【第二部-八】止まらない血の滾り #見つめる時雨

夕立×時雨
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夕立視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

春の夜の、まだ冷たさを感じる風を切りながら走る。今はこの冷たさがたまらなく気持ちがいい。でも…足りない。もっと、もっと冷たくてもいい。でないと、私の身体は冷めてくれない。熱い。身体が熱い。全身の血が滾る。筋肉が燃える。我慢できないほどに。

2014-04-07 23:15:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

もうすぐ大規模な戦いが始まる、そんな予感。何か根拠があるわけじゃない。ただの、勘。夕立の勘。でも、夕立の身体が…魂が、何かを感じ取っていた。もうすぐアイツらが動き出すって。どこか夕立と似てる、アイツら。夕立と同じ目をしている、アイツら。

2014-04-07 23:20:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

思い切り暴れたい、そう身体が叫んでいる。夕立の中の闘争本能が、最高に素敵なパーティーしたいって叫んでる。でも、まだその時じゃない。今は、沈めないと。…違う、鎮めないと。だからこうして、夜の寮の敷地内を全力疾走。少しは、マシになるっぽい。

2014-04-07 23:25:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

夜戦演習で暴れられれば一番楽なんだけど、それがない日はこうして走るしかない。勝手に燃料と弾薬を持ちだしたら怒られちゃうし…。あ、スタート地点が見えてきた。もうすぐ十週目が終わるっぽい。息も上がってきたし…そろそろ大丈夫かな。少しずつ速度を緩め、やがて足を止めた。 「…ふぅ」

2014-04-07 23:30:26
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

息を整えながら、夜の空気を思い切り吸い込む。今日もいっぱい汗をかいた。シャツの襟元を引っ張り、服の中に空気を通す。スースーして気持ちがいい…。空を見上げると、綺麗な星空が目に入ってきた。 「……」 …暫く見上げていたら、星にモヤがかかった。…何?どうしたんだろう…。

2014-04-07 23:35:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「あれ…」 身体の熱が引かない。汗の気化熱も効果が感じられない。むしろ、身体の奥から湧き出してくるものは勢いを増していた。これ、まずいっぽい…?夕立、どうしちゃったの…?どうしよう…。こわいよ…。取り敢えず、どこかに座りたい…。寄りかかるものも欲しい…。

2014-04-07 23:40:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

木陰に座り込み、木に背を預ける。両脚を投げ出し、両腕の力も抜いた。あー…早く夕立の熱、引いてくれないかな…。そう思いながら、空を眺めた。 「……」 誰かの話し声が聞こえる。足音も。夕立の髪の一本一本が風に撫でられる感覚を、感じる。まるで全身が電探みたい…。

2014-04-07 23:45:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

ああ…高ぶる気持ちがちっとも収まらない。何かを思い切り壊してしまいたい。そんな危険な衝動が、夕立の中にある。ダメ…ダメだったら…。いっそのこと、ここで眠って…。…ダメっぽい。ちっとも眠くならない。目が…全身が、冴えちゃってる…。

2014-04-07 23:50:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…足音が近づいてくる。誰だろう…こんな時間に。それは夕立も一緒だけど…。守衛さんかな…。見つかっちゃうとまずいかも…。こんな時間に外にいたら怒られちゃう…。あれ、違う…?この歩幅、利き足…。これは…よく知ってる…。 「夕立、どこ?いたら返事して」 時雨…。

2014-04-07 23:55:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

心配して探しに来たのかな…。そういえば今何時だろう…。時雨が心配するくらいの時間になっちゃったのかな…。そう思っていると、寮の電気が消え始めた。…消灯時間だ。時雨が寮の窓を見ながら溜息をついた。…どうしよう、出て行った方がいいのかな…。でも…こんな状態じゃ…

2014-04-08 00:01:17
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…?時雨が足元の何かを拾った。何だろう…?様子を見てたら、時雨はそれを空へ向かって投げた。あれは…小石?…って、ええ!?こっち飛んでくる!?思わず飛び跳ねて避ける。小石は寄りかかっていた木にコツンと当たった。 「あ、いた!夕立!」 あ…見つかっちゃった…。

2014-04-08 00:05:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「自分の幸運体質はあまり好きじゃないけれど、たまには有効活用しないとね。ほら、戻るよ、夕立」 時雨が近づいて、手を差し伸べてきた。…本当なら、すぐにでもこの手を握りたい。でも…今は… 「…ダメ…。近づかないで…時雨…」 後退って、時雨から離れる。

2014-04-08 00:10:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

この感覚は、あの時と同じ。いや、あの時よりもっと酷い気がする…。また、時雨を襲っちゃう…。夕立に近づかないで…お願い…。 「…夕立、どうしたの?もしかして、また…」 気づかなくていいから…放っておいてくれればいいから…。ダメ…時雨…。 「…大丈夫だから、夕立」

