お玉さんのほぼ日刊御手洗潔レビュー(2)

お玉さんによるほぼ日刊御手洗潔レビュー。 『数字錠』、『ギリシャの犬』、『異邦の騎士』、 『切り裂きジャック・百年の孤独』、『山高帽のイカロス』の5本を収録。 続きを読む
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お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

さて、ほぼ日刊御手洗潔レビューその6『数字錠』となりました。 EQ・1985年11月号掲載。 ファン人気の高い一作。very BEST10では、やっぱりというか何というか第一位でしたね。もちろん、オレも大好きだ〜♫

2014-02-11 01:15:26
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

大好きが故に先に言うけど、 ……これ、誰が犯人なのか? と、どのようにして殺人が行われたのか? といった本格ミステリの面白さ、そこだけで評価したら「し、島田荘司。か、金返せ〜Σ(゚д゚lll)」レベルだよね! 時間の枷を埋めるための交通手段を故意に隠してるので卑怯極まりない!

2014-02-11 01:16:08
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

ネタバレ全開ギリギリでいっちゃうけど、『数字錠』での犯行現場とアソコまでは、御手洗潔と石岡クンが中央線で赴く描写があるのですが、一千万東京都民読者ならばその描写とデータ開示から「あのルート」を連想できるかもしれませんが、田舎モンのオレたちには、それって難しいってワケなの。

2014-02-11 01:16:42
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

それ以前に、この事件の背景には一億円近い金銭問題が絡んでいるかもしれないわけだから、捜査本部には最低でも大学出の数字まわりに明るい捜査員が配置されている、はずだと思うんよね。 アレ、中学生レベルの数学の問題じゃん。 アタマ真っさらの初読のときでも「おい、こら〜」とツッコんだよ!

2014-02-11 01:17:11
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

G社のモデルってタイトー? しかし、株の説明が辿々しいのが気になる。株に血道あげている亡者たちが、出まかせの粉飾疑惑による上場公開延期を信じるか? 未公開株の譲渡なんだから、そんなリスクは承知の上じゃないかしら? 株を売ったり買い戻したりの自転車操業ってのは、ちょっと意味不明だ

2014-02-11 01:17:34
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

というか、吹田社長、金持っているのか、持っていないのかが、さっぱりわからん……? もしかして、島田荘司って、経済とかお金の流れとかいった数字まわり、ちょっとニガテさんなのかしら?

2014-02-11 01:18:11
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

ただ、そんなツッコミ要素を補ってあまりある魅力が『数字錠』にはある! 『糸ノコとジグザグ』では『ミタライ』を絶賛したお玉さんだったが、……マンガ版『数字錠』はページが少なすぎる、のと、現代に舞台を置いたため、昭和の都市の中での貧しさと孤独が印象薄くなっている、ので、惜しいんよね

2014-02-11 01:19:04
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

五百円札しか入っていないお財布の現実感、東京へ出れば何とかなるのではという若者の夢の説得力は、現代に舞台を置き換えた『数字錠』ではオミットせざるを得ないんだよなぁ〜。 この閉塞感が物語のベースに存在していないと、あの犯行の動機にズキンと心打たれないんだよね。

2014-02-11 01:19:39
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『数字錠』の魅力は、御手洗潔の個性である。本格ミステリとしては穴だらけなんだけど、巨大な都市に飲まれる若者の孤独の抽出、その中で出会った優しさ、優しさへの感謝から生じた感情の振り幅が、やがて殺人に至る。 その不器用な若者に、優しさで対応する御手洗潔。千円のコーヒーのくだりは泣ける

2014-02-11 01:20:10
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

そして、この『数字錠』で御手洗潔というキャラクターがほぼ固まったといえる。 女性に対して異常な対応を見せるのは今となっては常識なのだが、これ、発表作品六作目の本作にて初めて出た設定だ。足繁く寮に通う御手洗の様子を見て、女のコのトコロへ行ってるのね、と石岡クンが思ってるのが新鮮だ。

2014-02-11 01:21:02
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

電車模型に熱くなる御手洗潔。 フランス料理に精通している御手洗潔。 『占星術殺人事件』ではツンツン、作品最後はちょいデレ、今作ではデレッデレ状態の竹越刑事の顔をたてる御手洗潔。 最善の解決法が見つけられず、騙すようなカタチで犯人を追い詰めるカタチとなり、自分に枷をかける御手洗潔。

2014-02-11 01:21:52
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『占星術殺人事件』ではホームズを思わせる自信家、ただし常人。『斜め屋敷の犯罪』ではエキセントリック全開の変人。『疾走する死者』ではギター! キャラクターが瞑想していた御手洗潔が、僕らのよく知っている御手洗潔になるのは、この『数字錠』からなのだ。

