2014年3月6日

古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #5

更新五回目のまとめです。 川内から青葉の話を聞こうとする衣笠。その時起こったこととは。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「夜戦だああああああっ!」 真夜中の提督執務室に川内の叫び声が響き渡る。宵の口から5分とおかずに夜戦夜戦繰り返しているというのに、川内はまったく疲れも見せずに部屋の中を走り回ってはしゃいでいる。姉妹艦の神通はそれを止めるに止められず、那珂はダンスの練習に余念がない。

2014-03-06 01:35:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

真夜中だというのに執務室はずいぶん騒がしいけれど、これはこの鎮守府ではいつものことだ。川内が夜中になると毎日夜戦夜戦と騒ぎ他の艦娘から苦情が出たため、提督を代行している雷ちゃんたちは夜間の鎮守府の指揮権を川内型の三人に委任することにしたのだ。

2014-03-06 01:42:20
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

雷ちゃんたちは夜はゆっくり休め、川内はいざという時に夜戦ができ、他の艦娘たちもぐっすり寝られる一石三鳥の策。それに自他ともに認める艦娘一の夜戦バカなだけに、夜戦にかけては川内の戦闘センスは群を抜いている。そんな川内が夜間の当直で常に旗艦を張っているので夜の鎮守府の守りは万全だ。

2014-03-06 01:48:54
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

しかし、感心ばかりしているわけにはいかない。私は今晩の当直に体調不良で駆逐艦娘が二人足りないという話を聞いて、一緒に当直に入れば川内に青葉の話を聞く事が出来ると目論んで当直を志願したのだ。けれど、川内はさっきから一人で夜戦夜戦と騒いでいるためなかなかタイミングがつかめない。

2014-03-06 01:52:51
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

ちなみにこの場に加古はいない。その昔私たちがいなくなった後、一人になった青葉を最初に助けたのは川内だったので、最初に川内に話を聞きに行こうと思うと言ったところ、「衣笠一人で大丈夫だと思うから」と布団をかぶって寝てしまったのだ。ちょっと拍子抜けしたけれど、無理に起こしはしなかった。

2014-03-06 01:57:51
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「ここでターン……きゃっ!?」 「痛あっ!?」 いきなり後頭部に衝撃が走り、目の前に星が飛んだ。何かと思って振り向くと、那珂がダンスの練習に夢中になったあまり考え事をしていた私にぶつかってきたのだ。 「ああ、大丈夫?那珂ちゃん周りは見なきゃだめよ。ほら、衣笠さんに謝って」

2014-03-06 02:04:26
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

神通さんに促されて那珂がポーズをとる。 「那珂ちゃんうっかり☆ごめんね?」 ああうん、とあいまいに返す。相変わらずキャラの濃い姉妹だ。 「那珂はいっつもポーズ取ってるよね。そんなんじゃ夜戦できないじゃん」 川内が話に混ざってくる。怪我の功名か、話のとっかかりが出来た。

2014-03-06 02:13:49
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「あの、川内。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」 「何!?夜戦!?第三次ソロモン海戦の私の活躍とか聞いちゃう!?」 川内が身を乗り出し目を輝かせる。どこまで夜戦のことしか頭にないんだこの人。 古鷹ねーさんも結構夜戦好きだけど、確実に同じ造船所の川内の影響に違いない。

2014-03-06 02:19:15
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「いや、そうじゃなくて。青葉の話なんだけど」 なーんだ、と川内が萎れる。本気で気落ちしているようだけど、それには構わず話を続ける。 「昔のことなんだけどさ、私たちが沈んだ後の青葉のことが知りたいの。川内は、空襲で擱座した青葉を助けて曳航してくれたことがあったわよね?」

2014-03-06 02:25:08
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

その時のことを教えてほしい、と続けようとして私はぎょっとした。川内がいつになく真剣な顔で私の顔を見返してきたからだ。川内がゆっくりと口を開く。 「……その時のこと、どういう風に聞いてる?」 川内の意外な反応に面食らいつつも、私は文献で調べて得た知識を反芻しながら話した。

2014-03-06 02:31:28
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

サボ島沖海戦で大破した青葉が呉に戻ったこと。その間に起こった第三次ソロモン海戦で私が沈んだことを青葉は呉で知ったこと。再びソロモンに戻った青葉はメウエパセージ港で敵艦載機の空襲を受けた時、うっかり機銃を撃ってしまったために敵に発見され爆撃を受けて損傷し、擱座して沈没を免れたこと。

2014-03-06 02:38:18
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

そして一月の間木で偽装して隠れ、川内に曳航してもらってトラックに戻ったこと。私の話を聞き終わると、うん、と一つ頷いて川内が話し始めた。 「……青葉は、わりと元気だったよ。『青葉、またやっちゃいました』なんて舌出して笑ってね。まあ、空元気なのは丸わかりだったけど」

