防衛日記まとめ

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シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

素手での戦いは駆逐艦には厳しいものがあったようで、漣は隊長の拳を躱すことに徹しているようだった。 だが今ここに居るのは、彼女一隻だ。 くそ、と歯噛みするがこちらが出て行ったところでミンチになるだけだ。 どうしたら—— 「——あら、何かお困りでして?」 #防衛日記 #舞鶴漣日記

2014-03-31 19:46:29
シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

ふわ、と亜麻色がこちらの横に並び立つ。 「…あらあら、提督ったら埃まみれの泥まみれ。ますます男の子みたいですわね」 ゆるく巻かれて踊る髪と、鈍色に光る艤装。品のいいブレザー姿の少女がそこに居た。 ——熊野? #防衛日記 #舞鶴漣日記

2014-03-31 19:49:55
シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

名前を呼ぶと、プリーツスカートを軽くつまんで小さく笑う。 「ええ、提督」 その瞳は朝の海を写したように清々しく、とびっきりの自信に満ちた笑みを浮かべていた。 「神戸生まれのお洒落な重巡、熊野がお困りの提督の為に、馳せ参じましてよ?」 #防衛日記 #舞鶴漣日記

2014-03-31 19:52:40
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…細かいことは後で話そう。漣を助けてくれ。 「あら、提督」 笑みを浮かべたままの熊野が砲を構える。 「助けるだけでよろしくて?」 …漣より練度の低いお前が叶う相手だと思うか、アレ。 「…まぁ、そうですわね!」 #防衛日記 #舞鶴漣日記

2014-03-31 19:56:24
シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

こちらが耳を塞ぐのを確認した熊野が砲を放つ。 それに気を取られた隊長の顔面をぶち殴ってから漣が離脱して来る。 「——ありがとうございます、助かりました!」 「…しっかり一発当てて来るなんてさすがですわね…」 #防衛日記 #舞鶴漣日記

2014-03-31 19:58:46
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 とは言っても漣は言うなれば小破状態。どうしたものかと彼女達の後ろに隠れていると上司から声がかかる。 「応援なら、『お前の艦隊』がすぐに来るぞ」 …なんでそんな準備いいんですか。 「上司としてのたしなみ——と言いたいところだが、協力者がいてな」 #防衛日記 #舞鶴漣日記

2014-03-31 20:00:41
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協力者? 「ああ。お前から定期の報告が来なくなった後、前任の提督を名乗る人物から連絡があってな」 ていうか連絡あるまで放置してたんですか。 「調査に行くにも俺は自分の司令部を離れられなかったからな」 悪びれもせずに肩を竦める上司。この野郎。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-04 21:48:25
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「まぁ、細かいことは後でいい」 さて、と上司は隊長に向き直る。 俯いて体を揺らす隊長の口からは、ぶつぶつと音が漏れている。 だがその音はチャンネルのズレたラジオの様に聞き取ることが出来ない。 「いい加減疲れたろう、××。これは提案なんだが——」 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-04 21:49:22
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手にした軍刀を構え、僅かにその身を沈める。 「俺が終わらせて——」 上司の言葉が終わる前に隊長が跳躍し、その顔面を殴り飛ばす。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-04 21:53:27
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低い破裂音と共に上司の体は僅かによろめくが、それだけで踏みとどまる。 ぐん、とその体をしならせて軍刀を逆手に握ると、下段から振り抜いて柄で以って隊長の横面を殴り返した。 ——だがしかしその全力の打撃であっても、隊長は平然と、茫とその場に立っている。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-04 21:58:01
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ぐじゅ、と湿った物が潰れる音がした。 隊長の頬肉が熟れたトマトのように潰れた音だった。 「我々は、負けて、いない」 隊長は削げ落ちそうな頬をゆっくりと動かし、その一言だけを明瞭に告げるが、続く音は千切れて乱れ、不快な雑音に変わるのみだ。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-04 22:00:40
シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

