守るべきもの -桜×藤堂平助-

綺羅さん(@kiraboshi219)による薄桜鬼の創作小説第12弾。 桜×○○シリーズ3作目。 最終回更新しました。 続きを読む
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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

慄く藤堂を放って、土方は山崎に尋ねる。 「千鶴を見かけなかったか?」 「昼食後、門前の掃き掃除をしていましたが、その後は見ていません」 土方の眉がぴくと動いた。

2014-05-13 23:22:15
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

藤堂の方に向き直った時、その顔は、副長として任務を下すのと同じ険しいものだった。 「平助、手の空いている者を集めろ。 どうやら千鶴は行方不明になったらしい」 「えっ!?ええっ!?」

2014-05-13 23:22:36
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「大袈裟に考えるな。 門のあたりで消えたってことは、通りすがりの誰かに道を尋ねられたとか、そういうことだろう。 押しの強い奴に頼まれて断り切れず、黙って出ちまったのかもしれねえ。 どうせ平謝りに謝ってくるんだろうが、一人で歩かせるのは気がかりだ。 早く迎えに行ってやれ」

2014-05-13 23:23:15
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

藤堂は踵を返し、すぐさま沖田、斎藤、永倉に伝達した。 言いたいことだけ言って、今にも屯所を飛び出して行きそうな藤堂を、 永倉が襟首つかんで引き止めた。

2014-05-13 23:24:04
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「待て待て、魁先生!むやみやたらに走り回るもんじゃねえ。 ちょっと来い」 「なんだよ新八っつあん!」

2014-05-13 23:24:33
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「いいから、話を聞け」 永倉は木の枝を拾うと、砂地に手早く線を引いた。 縦、横に描かれる線は、やがて屯所を中心とした一帯の略地図になっていく。

2014-05-13 23:24:51
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「京の地の利を活かすんだ、平助。 担当場所を決めて、そこを徹底的に探す。 報告し合う時間と場所も決めて、ちゃちゃっと千鶴ちゃんを見つけようぜ」

2014-05-13 23:25:17
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「あ……。うん、そうだな。 ありがとう新八っつあん、 オレ何も考えずに行くところだった」 藤堂は自分を恥じて、素直に永倉に礼を述べた。 引き止めてくれなかったら、きっと気持ちばかりが焦って、 闇雲に無駄な行動をとっていただろう。

2014-05-13 23:25:44
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永倉は力強く頷き、四人の捜索担当場所を割り振った。

2014-05-13 23:26:00
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

沖田は大宮通り、 斎藤は壬生川通りと櫛笥通り、 永倉は堀川通り、油小路通り、 藤堂は東中筋通り、西洞院通り。 北はそれぞれの判断で、南は八条通りまでとした。 一刻を以って西本願寺本堂前に集合と定め、四人は持ち場についた。

2014-05-13 23:26:40

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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「守るべきもの -桜×藤堂平助-」 第4回(最終話)

2014-05-14 17:31:44
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

阿弥陀堂門からいち早く走り抜けた藤堂は、 東中筋に出ると北上、花屋町通りまで出た。 そこに行くまでも絶えず視線を動かし、雪村の姿を求めた。

2014-05-14 17:32:27
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

一念寺を通過したあたりから、 雪村はどこかの寺にいるのではないかと確証なく思い、 割り振られた通りに面する寺院を思い浮かべてみる。

2014-05-14 17:32:48
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

藤堂の見回る通りの向こう筋には稲荷副若大明神神社がある。 「時間はまだあるし、行ってみるか」

2014-05-14 17:33:33
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

藤堂は走った。 辿り着いた若宮通りの神社にも、 その通り道にも雪村はおらず、藤堂は肩を落とす。 行き違う町民の何でもない姿がうらめしくさえ思われる。

2014-05-14 17:34:08
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

南へ引き返しながら、不満が声に出てしまった。 「千鶴……どこで、何やってんだよ」 いつも屯所にいるはずの雪村が黙っていなくなったことで、 当初は怒りにも似た気持ちがわいた。

2014-05-14 17:34:42
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

土方は誰かに道案内でも頼まれたのだろうと言っていたが、 なぜそう思ったのか、藤堂は考える間もなく行動した。 「勝手にいなくなったんじゃなくて、誘拐されたとか……ないよな」 藤堂の顔色が青くなる。

2014-05-14 17:36:13
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

手がかりが掴めないでいる間は、誘拐の可能性も否定できないではないか。 雪村は鬼に狙われている、 そのことが今更ながら、たまらなく胸をざわつかせた。 早く見つけなければ、と焦る気持ちに占められて、 自分の名を呼ばれていることに気がつかない。

2014-05-14 17:37:42
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「平助くーん!」 遠くから聞こえる声が、紛れもない雪村のものだと認識した時、 藤堂の体は思考の前に走り出していた。

2014-05-14 17:38:45
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「千鶴っ!!」 ほとんど体当たりで雪村を抱きしめる。 「平助くん!?どうしたの!?」 雪村は目を見開きつつ、藤堂の体に触れてよいものかどうか戸惑っている。

2014-05-14 17:39:02
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「馬鹿!おまえが勝手にいなくなるから、誘拐でもされたのかと思って心配したんだぞ!!」 「えっ!?」 藤堂が腕に力を込めたので、雪村の華奢な体が着物ごしに締め上げられる。

2014-05-14 17:39:51
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「苦しいよ、平助くん」 「あ、ご、ごめん!」 雪村から体を離し、自分が雪村に抱きついていたことを自覚して急に恥ずかしくなってきた。

2014-05-14 17:40:14
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「あの、心配かけちゃってごめんね。 実は、原田さんに頼まれて……」 原田は土方の使いで屯所を出ていたはずだった。

2014-05-14 17:40:34
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

原田が任されたのは、長州と関係を持つ女の内偵だった。 その女には長州藩士との間に子があったが、新選組は以前からその男に目をつけていた。 最近になってその男が家に戻って来なくなり、帰藩したのか、どこかで命を落としたか、行方を追っていたのである。

2014-05-14 17:41:16
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