古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #13

更新十三回目のまとめです。 古鷹が青葉をかばったサボ島沖夜戦の記憶、そして衣笠が沈んだ第三次ソロモン海戦の記憶。 衣笠を気遣う加古と、天龍と龍田。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

声を張り上げ、加古をなじる。 「あんた、なに他人事みたいな態度してるのよ!?誰のために私が今まで頑張ってきたと思ってるのよ!?あんたのねーさんのためでしょ!?なのにあんたは今まで何もしないで寝てるばっかりで!」 こんなのただの八つ当たりだということは、十二分にわかっていた。

2014-03-30 17:37:24
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

加古は何も言い返さず、ただちょっと悲しげに笑っただけだった。その態度が余計に私を苛立たせた。 「いい加減にしてよ!何もしないで平気な顔して!どうせあんたこのままでいいと思ってるんでしょ!?古鷹ねーさんと青葉のことなんかどうでもいいんでしょ!?」 悪態が次から次へと口をついて出た。

2014-03-30 17:44:56
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

加古は何も悪くないのに、自分が止められなかった。すぐに後悔が押し寄せてきた。加古の顔が見られず、両手をベッドに叩きつけて下を向いた。 「出てって……出てってよ……」 絞り出すようにそう言うのが精いっぱいだった。加古は、少しだけ間をおいた後、何も言わずに出ていった。

2014-03-30 17:49:38
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「部屋に帰りなさい、衣笠」 昼、出撃のために執務室にやってきた私の顔を見るなり、雷ちゃんはこう言った。理由を問いただそうとすると、手でさえぎられた。 「わからないの?そんなひどい顔してる艦娘なんて出撃させられません。みすみす轟沈者を出すことになるわ。そんなのごめんよ」

2014-03-30 17:59:16
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私は、そんなことには絶対ならないから、と食い下がろうとした。青葉と古鷹ねーさんのために何もできないのに、この上艦娘としての務めも果たせないなんて。 「……しばらく休暇を与えるわ。任務は気にしなくていいから、ゆっくり休みなさい」 雷ちゃんの気遣いが、今は心苦しさしか生まなかった。

2014-03-30 18:08:17
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

それに、私が抜けたら誰がその穴を埋めるのか。南方海域前面の最深部にたどり着くにあたって艦隊に必要な重巡洋艦娘は二隻。予定では摩耶と私だったので、練度が高く同じ重巡の古鷹ねーさんが代わりに呼び出されることになる。昨日加古のフォローに振り回されて疲れているだろう古鷹ねーさんが。

2014-03-30 18:15:31
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これ以上古鷹ねーさんに迷惑かけたくない。何が何でも私を出撃させてくれるよう頼もうと顔を上げると、私の頭越しに雷ちゃんが声をかけた。 「ちょうどいいところに来たわ。あんた、衣笠の代わりに出てくれる?」 振り返ると、執務室の扉を開けて加古が入ってくるところだった。

2014-03-30 18:19:11
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「うん、いいよ」 加古からは、いつもの眠たげでだるそうな雰囲気など微塵も感じられなかった。目をしっかりと見開き、背筋をまっすぐにして佇んでいる。艤装も装着し、いつでも出撃できる態勢だった。 「お、加古がやる気なんて珍しいな。明日は雪か?」 摩耶がからかう。 「ま、たまにはね」

2014-03-30 18:24:23
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

加古が事もなげに返す。そして、私に目を向けた。今朝ひどい八つ当たりをしたばかりで、うしろめたさに加古の顔が見られない。加古は、顔を伏せた私の隣を何も言わずに通り過ぎた。 「じゃあ、これで決まりね。旗艦時雨以下、摩耶、加古、長門、陸奥、夕立で出撃よ。まず今回の目標として……」

2014-03-30 18:30:16
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

雷ちゃんが出撃する艦娘たちに指示を始めた。長門さんたちが意見を出し、作戦会議が始まる。手持無沙汰になった私は、その声を背に執務室を出た。消えてしまえるものなら、消えてしまいたかった。

2014-03-30 18:37:05
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

自分の部屋に戻り、ベッドに突っ伏す。もう何も考えたくなかった。それなのに、古鷹ねーさんのさびしげな笑顔や、青葉の自嘲するような笑みが頭から離れない。私は必死に幸せだったころの皆の顔を思い出そうとしていた。そのため、部屋のドアが何度もノックされていたのになかなか気づかなかった。

2014-03-30 18:49:12
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

重い体を引きずり、のそのそと戸口に向かう。顔に触れると、腫れが一段とひどくなっていた。とても人に見せられるような顔はしてないのだろう。けれど何もかもどうでもよかった。ノブに手をかけ、ドアを開ける。そこに立っていたのは……天龍と龍田だった。

2014-03-30 18:56:09
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

~続く~ (昨日お伝えした通り、四月からこれまでの更新ペースを保てない可能性があります。三月中に出来る限りお話を進めるべく、本日深夜にも更新するかもしれません。無理のない範囲でお付き合い下されば幸いです。よろしくお願いいたします)

2014-03-30 18:59:44
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

(あとお話と関係なくて恐縮ですが、むろさんお誕生日おめでとうございます。古鷹青葉を幸せにするまでまだ先は長いですが、あなたの古鷹青葉のおかげで、このbotは生まれました。感謝することしかできませんけれど、本当にありがとうございます)

2014-03-30 19:00:56