飛翔

綺羅(@kiraboshi219)さんによる薄桜鬼の創作小説第9弾です。 4月14日、解説文更新しました。 第1弾「黒と白~斎藤一~」http://togetter.com/li/587101 続きを読む
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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

体の水気を払いながら、額に張り付いた前髪をかき上げて、 雨が落ち着くのを待つ。 風に煽られた雨で、肌がじんわり濡れていくのが気持ち悪い。

2014-03-11 19:13:23
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

雷鳴が遠くに聞こえ、山の木々が翳み始めた。 まだ暫く止まないかもしれない。

2014-03-11 19:13:37
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

真っ暗になる前に、屯所に帰りたいな……とぼんやりしていると、 腕で顔を覆いながら走って来た女が、僕の左隣に並び立った。

2014-03-11 19:13:51
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「すみません、ご一緒させてください」 「はあ。どうぞ」

2014-03-11 19:14:04
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

僕は女を自分の右側にすべく、移動した。 左側に立たれると、いざという時に刀が抜けないからそうしたんだけど、 女はすぐには気付かなかったみたいで、暫くしてから納得して頷いていた。

2014-03-11 19:14:22
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「腰のもののお邪魔になっていたのですね。申し訳ありません」 雨足が強くなって、女の声は聞こえにくかった。

2014-03-11 19:14:50
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

跳ね上がる土が泥になって、草鞋に乗ってくる。 僕は不快に感じて、身を捩り、お堂の中に入ることに決めた。

2014-03-11 19:15:09
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「お侍さん、それは良くありませんよっ!?」 女に腰の着物を引っ張られて、僕は渋々振り返る。 僕と女はそこで初めてお互いの顔をはっきり見た。

2014-03-11 19:15:27
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

僕よりほんの少し年下くらいの、綺麗な女だった。 艶やかな髪が印象的で、 深い意味もなく、山南さんの連れだったら見栄えするなと思った。

2014-03-11 19:15:47
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「こんな軒下じゃ、今に全身が濡れてしまうと思わない? 少しの間だけだよ」 「で、でも……」 おろおろと、周りを確認してから、結局、女も僕のあとに続いた。

2014-03-11 19:16:19
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

二人が入り込むと、お堂の中はとても狭く感じる。 僕は風と一緒に吹き付けてくる雨を凌ぐために、木戸を閉めた。 女はその音に驚いたが、まだ風が木戸をがたがた震わせていたので、 正体を知ってか胸をなで下ろしていた。

2014-03-11 19:16:45
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「ねえ、君、名前は何ていうの」 僕は横になりながら尋ねた。

2014-03-11 19:17:01
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

女はのどを鳴らすような咳を二、三度吐き出し、 「ゆら、と申します」 手を口にあてながら答えた。

2014-03-11 19:17:30

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