飛翔
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僕は近藤さんに必要ないんじゃないか。 遠のいていく近藤さんを、追いかけていくこともできないのなら、 僕が江戸を離れた理由はどこにある?
2014-03-10 19:23:12❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*
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切望していた近藤さんからの信頼。 それは試衛館の塾頭としての僕に寄せるものと、 新選組一番組組長の沖田総司に寄せるものとは、異なっていた。
2014-03-11 19:05:10![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
子供の頃から試衛館にいたから、 源さんも、土方さんも、 僕のことをいつまでも子供扱いして、一人前に見てはくれなかった。
2014-03-11 19:06:21![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
長い年月は僕の見た目を子供から大人に変えていったのに、 最初から大人だった人にとっては、 僕の見た目の成長はあまり関係ないらしい。 皆、はらはらしながら僕を見ている。そんな感じだ。
2014-03-11 19:07:40![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
何をしてはいけないのかを感じ取ることは、 人の顔色を窺うのと同じことだ。 僕は顔色を見なくても、自然と体で覚えていった。
2014-03-11 19:08:20![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
近藤さんを守るために意思を捨てたはずだった僕は、 近藤さんに認めてもらいたいがために、 沖田総司という個でありたいと願い、 本末転倒な自分自身に苛々する。
2014-03-11 19:09:51![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
いたたまれなくなったある日、 お昼を過ぎてからふらりと屯所を出て、 不逞浪士の存在も、世の中の仕組みも、新選組であることも忘れて歩いていたら、見知らぬ場所まで来ていた。
2014-03-11 19:10:34![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
人気のない道を選び歩いて来たせいで、華やかな京とはまた違った色の景色が目の前にあった。 少し向こうに見える低い山を目指して帰って行く鳥や、 一帯を占める畑の均されていない土の上で 追いかけっこをしている二人の子供。
2014-03-11 19:11:02![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
僕は知らず子供を目で追い、その無邪気な笑顔を羨ましく思う。 あんな風にこころから笑えていたのは、いつの頃だっけ。 大先生のところに弟子入りする前、僕はどんな遊びをしていたかな。
2014-03-11 19:11:19![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
足元に生える草の葉を鳴らしてみようと千切ってみる。 でも秋の草は瑞々しさを内に隠していて、 くちびるの上でそれを感じることはできない。
2014-03-11 19:11:44![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
風に吹かれても折れはしないのに、 人には簡単に手折られてしまう秋の草花。 春や夏を彩る花は、今はすっかり身を潜め、 秋や冬をじっと耐え、あるいは実になって木の先で過ごす。
2014-03-11 19:12:17