春の月 -桜×土方歳三-
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沖田に想い人がいるのかどうかを確かめて欲しいという近藤の依頼、 土方が沖田に直接訊ねたところで、正直な答えが返ってくるとは思えない。
2014-04-17 21:19:42先ほどまで、花びらを追いかける姿を目にしていたせいか、 現れた雪村は桜の香りをまとっているような気がする。 土方の部屋に春を連れて来て、あたたかさまでも広げていく。
2014-04-17 21:20:30「掃除、御苦労だったな」 労いの言葉をかけられて、雪村ははにかみながら小さく縮こまる。 見られていたとは知らなかったのだろう。
2014-04-17 21:20:47本当は土方や沖田だけではない。 稽古の指導を終えた斎藤も、 日向で休憩していた原田と藤堂も、 皆、雪村を微笑ましく眺めていた。
2014-04-17 21:21:29だが皆は知っていた。 雪村が掃除をしていたのは、 隊士達が訓練に使う場所であったり、降雨によって水たまりができる場所だった。
2014-04-17 21:22:23花びらを踏んで滑らぬようにという気遣いが、皆嬉しかったのだ。 そして土方もまた、雪村が自らそうしている姿に、感謝していた。
2014-04-17 21:22:39「す、すみませんっ」 土方から距離を取ろうとしてつんのめってしまった雪村は、 そのまますっぽり土方の胸に受け止められてしまった。
2014-04-17 21:24:02上下の歯を合わせたまま、イッと怒られて、雪村はやっと大人しくなり、 半ばふてくされた土方の指が小さな花びらを摘み取る。
2014-04-17 21:24:40その表情は作り物。密着した部分から、土方の鼓動が伝わってしまうのが怖い、それを”土方”の顔で誤魔化そうとしている。
2014-04-17 21:25:48早々と身を離し、咳払いとともに強引に話題を変える。 「総司のことで聞きたいことがあって、来てもらった」 沖田の名を出した途端、明らかに雪村の顔色が変わる。 土方は表情を変えないまま、しかし手ごたえを感じた。
2014-04-17 21:26:21「総司に想い人がいるんじゃねえかって、近藤さんに聞かれたんだが、 この件は俺が総司から答えを引き出せることじゃねえ。 おまえならなんとか聞き出せるんじゃないかと思ってな」
2014-04-17 21:26:34本題に入ると、もう副長の顔になる。 しかしこれは副長としてではなく、個人的な頼みなのだが、 副長の顔をしてしまったのは、 内側のこころをまだ知られたくないと思う、土方の些細な抵抗なのだった。
2014-04-17 21:27:06❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*
後日、雪村は沖田が行き先不明ながら出掛けるという情報を持って来た。 その雪村の顔色が優れない。 土方は思わず、体調が悪いのかと訊ねてみるが、雪村はそれを否定した。 気にかかることがあるのだと言う。
2014-04-22 18:54:10