アイヌ語の【焦げる?燃える?】

アイヌ文化研究者・アイヌ語爺さん( @aynuitak_jiji )による【焦げる?燃える?】のまとめです。
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非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

①【焦げる?燃える?】 ユカラに登場していたアエオイナカムイ、北海道南西部ではアイヌラックルと同一視される人文神だが、石狩はじめ北海道北東では普通オイナカムイは文化を伝える「神」でアイヌラックルとは別物と考えられる。

2014-04-21 15:02:36
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

② だから口承文芸中は全く違った描き方をされるのが普通だ。以前紹介した口承文芸の起源を伝える石狩の神謡で登場したオイナカムイは老人の姿をした全くの神だ。またフキノトウの起源の話ではオイナカムイは夫婦と男女二人の子と家族だが、これも全く神だ。

2014-04-21 15:07:37
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

③ このように石狩などで想起されるオイナカムイは神であって複数いる。普通天にいるが人間の姿で何か動物の姿をとることはない。そして重要なのは人間に文明文化を伝える事。物語の出来事が何かの起源とされる事も多い。

2014-04-21 15:12:18
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

④ それに対して我々が思い描くアイヌラックルは常に一人の人物。アイヌラックル自体は個人名ではないが、同じあだ名で呼ばれるポイヤウンペやオタスト゜ンクルが親子など複数存在するのに対し、アイヌラックルはほとんど人名といっていい程特定の個人を指す。

2014-04-21 15:17:01
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑤ またポイヤウンペが(時に神の血を引く設定があるにせよ)完全に人間なのに対し、アイヌラックルは arke kamuy-oroipe arke aynu-oroipe 半分神の中味、半分人間の中味と言われるとおり半神半人の英雄で、その力は神の血をひく故とされる。

2014-04-21 15:22:30
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑥ 面白いのは石狩ではやはりオタスト゜ンクルも同様に説明される事がある。そしてアイヌラックルもオタスト゜ンクルも人間界に暮らし人間の村の長である。つまりアイヌラックルの村とかオタスト゜ンクルの村が語られる。

2014-04-21 15:27:08
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑦ ポンオタスト゜クルやポンオタスト゜ンクフはユカラで言えばポイヤウンペに相当する少年英雄だが、石狩ではこれは語られず、神の血を引くオタスト゜ンクルも戦うことはまずない。それに対してアイヌラックルは英雄として戦う存在である。

2014-04-21 15:31:37
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑧ アイヌラックルとかぶる存在にサマイェクルがいるが、これは必ずしも英雄としての側面が語られるわけではないし、巨神コタンカラカムイと同一視されたり人間の村の長であったり、キャラクターはあまり固まってはいない。

2014-04-21 15:37:55
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑨ アイヌラックルを特徴づけるのはその出で立ちで、これは恐らくどこのアイヌも共通だろう。つまり袖や刀の鞘の端が焦げているとか燃えたとか訳される衣服や佩刀を身に付けている。

2014-04-21 15:42:48
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑩ これは石狩の言葉で ouhuy nikapattus ouhuy emussirka などと表現される。o-uhuyは(その尻・燃える)で、実際にどういうものかは文芸作品中の事だからイメージは様々あったであろう。とりあえず赤いとは考えられていたようだが、

2014-04-21 15:48:22
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑪ それが人によってくすんでいたり真紅だったり。まあこの辺はご自由にというところだな。わしは夢に出た姿から勝手に真紅と思っている。nikapattus についても諸説あるが、実在しない以上そのアット゜シをどう想像しようが自由だろう。

2014-04-21 15:53:29
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑫ 実在しないと言ったが、信仰としては古来各人が「アイヌラックル」とはこういうものだというしっかりしたイメージを思い描き伝承してきただろうから、絵など見える形にする時は要注意だ。これは違う!という意見は必ず出るだろう。

2014-04-21 15:57:59
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑬ これは、例えば、和人の神々の姿の実像など実在しないし分からないといっても、あまりに伝統的なイメージとかけ離れた自由な姿で描かれては違和感を覚えるのと同じだ。ましてそれが異民族の手でなされれば侮辱ととらえる人もでてこよう。

2014-04-21 16:03:14