黒々とした油の様な体液を垂れ流す唇から漏れるその音を、自分は聴いたことがある。 隊長の声らしいものに重なってごうごうと鳴る音は、船の駆動音によく似ている。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-09 17:10:14
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飛鷹を沈めたあの夜、隼鷹が招き入れた偽の飛鷹。 その時、共に帰って来た最初の隼鷹が泣きながら垂れ流していたのと同じ。 ぐずぐずにふやけて膿んだ、怨嗟の音だ—— 「ご主人様?」 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-09 17:15:33
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漣の声で我に返り、慌てて周りを見ると、少しだけ宙に浮いていた。 「大丈夫ですか?バリケードでも作ります?」 それなら天幕にでかい机があるけど。ところでなんで私は熊野の小脇に抱えられてるの。 「だってご主人様、トロいんですもん」 なんも言えねぇ。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-09 17:20:52
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対する上司はと言えば、殴った拍子にこびりついたらしい肉片を払うと軍刀を構え直し、血の混じった唾を吐き捨てる。 「…人の口上は最後まで聞け。とことん浪漫の分からん奴だな」 まるで大したことはなさそうに笑うその姿に、漣がうへぇと嫌そうな声をあげる。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-09 17:29:26
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「やー…噂には聞いてましたが、少将様ってマジもんのアレなんですねぇ…。漣、ちょっと引いちゃうかも」 人の上司をアレとか言うなよ。 あの人陸に居ると特攻かましてすぐ死にそうだから海に居るって噂なだけで、あとは有能な人なんだ。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-09 17:32:18
シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

ああ、と熊野が呆れた様に頷く。 「…あの方、戦車が相手でもあんな風に突っ込んで行きそうですものねぇ。それは、すぐにおっ死んでしまいますわ」 それだけじゃないはずなんだがな、白兵戦好きすぎて訓練の時に指導から外されてたらしい。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-09 17:38:55
シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

ががん、と硬い音が連続して響く。 見れば地面が僅かに抉れ、隊長と上司の距離が大きく開いていた。 鞘と柄とで続けて打撃したらしく、柄は隊長の肉がこびりついているし、手にした鞘もひしゃげて拵えが台無しになっている。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-11 12:06:53
シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

こちらの話が聞こえていたらしく、ぜえ、と大きく息をついてから上司は悪態をつく。 「…お前ら、好き勝手言い過ぎだろ」 いやいや、少将殿の戦いぶりを称賛させて頂いていただけです。 「…適当言いますのねぇ」 「まぁ、間違っちゃいませんて」 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-11 12:08:02
シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

部下の言葉を何を白々しい、と上司は笑う。 「まぁ好きに笑え。こいつの相手は俺がやる。だが——」 隊長の背後、上司が示すその向こうには歪な影が立ち上がりつつあった。 「あれの相手は任せたぞ。雑魚まで構ってやるほど暇じゃないのでな」 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-11 12:09:21
シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

彼が雑魚と称したそれは成る程、確かに雑兵であるのだろう。 人の肉を纏いながら、その有様すら保てぬ歪な兵士たち。 それは人の足で歩きこそしていたが、余分に生えた手足の重みの為か、のろのろと進む無様な軍団となっていた。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-14 23:08:08
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迫るそれらに立ち向かう為に、漣は己の主砲を構えて軽い調子で言う。 「海で言うなら駆逐イ級、ってとこですかね」 倣うように主砲を掲げた熊野は、どうでもよさそうに笑った。 「…海でないのが、しんどいところですけど。ま、どうせ雑魚ですものね」 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-14 23:10:06
シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

艦娘がその力を存分に発揮できるのは海上だ。彼女達と艤装を繋ぎ、息を吹き込む原動力——海の底に沈む英霊の加護が、彼女達の力を最大限に引き出し、敵を水底へ叩き返す。 原理はわからない。 わかってはいけない。 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-16 00:17:10
シダケイジ🏢・😺⚓️ @shi_dakg

「もう少し凌げば鈴谷達が来るはずですわ。ですから提督はそれまで必死こいてお逃げあそばせ」 優しく降ろされて、大人しく後方へと下がる。他の連中にも避難を促すべきだろうか。 「…そういえば、なんで熊野さんだけ先行してたんですか?」 #舞鶴漣日記 #防衛日記

2014-06-16 00:18:37