2014-02-11 01:22:17
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

そして、殺人を犯さざるを得なかった若者の強い物語の枠が用意できたからこそ、その個性を発揮できた。 島田荘司の筆力は、その若者のリアルな感情をキッチリと物語の中へ落とし込めている。行間から若者のココロの痛みの手触りが感じられる。ここで見られる、昭和の貧しさにノスタルジーを感じられる

2014-02-11 01:25:02
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

若者の感情は、同年『夏、19歳の肖像』をモノに出来たこと、そこから派生したのだろう。 夏〜の方は対象として女性、恋愛があった。『数字錠』では、それは優しくしてくれた人への感謝へと置き換わっている。夏〜は踏みとどまれた物語だ。だけど『数字錠』は爆発してしまった物語だ。

2014-02-11 01:26:03
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

救い主としての御手洗潔は『異邦の騎士』で更なる深化を見せるのだが、物語の構造がシンプルであり、また御手洗潔が不器用にしか振舞えなかった分、僕は『数字錠』の方が、好きだ。(『異邦の騎士』にも致命的な欠点がある。『数字錠』における本格構成の未熟さ以上の欠点だ)

2014-02-11 01:26:16
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

本格志向の作品に投入されていた御手洗潔が、物語に比重を置いた作品に投下された。それが『数字錠』といえよう。 そして、物語の輝きはノスタルジーとやるせなさ、人の弱さを抱え込んで、未だに光を失っていない……。 トリックとか、うん、どうでもいいよね。そんな気持ちになれる、美しいお話だ

2014-02-11 01:30:02
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

さぁてさてさて、ほぼ日刊御手洗潔レビューその7ギリシャの犬』でございます。 EQ・1987年9月号掲載作品です。 『数字錠』『疾走する死者』『紫電改研究保存会』のレビューは終了しているので、今回で『御手洗潔の挨拶』収録分の短編は完結となります( ´ ▽ ` )ノ

2014-02-12 01:03:08
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『ギリシャの犬』が9月号(8月売りかな?)に発表、その年の10月には『御手洗潔の挨拶』が発売されているということ。及び、掲載雑誌のほとんどが光文社刊行のEQで発表されているのにも関わらず、『御手洗潔の挨拶』が講談社から刊行されたということ。そこから当時の島田荘司の勢いが伺えるね♫

2014-02-12 01:03:58
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

1987年における島田荘司の位置付けを考えるエピソードとしては、その年『十角館の殺人』で講談社ノベルスからデビューした綾辻行人のペンネーム考案&同書への推薦文、というものがある。 『占星術殺人事件』のデビューから6年。大掛かりなトリックの担い手として後輩をいざなう立場へと……

2014-02-12 01:04:34
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

85年の『数字錠』から2年間。 86年には3冊(『火刑都市』『消える上海レディ』『Yの構図』) 87年は挨拶を含めて5冊(『網走発遥かなり』『灰の迷宮』『ひらけ!勝鬨橋』『展望塔の殺人』)と、素敵なラインナップ。スゴイ執筆刊行量とクオリティの高さで突き進んでいるわけね

2014-02-12 01:05:43
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

今回は御手洗マラソンだけど、正直、『夜は千の鈴を鳴らす』でケチが着き始めるまでの初期の島田荘司作品、それらの完成度は異常で、こちらも読み返したいくらいある。一部作品(『Yの構図』と『殺人ダイヤルを探せ』、キミのことた!)を除くと、どれもが読むべき良点と問題を兼ね備え、抱えている。

2014-02-12 01:06:29
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

しかし、御手洗潔モノは2年間書かれなかった。万を辞して発表されたのが、今作『ギリシャの犬』だ! …… うーん、御手洗潔、犬が好きなのね〜♫ ……くらいしか感想の言い様がないんよね〜(>人<;)

2014-02-12 01:07:14
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

85年の東西ベストで御手洗モノの長編全て(2冊だけだが)がベスト50に入っており、マニアの支持という下地と需要が確実にあったし、『数字錠』みたいな作家として確実に手応えとなる物語もモノにしたのだから、何故、御手洗モノに2年の執筆空白が存在したのかがどんなに考えても、わからないわ?

2014-02-12 01:07:52
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『ギリシャの犬』もあの図形からのあれに繋がるわけだから、樹海都市構想の短編の一本なのだろう。 そして、この頃から唱え始める「冒頭の魅力的な謎」をミックスしているのだと思う。 ただ、盗まれた屋台から発生する謎の帰結は、正直ガッカリものだ……。物語の焦点も定まってない。

2014-02-12 01:08:46
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

さて御手洗モノを期でわけるとき、大体の人が、 『占星術〜』『斜め屋敷〜』『異邦の騎士』の初期長編三作を一期とし、 『暗闇坂の人喰い木』からの『アトポス』もしくは『龍臥亭事件』までを二期、 以降の作品を三期で、 人によっては『摩天楼の怪人』あたりを次の区切りにしてるのではと考える。

2014-02-12 01:10:17
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