2014-04-08 00:15:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「あ…あ…」 次の瞬間、夕立の身体が勝手に動いていた。夕立は、時雨を芝生の上に組み伏せていた。時雨は、いつもの優しい顔で夕立のことを見てた…。 「はっ…あぁ…く…うぅ…」 視界が歪む。涙だった。自分に、泣いていた。本当になんなの…この衝動…。ヤダ…ヤダぁ…

2014-04-08 00:20:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「夕立、前にも言ったよ。僕は…いいから」 時雨が身体を起こす。夕立の頬に…時雨の手が触れる。夕立は、思いっきり首を振った。嫌だ。嫌だ。ヤダ…ヤダ…。 「…夕立、僕はね…たった一人で、自分の中のものと戦ってる夕立って、すごいと思う。誰にだって、真似できることじゃない…そう思う」

2014-04-08 00:25:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

せっかく…時雨といい関係を築けたと思ったのに…また壊れちゃう…。夕立が、壊しちゃう…。そんなの…ヤダよ…。 「やだ…やだよ…」 「でも、このままじゃ夕立が保たないってば!僕は夕立に壊れて欲しくないんだ。僕は夕立を助けたい。夕立のこと、大切だから!」 時雨が、抱きついてきた。

2014-04-08 00:30:26
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

時雨は…山城さんが好きなのに…時雨の口から、そう言われたのに…そんなこと、もう出来ないよ…。村雨にも、もう頼れない。受け入れてくれるかもしれないけど、きっと悲しむ。悲しませちゃう。もう夕立は、一人で何とかするしかないのに…身体が…言う事を聞いてくれないっぽい…。

2014-04-08 00:35:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…あ…ぁ…」 口が、何かを求めて喘ぐ。身体が叫んでいた。時雨を滅茶苦茶にしたい。暴れたいという欲求は性欲に変換され、目の前の好きな人の柔らかい肌を求めていた。全身が沸騰しそうなくらい熱い。助けて… 「…僕は、夕立のこと、好きだよ。だから…もう!いいって言ってるじゃないか!」

2014-04-08 00:40:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

……え? 時雨、何して…。時雨…?ねぇ、何してるの…?何で、時雨の唇が…夕立のと重なってるの?これ…キス… 「…ふ…ぁ…あ…あぁ!」 夕立の中の何かが切れた。身体が言う事を聞かなかった。時雨を押し倒して、時雨の唇を求めた。今あるのは、ただの抑えきれない欲求だけだった。

2014-04-08 00:45:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

込み上がってくる性欲を、時雨にぶつけた。舌で時雨の唇をこじ開けた。時雨の口の中を犯した。時雨は…受け止めてくれた。時雨にフラれたことは、今はどうでもよかった。時雨の山城さんへの気持ちを考える余裕も、もうなかった。ただ、時雨が欲しかった。狂おしいほどに。

2014-04-08 00:50:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

湿度を帯びた時雨の舌が、夕立の舌と絡まり合う。身体が、あまりの刺激に悲鳴をあげていた。頭が…痺れる。これが…キス…。初めての…。 「あっ…ふ…ぁ…ん…」 耳の奥に、液体が弾ける音が響き渡る。ぐちゃぐちゃと、時雨と夕立の唾液が混ざり、絡まり、口の中いっぱいに広がって溢れていく。

2014-04-08 00:55:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「ぷぁっ…あっ…はぁっ…」 時雨の口を解放する。どちらのものかわからない唾液が、時雨の口周りを汚していた。時雨の呆けた顔が、目に焼きつく。 「あ…は…ゆうだち…」 「時雨…しぐれ…」 夕立はまた、時雨の唇を求めた。飢餓に喘いだ犬が餌にありついたかの如く、一心不乱に貪った。

2014-04-08 01:00:36
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「んっ!…ふ…んんっ!?」 時雨の腕が夕立の首の後に周り、ガッチリと固定された。瞬間、時雨の身体が、弓なりに反る。夕立を抱きしめる力が一気に強さを増し、そして急激になくなっていった。時雨の腕が、脱力して投げ出された。…時雨の唇を、再び解放する。 「あ…ぁ…はぁ…」

2014-04-08 01:05:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

時雨…時雨…ごめんなさい…。こんな… 「…泣かないで、夕立…。いいって…」 小さな、優しい声が夕立の耳に届く。でも、その声が余計に、夕立の罪悪感を煽った…。 「…ごめんね、僕、不器用で…。こんなことくらいしか、夕立の衝動を発散させる方法が思いつかないんだ…」

2014-04-08 01:10:22