都市が人に与える影響を残酷に記していたりする。 『異邦の騎士』においても、言わんやである。

2014-02-13 00:50:33
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

デビュー前の草稿が故に、御手洗潔はまだ変人気質のある常人である。 なので、御手洗潔は救いきれない。 『数字錠』での全てを見透かしたため打つ手がなく、もがき苦しむのではなく、幾らでも手が打てそうな事件なのに、物語が一部しか救われない終幕を迎えるのは、御手洗潔の力不足からと言える。

2014-02-13 00:50:54
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

救えないからこそ、グッと来る! ミステリとか、大トリックとか、どうでもいいんよ。 心がホロホロする作品なんだ。ちょっと月並みだけど、男が女に惚れ、その収束に悲劇が待ち構えている、そういう物語なんだよ。 今回の再読で思ったのは、ベタな話だと思った。これ、褒め言葉だ。

2014-02-13 00:52:21
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

近似として、長年『夏、19歳の肖像』のほうをランクの上に置いてたけど、 ザルな計画なのにかなりの手間を要してる無茶苦茶なミステリ部分と、ベタベタすぎる恋愛物語部分に、「こんな話が書きたいんや〜」的な無邪気な創作衝動を感じられたので、少し二つの差が縮まったかな、というのが今回の感想

2014-02-13 00:52:40
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

というわけで、また長文ツイートになってしまった(>人<;) ネタバレOKだったらまだまだ語れるけど『異邦の騎士』はコレくらいで♫ お賃金を貰ってステレオを買いに行くシーンがすごいステキ。時代の空気が切り取られてるし、二人の関係の行く末の暗喩もされてて、すごい好きなエピソード。

2014-02-13 00:53:18