「ブラック企業アナリスト」新田龍さんのブラック企業分析を分析する

NPO法人POSSE事務局長/川村遼平 @kwmr_posse

（承前）あとは「ブラック企業アナリスト」を名乗りながら「「ブラック企業」という曖昧な言葉の存在が、この問題の解決を遅らせている」と主張したり、「識者それぞれが、独自の定義を基に自論を展開しているため、前提条件から共有できていない」とした上で独自の新定義を披露したり、平常運転です。

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（１）【もう「解雇規制緩和」の議論はやめよう　総合的な変化踏まえ「再定義」を】 (J-CAST) j-cast.com/kaisha/2015/02… 新田龍さん。こんなひどい会社の事例があるよという紹介の文章くらいにとどめておいた方がいいと思うのですが、今回はその域を出てしまいました。

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（２）「日本では、「正社員の解雇は規制が難しい」と言われる」。前後の文脈から察するに、「規制が厳しい」と言いたいのだと思われます。タイプミスであることを祈ります。

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（３）「当事者のどちらからでも一方的に解除を申し入れることができる（民法627条）」。条文とは違うし何だろうと思ったら、どうやらWikipediaからコピペしたようです。民法の条文に当たらずに切り貼りしたから文脈から浮いた印象があるんですね。

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（４）「正社員の整理解雇を行おうとすると、皆さんご存知のとおり「4要件」が必要とされる。……これにより、日本の正社員の解雇は厳しいと認識されているのだ」。整理解雇以外の解雇をご存知ないようです。だから「仮に「使えないヤツ」だったとしても、それだけを理由に解雇はできない」となる。

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（５）解雇規制の問題ではなく人的マネジメント全体の問題なんだ、というどこかで借りてきたような主張の後に、だから「規制緩和」でなく「再定義」と呼ぶべきだ、と主張。新田さんの主張を展開するなら、表現を変えろではなく対象を変えろと言うべきところです。

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（６）「解雇がしやすくなると失業率が上がる」という見解への新田さんの反論が、「元々の失業率の絶対値」が異なるから海外とは比較できないというものなのですが、「絶対値」の使い方が……。そもそも「上がる」か「下がる」かが問題なので海外との比較に意味はありません。

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（７）「会社都合で解雇されやすくなる」という見解に対しては、「組織に貢献できる自信がない人が、恐れて叫んでいるようにも感じられる」と反論。「ブラック企業アナリスト」を自称する人とは思えない発言です。「ブラック企業」に不当な評価をされる恐れはあって当然のものです。

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（８・終）解雇の金銭解決について、「法律でがちがちに縛られるよりも、労働社会の実態をふまえれば、こちらのほうが現実的」と主張。いま進みつつあるのは法制化しようという話なのですが、その辺りをどのように認識しているのか、不思議です。