茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1177回「自然の素顔を、知りたい」
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しし(1)小保方さんのSTAP細胞の論文が、データの一部に不自然な点があるということで議論されている。調査が進んでいるようだし、現時点では、単純ミスのようなものだと私は信じたい。今朝は、小保方論文から離れて、一般に、自然科学におけるデータの意味について考えてみたい。
2014-02-25 07:17:34しし(2)一般に、科学者だって人間だから、研究者コミュニティに、あるいは社会にインパクトを与える研究をしたいと思っている。データが目の前にある時、そのデータを、インパクトを与えるかたちで「解釈」したいという誘惑が訪れることもあるだろう。しかし、それに屈したら科学ではなくなる。
2014-02-25 07:19:03しし(3)出てきたデータは、ある手続きの下において、自然の真理の一端を表しているはずである。それに謙虚に耳を傾けるとともに、自分の解釈以外の可能性はないのかと慎重につぶしていくのが科学的方法論である。そうでないと、自然の女神さまは真理のベールをなかなか開けてくれない。
2014-02-25 07:20:06しし(4)たとえ、データを自分の目的に都合の良いように解釈したり、あるいはひどい場合には加工して、インパクトのある論文を書いたとしても、それは自然の「真理」から外れてしまっている点において、長続きはしない。むしろ、偽の情報が出ることで、自然の素顔がその分見えなくなってしまう。
2014-02-25 07:21:57しし(5)社会的な名声を得たいのか、それとも自然の素顔を見たいのか。科学は、前者よりも後者を第一義的な動機とすることで発展してきた。データを解析する時に必要なのは、前提や過程の慎重な検討であり、統計的な有意性のチェックである。これは、科学者が日常的にやっていることだ。
2014-02-25 07:23:17しし(6)物理学は、特に、データの有意性に対する要求水準が高い。新粒子など、興味を持たれている新現象が発見されたと確認されるためには、何桁もの精度で、有意なデータが出なければならない。このため、wishful thinking(願望的思考)があらかじめ、排除されている。
2014-02-25 07:26:14しし(7)一方、生物学は、対象としている現象が元々複雑である点に加えて、関与しているパラメータが多数にわたるため、解釈もさまざまな可能性がある。このため、物理学と同じような意味で、有意性を厳密に要求することが難しい。このことが、生物学特有の「業界慣習」を生むことになった。
2014-02-25 07:28:25しし(8)生物学では、しばしば、「あの研究室のデータは、信用できる」「あの研究室から出てくる論文は、眉唾だ」のような言い方を聞く。つまり、データの有意性が、客観的な指標で決まるというよりは、より属人的である。誰がデータを解析し、誰が論文を書いているかが評価に影響を与える。
2014-02-25 07:29:20しし(9)Natureのようなインパクトファクターの高い論文誌に掲載されるのを重視するのも、他の分野でもあるが、生物学に特に顕著な現象で、よしにつけあしにつけ属人的傾向がある。数学論文は突然オンラインに査読なしで出ることもあるし、物理学もそれほど掲載誌にこだわらない。
2014-02-25 07:30:37しし(10)以上をまとめれば、科学には、確かに属人的、社会的な側面があるが、やはり、最後は、自然の素顔を知りたいのであって、そのためにはデータに謙虚に耳を傾けなければならない。最初の話に戻るが、小保方さんのSTAP細胞の現象が、解析ミスなどをクリアして、再現されることを願う。
2014-02-25 07:32:10