ゴールドラッシュ・オブ・ザ・デッド #05
「……そうだ、姉さん。フライングデッドにはもう一つ習性があったよね。生前の負の感情を垂れ流すってやつ」 「ああッ! アタシも聞いたことがあるぞッ!」 「……ありがとう。実は『女装癖がある悪い弟』だったこと、叫ばずに死ねます」 25
2014-04-02 19:12:52「バカヤロウ、そんなん可愛いモンだっつーの――ッ!」 ターンッ! と銃声が木霊した。 そして、リコリスは救われた。心臓が止まり、腐食が止まった。人間のまま死ぬことが出来た。半分腐りかけた弟の顔にケヴィンは頬を寄せる。 26
2014-04-02 19:13:21「ぐすっ……、なあ、誰か……」 肩を震わせるケヴィン。そこに羽を広げたゾンビ共が近づいてくる。 秘装銃士は通路を押し留めるのに手いっぱい。こちらに銃を向けてる余裕はない。 27
2014-04-02 19:13:41「……誰かさ、頼むよ……神様なんていないことはよく分かった……荒野には神様も救世主もいやしない……だからさ、誰か、誰でもいい……」 血を吐くように彼女は叫んだ。震える魂そのもののような、彼女の慟哭が響き渡る。 28
2014-04-02 19:14:24「こいつらをぶん殴ってくれッ! この腐れゾンビ共を、誰か木端微塵にぶっ飛ばしてくれよ――ッ!」 「ギュルアァァァ! 楽ちい楽ちい、虫の足をもぐのは楽ちいなぁぁぁっ!」 まるで嘲笑うようにゾンビ共が躍り掛かった。だが、その牙が彼女に届く寸前。 29
2014-04-02 19:14:51――固く握られた拳がゾンビの顔面を真っ直ぐ捉えた! 「その願い、承ったァァァァッ!」 凄まじい爆音が弾ける。何体ものゾンビがいっぺんに吹っ飛んだ。 見開かれたケヴィンの瞳が、その少年の横顔を映しだす。 30
2014-04-02 19:15:21「へ、変態彼氏……っ!?」 現れたのは、入口で犠牲になったはずの少年だ。 ザァッと地面を滑り、盾になるように彼はケヴィンの前に立つ。 31
2014-04-02 19:15:42「あんたの怒り! あんたの哀しみ! 確かにこの俺が受け取ったッ! 任せろ! オーケィ! 信じて見てろ! この場のゾンビは残らず俺がぶっ飛ばすッ!」 そう言う少年の拳は――まるで秘装銃士の黄金の銃弾のように輝いていた。 32
2014-04-02 19:16:08