飛翔

綺羅(@kiraboshi219)さんによる薄桜鬼の創作小説第9弾です。 4月14日、解説文更新しました。 第1弾「黒と白~斎藤一~」http://togetter.com/li/587101 続きを読む
3
前へ 1 ・・ 6 7 次へ
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

人の生命を奪うことには全て意味があった。

2014-03-10 19:21:51
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

斬った相手が、近藤さんのために死ねることを、誇りにして欲しいとさえ思いながら、 僕は刀になった。

2014-03-10 19:22:04
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

守るためじゃなく、 ただ傷つけさせないための、 独りよがりの刀に。

2014-03-10 19:22:22
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

それでも使って欲しかった。 近藤さんの側に、意識の側にいたかった。

2014-03-10 19:22:34
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

組織となっていく新選組の中で、 一番組を任されて、僕はますます孤独を感じた。

2014-03-10 19:22:55
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

僕は近藤さんに必要ないんじゃないか。 遠のいていく近藤さんを、追いかけていくこともできないのなら、 僕が江戸を離れた理由はどこにある?

2014-03-10 19:23:12
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

たとえば僕がひとりになったら、 僕は何が出来るだろうか__。

2014-03-10 19:23:30

❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*

🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

上洛してから、皆には得るものがあった。 でも僕は、得ているつもりで、 その実失っているものばかりだった。

2014-03-11 19:04:47
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

切望していた近藤さんからの信頼。 それは試衛館の塾頭としての僕に寄せるものと、 新選組一番組組長の沖田総司に寄せるものとは、異なっていた。

2014-03-11 19:05:10
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

旧知の仲間との絆は深く、揺るがないものだったけれど、 僕はその中で、異質なものとして含まれていた。

2014-03-11 19:05:56
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

子供の頃から試衛館にいたから、 源さんも、土方さんも、 僕のことをいつまでも子供扱いして、一人前に見てはくれなかった。

2014-03-11 19:06:21
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

姉に捨てられた僕を、 皆で護っているつもりだったんだと思う。

2014-03-11 19:06:38
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

僕はそういうことには見切りをつけて、 たった一つ許された、剣の道の上だけを歩いてきた。

2014-03-11 19:07:11
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

長い年月は僕の見た目を子供から大人に変えていったのに、 最初から大人だった人にとっては、 僕の見た目の成長はあまり関係ないらしい。 皆、はらはらしながら僕を見ている。そんな感じだ。

2014-03-11 19:07:40
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

何をしてはいけないのかを感じ取ることは、 人の顔色を窺うのと同じことだ。 僕は顔色を見なくても、自然と体で覚えていった。

2014-03-11 19:08:20
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

いつまでも僕を子供扱いする連中からの自立。 僕はいつの間にかそんなことを思うようになっていた。

2014-03-11 19:09:30
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

近藤さんを守るために意思を捨てたはずだった僕は、 近藤さんに認めてもらいたいがために、 沖田総司という個でありたいと願い、 本末転倒な自分自身に苛々する。

2014-03-11 19:09:51
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

いたたまれなくなったある日、 お昼を過ぎてからふらりと屯所を出て、 不逞浪士の存在も、世の中の仕組みも、新選組であることも忘れて歩いていたら、見知らぬ場所まで来ていた。

2014-03-11 19:10:34
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

人気のない道を選び歩いて来たせいで、華やかな京とはまた違った色の景色が目の前にあった。 少し向こうに見える低い山を目指して帰って行く鳥や、 一帯を占める畑の均されていない土の上で 追いかけっこをしている二人の子供。

2014-03-11 19:11:02
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

僕は知らず子供を目で追い、その無邪気な笑顔を羨ましく思う。 あんな風にこころから笑えていたのは、いつの頃だっけ。 大先生のところに弟子入りする前、僕はどんな遊びをしていたかな。

2014-03-11 19:11:19
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

足元に生える草の葉を鳴らしてみようと千切ってみる。 でも秋の草は瑞々しさを内に隠していて、 くちびるの上でそれを感じることはできない。

2014-03-11 19:11:44
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

風に吹かれても折れはしないのに、 人には簡単に手折られてしまう秋の草花。 春や夏を彩る花は、今はすっかり身を潜め、 秋や冬をじっと耐え、あるいは実になって木の先で過ごす。

2014-03-11 19:12:17
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

寒い時期につく花は色が濃く、存在が艶めかしい。 ……僕の嫌いな、花街の女達みたいだ。

2014-03-11 19:12:43
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

ぽつん、と頬に当たった滴があっという間に土を煙らせる雨となり、 僕は慌てて近くにあったお堂の軒先に飛び込んだ。

2014-03-11 19:12:59
前へ 1 ・・ 6 7 次へ