2014-03-06 02:42:33
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「曳航されてる間もうるさくてさあ。自分の周りに木を浮かべた工夫がどうだとかサルベージ船に取材したいだとか。ケガ人なんだからちょっとは静かにしてればいいのに」 川内が苦笑する。私もその時の光景を目に浮かべて笑った。ただ、妙に川内の言葉を選び選び話しているような印象が気にかかった。

2014-03-06 02:47:31
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

古鷹ねーさんや私たちのことは何か言ってはいなかったのだろうか。その疑問をぶつけるべく口を開きかけた瞬間、執務室の扉がノックされた。どうぞ、と川内が応える。扉を開いて執務室に入ってきたのは、古鷹ねーさんだった。 「こんばんは、川内さん。ああ、衣笠もいたの」

2014-03-06 02:52:02
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

私はまたも面食らった。青葉と関わった艦娘から話を聞くのは、古鷹ねーさんのいないところでやろうと決めていたからだ。私たちが沈んだ後の青葉の戦いは聞くだに壮絶そのもので、そんな話を古鷹ねーさんに聞かせてこれ以上その心を痛めさせたくはなかった。

2014-03-06 02:59:02
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

古鷹ねーさんは夕方まで出撃していて、帰投した後は明日まで非番だと聞いていた。だから今晩のうちに川内から話を聞いておこうと思ったのに。 「古鷹どしたの?帰投したばっかで疲れてるでしょうに」 川内の問いに古鷹ねーさんが応える。事もなげに。 「今晩の当直が足りないって聞いたんです」

2014-03-06 03:03:32
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「ええ?確かに駆逐艦の子が二人休んでるけど、衣笠もいるし、古鷹が無理することないよ?」 「でも、当直の定数は足りてないんですよね?私、今日はそんなに疲れてないから当直やりますよ」 「でも古鷹明日も出撃あるんでしょ?当直もやったら休む時間ないじゃん」 「一日くらいなら大丈夫です」

2014-03-06 03:09:27
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

二人の応酬を聞きながら、私はまた古鷹ねーさんの悪いくせが出た、と思った。古鷹ねーさんは、どこか自分の身を顧みようとしないところがある。自分以外の、例えば艦隊のため、鎮守府全体の利益のためならいくらでも自分を犠牲にしようとする。しかも本人にはその自覚がないらしい。

2014-03-06 03:14:21
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

こういうひとだから、サボ島沖でもためらいなく青葉の盾になって戦えたのかもしれない。けれど、そんな古鷹ねーさんを見ていると泣きたいような気持ちになってくる。 「いいから、寝てなさいってば。深海棲艦が鎮守府近くまで来ることなんて滅多にないんだから、定数にたりてなくたって大丈夫よ」

2014-03-06 03:21:17
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

川内が古鷹ねーさんの背中を押して執務室から追い出そうとしている。けれど、古鷹ねーさんの方も「でも万一の時」とか「皆が心配で」と譲らない。このままじゃらちがあかないし、川内から青葉の話を聞き出すこともできない。私は意を決して川内に加勢しようと二人に近づいた。その時。

2014-03-06 03:26:30
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

ジリリリリン。執務室の机の上の電話が鳴った。一番近くにいた神通さんが素早く受話器を取り上げる。 「はい、執務室……電探に感あり!?鎮守府東方に深海棲艦の艦隊ですか!?」 執務室の全員が色めきたった。川内がすぐさま下知を飛ばす。 「古鷹、雷ちゃんたちに連絡!那珂、出撃準備!」

2014-03-06 03:32:48
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

古鷹ねーさんが執務室の別の電話を取り上げ、第六駆逐隊の部屋の電話を鳴らす。那珂は艤装のチェックを素早く終えていく。その間にも神通さんは鎮守府に設置された地上電探の妖精さんからの情報を次々にメモに書きとめて川内に渡していく。メモを一瞥した川内の顔が曇った。

2014-03-06 03:37:13
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「駆逐2、軽巡2、重巡1に……旗艦は戦艦ル級と思しき大型艦……上っ等っ!」 予想以上の敵勢力。こんな大兵力が鎮守府近海までやってくることは滅多にない。川内が凶悪な笑みを浮かべ、那珂に向かって声を張り上げる。 「那珂、出撃準備は!?」 「いつでもおっけーだよ!」

2014-03-06 03:45:55
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「提督たち、いま執務室に向かってます!」 古鷹ねーさんの報告を受けて川内が頷く。 「よし、川内、水雷戦隊出撃します!単縦陣で衣笠はあたしたちの後、古鷹は最後尾!鼻っ面叩いて追い返すわよ!」 はい!と全員が応じる。その時、窓から見える真っ黒な海に砲火の光がきらめいた。

2014-03-06 03:50:32
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「ええ、うそぉ!?もう始まっちゃった!?」 出鼻をくじかれた川内が素っ頓狂な声を出す。 「近海の哨戒にあたってる艦隊が先に接触したんだわ」 神通さんが哨戒ルートを記した書類をめくりながら言う。 「でも、編成は重巡1に駆逐3。彼我の戦力差はかなりあります。早く援護に行かないと」

2014-03-06 03:56:39
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