守るべきもの -桜×藤堂平助-
女は伊予の訛りがあり、原田が同郷のよしみで近づいた。 人妻に新選組の男が言い寄っている、と世間には見えるかもしれないということで、急遽、門前で出会った雪村が原田の連れとなり、何気ない会話に混ざってくれと頼まれたのだと言う。
2014-05-14 17:41:40「な、なんだあ……そういうことだったのか」 藤堂はすっかり脱力してしまったが、気を取り直して雪村の頭を撫でた。 「千鶴が無事で、よかったよ」
2014-05-14 17:42:01「ありがとう、平助くん。 でも、私だって何かあった時に自分を護れるように、小太刀を習ってたんだし、 その、そんなに迷惑はかけないつもりではいるんだけど、 やっぱり、私なんかじゃだめだよね」
2014-05-14 17:43:41「迷惑かけられてるなんて思ったことはねえ。 オレは、千鶴が新選組にいる限り、 オレが傍にいる限り、その小太刀を抜かせるつもりはない。 オレがおまえを守ってやる!」
2014-05-14 17:45:24「ありがとう……、平助くん」 藤堂の本心を、互いに垣間見てしまった後の気恥かしさから、目を合わせられずにいると、 「よう、平助」 何食わぬ顔で原田が現れた。 一部始終を見ていた原田は、気を利かせて絶妙の間を割って出た。
2014-05-14 17:46:06「さ、左之さん、いたのかよ」 「なんだ、いちゃ悪いか。千鶴を連れてたのは俺だぜ。 千鶴を一人で歩かせるわけがないだろ」 「そうだけどさ、今までどこにいたんだよ」 「新選組の藤堂平助と一緒にいるところを見られると困るんでな、身を隠してた」
2014-05-14 17:46:21雪村を発見し、原田にいつもの調子で話され、藤堂にも、彼らしさが戻ってくる。 「あ、そうだ千鶴。オレ、おまえを探してたんだ。 あ、いや屯所で、だけど」 「何か用事があったの?」
2014-05-14 17:47:07雪村のふんわりとした笑顔は、 朝、藤堂が思っていたのとは違う感情を引き起こした。 「今度、休みの日にさ、一緒に花見に行かないか?」
2014-05-14 17:47:46綺麗なものを見せてやりたい。 大好きな女の子の喜ぶ顔が見たいから。 美味しいものを食べさせてやりたい。 君の笑顔が見たいから。 珍しいものを見た時の顔も、全部全部知りたいから。
2014-05-14 17:48:31この笑顔を守るため、もっともっと強くなる。 藤堂の剣は己の正義と信念に真っ直ぐなもの。 守るべきものに全てをかけて生きること、それが藤堂の新しい剣となっていく。
2014-05-14 17:48:51「報告の時間、忘れてた! 遅刻は一くんの小言のもと、総司の冷やかしのもと、 新八っつあんはおかずを狙う口実にしてくるに違いない!」
2014-05-14 17:49:17「平助、俺は別に後から帰ってもよくねえか?」 「何言ってんだよ左之さん!千鶴を無断で連れ出しといて、 土方さんの説教を食らわないとでも思ってるのか!?」
2014-05-14 17:49:59「あの、それは私も一緒に怒られますから」 「大丈夫、千鶴のことは俺が守ってやるからよ」 「千鶴を守るのはオレだっつってんだろ!とにかく走れ!」
2014-05-14 17:51:47騒がしい一行の中の二人が新選組の組長であることは、 町民にももちろん知られていて、 藤堂らが去った後には、彼らの間に笑いが満ちていた。
2014-05-14 18:37:15阿弥陀堂門で待ち構える沖田が、雪村を連れた藤堂の姿を認めると、 刻限を守らなかったことは水に流してやろうと斎藤が呟く。 永倉は藤堂が想像した通りのことを考え、もう一人の相棒を抱き抱えるようにして迎え入れる。
2014-05-14 18:38:59