アイデンティティ・ポリティクスへの警戒 - 部落解放同盟での経験から

「差別者にも、被差別当事者にも、もののわからんアホがおるのだわ。その話をしたい」
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あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

盆暮れの挨拶すら突き返される関係が手のひらを返すように変化し冠婚葬祭の案内が届いたのは、不景気で工場を潰してしまい、仕方なく勤めをさがし運良く法律事務所に入ってから。世間体の良い仕事なんだね。俗っぽく差別的で、たまったものではない。親族としてまことに恥ずかしい。 @ndoro4

2014-04-08 03:32:30
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

ここまでが背景説明だ。語りたいのは解放同盟での体験。あるとき、支部の広報車で街宣していたときのことだ。それは狭山闘争(殺人犯として収監されていた部落出身の石川一雄さんの無実を訴える運動)の宣伝活動をしている最中だった。 @ndoro4

2014-04-08 03:33:18
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

とある小学校に差し掛かった時、青年部の一人がやおらマイクで「こらー、センコー、日共差別者集団、われ、出てきさらせー」と、授業中の校舎に向かいがなり始めたのだ。止めても止まらない。「言うたったらええんじゃい、あんな奴らには」。 @ndoro4

2014-04-08 03:33:41
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

彼にとって教師はなべて共産党で、部落の敵で、部落の敵は差別者で、差別者とたたかうのは正しいことなのだ。頭がくらくらするような事実誤認、誤謬だらけの論理なのだが、そういった行動が解放運動に対する打撃になることなど彼は考慮していなかった。 @ndoro4

2014-04-08 03:34:23
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

彼にとってそれが解放運動なのだった。あまり出来の良い方ではなく、バカにされることの多かったその青年にとって、誰はばかることなくマイクで自己主張できる機会なのだった。その表情は自己解放感にあふれていた。それは彼なりの、誇りを取り戻す行為であった。 @ndoro4

2014-04-08 03:34:57
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

ただ残念なことに、それは本当の意味で誇りを奪い返す行為ではなく、むしろ誇りを傷つける行為だったのだが、彼はそれに気付かなかった。こういった体験は、一度ではないし、彼ひとりでもなかった。なんちゅう恥ずかしいことをと、何度も目を伏せたものだ。 @ndoro4

2014-04-08 03:35:20
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

私の親族も同じことだ。私は部落出身者と結婚することがいかに人の道に外れた行いであるか、こんこんと諭されたことがある。「親戚中が白い目で見られるのだ、姉が離縁されたらどうする、自分1人が幸せならよいのか、それはあまりに自分勝手だろう」と。 @ndoro4

2014-04-08 03:36:24
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

「誰も差別なんかしていない、どこに差別がある、そんなものはあいつらのひがみだ、そんなことだから嫌われるのだ、世間の嫌われ者をわざわざもらってみんなが苦労する必要がどこにある…。」こんなド恥ずかしい理屈を、真顔で説き聞かされるのだ。 @ndoro4

2014-04-08 03:36:48
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

解放同盟のなかのアホは、たまたま運動が強くなったら自分が強くえらくなったと錯覚し、傍若無人に振る舞い始めた。私の親族はもう全員がアホで、たまたま多数派にいる強みで自分が偉いかのように錯覚して、人として許しがたい言葉を恐れもなく吐き出し続けた。 @ndoro4

2014-04-08 03:37:30
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

人というのは本当に悲しいものだと思う。集団のアイデンティティってなんだろう。あるとは思うが、それを一人々々がちゃんと身につけているのか。マイノリティといえども勘違い野郎はいる。「運動のゴールは被差別者が決める」というが、被差別者の誰が? @ndoro4

2014-04-08 03:37:53
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

部落解放運動の場合、部落にとっての不利益はすべて差別であると定式化されていた。まっとうに公平で公正な社会ならば被ることがなかったであろう不利益が差別ゆえにもたらされているという理屈はわかる。しかし解同に蔓延したのはそういった理屈ではない。 @ndoro4

2014-04-08 03:38:34
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

商売の競争に負けたら差別、勉強しないから成績の悪いのも差別、皮革の汚水公害さえ差別の膿だから取り締まるな。そういう理屈を金に換えるのが解放運動だった。金に換えるための理屈がうまくて押し出しの強い奴が幹部になる。運動が堕落するのは必然だった。 @ndoro4

2014-04-08 03:39:02
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

皮革産業は差別のせいで近代化が遅れ、資本に搾取されている、だから税金をまけろという。まけた税金で労働条件を改善して地区の生活水準をあげ、暮らしを安定させるなら話はわかる。だがそんな動きはついぞ生まれなかった。親方の豪邸や高級車や奢侈に化けただけだ。 @ndoro4

2014-04-08 03:40:30
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

皮革産業にも同業者同士の価格競争があるし、金融機関との利息交渉もあるのだが、税金を納めなくてもよいのでどうしても気が緩む。商社にむしられ、銀行にたかられ、気がつけば税金を納めなくてもかつかつの利潤しか得られなくなっていた。 @ndoro4

2014-04-08 03:40:59
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

そういう状況をよそに、幹部たちは人事抗争に明け暮れていた。活動の大半は運動の分析ではなく内部の敵の情報収集と多数派工作だった。あとは市役所に入り込んで仕事をこしらえること。そのような姿を私は専従として目の当たりにした。現ナマを配ったこともある。 @ndoro4

2014-04-08 03:41:41
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

もちろん、内部批判がないわけではなかった。だが私から見て正しいと思える批判は、「融和主義」として退けられた。体裁を構って世間に気に入られようとしているだけだというのだ。偏見を打ち破るのが解放運動であり、偏見多き世間の基準に合わせるのではいけないと。 @ndoro4

2014-04-08 03:42:08
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

批判は部落にとって不利益であり、不利益なものは差別だから、批判は差別だ、外部は解放同盟に従うべきなのであって、解放同盟を支持・支援することこそが差別者である一般民の義務であり、自己変革のたたかいだというのだ。この理屈で支援者は沈黙し、従った。 @ndoro4

2014-04-08 03:42:44
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

解放同盟は生活の場に根ざした大衆組織だから、暴力も利権もあるにはあるが、すべてをひっくるめて丸抱えで前進していくのだ、共産党のように雲の上からきれい事を唱えていても差別はなくならない、それは融和主義である。良心的古参幹部がそう語った。 @ndoro4

2014-04-08 03:43:13
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

私はこれに納得した。悪い面は確かにあるが、それは長く苦しい差別の中で身につけてしまったオリのようなものだ。一朝一夕に取り除けるものではない。大衆とともに悩み、大衆とともに汚れ、一緒に進んでいくのが正しい。合理的批判は無力な学問に過ぎないと信じた。 @ndoro4

2014-04-08 03:43:42
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

しょせん、どろくんは世間の人だからわからんよと言われると、分かるまでついていこうと思った。差別者日共集団が差別映画を上映するので粉砕せよと指令を受け、青年部を率いて上映会場に突入して壇上を占拠し、逮捕されたこともある。私はカルトの世界にいたのだと思う。 @ndoro4

2014-04-08 03:44:29
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

20代を省みて、いまは思う。貴重な内部の理性を「それは同胞としての批判ではない、共産党に汚染されてやっている外部批判だ」と決めつけ、同胞であるはずの人を外部に追いやってしまったのは、本当に正しかったのだろうか。 @ndoro4

2014-04-08 03:46:17
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

「被差別者の声」の正体はなんだったのだろう。理論闘争とは、被差別者の名のもとに、共産党や日本の声や社会主義協会や中核派が盛大に空中戦をやっていただけではなかったか。本当に地に足のついた、差別に苦しむ生活者から現れた声だったのだろうか。 @ndoro4

2014-04-08 03:46:47
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

人事抗争で多数を占めた勢力が県連を代表し、多数の県連を得た中央執行部が全国大会を代表し、その多数を占めた一政治勢力が中央を代表し、最終的に数人の幹部の談合で決まっていく方針。それは本当に「被差別者の声」なのか。 @ndoro4

2014-04-08 03:47:19
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

「部落大衆」は、理性の声を堅苦しいお説教だと切り捨てて、利権あさりもひっくるめて仲間なのだと抱え込んでくれる、耳障りの良い理屈に従っていただけではなかったか。外部には識字運動などの立派な成果を語り、「差別」を武器に支持を強要して成功したけれど。 @ndoro4

2014-04-08 03:47:53
あざらしじいさんアンチヘイト泥憲和 @ndoro4

マイノリティの意思と一口にいうが、それはそんなにくっきりと立ち現れるものなのだろうか。マイノリティも地域社会で生きており、日本の政治に巻き込まれ、思想傾向も様々である。マイノリティにのみ純粋に保持されている意思とは、幻ではないのか。 @ndoro4

2014-04-08 03:48:24