守るべきもの -桜×藤堂平助-

綺羅さん(@kiraboshi219)による薄桜鬼の創作小説第12弾。 桜×○○シリーズ3作目。 最終回更新しました。 続きを読む
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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

女は伊予の訛りがあり、原田が同郷のよしみで近づいた。 人妻に新選組の男が言い寄っている、と世間には見えるかもしれないということで、急遽、門前で出会った雪村が原田の連れとなり、何気ない会話に混ざってくれと頼まれたのだと言う。

2014-05-14 17:41:40
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「な、なんだあ……そういうことだったのか」 藤堂はすっかり脱力してしまったが、気を取り直して雪村の頭を撫でた。 「千鶴が無事で、よかったよ」

2014-05-14 17:42:01
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「ありがとう、平助くん。 でも、私だって何かあった時に自分を護れるように、小太刀を習ってたんだし、 その、そんなに迷惑はかけないつもりではいるんだけど、 やっぱり、私なんかじゃだめだよね」

2014-05-14 17:43:41
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

自分の小太刀を引き寄せて見せた雪村だった。 藤堂はそれを見て、思わず叫んだ。

2014-05-14 17:44:00
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「迷惑かけられてるなんて思ったことはねえ。 オレは、千鶴が新選組にいる限り、 オレが傍にいる限り、その小太刀を抜かせるつもりはない。 オレがおまえを守ってやる!」

2014-05-14 17:45:24
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「ありがとう……、平助くん」 藤堂の本心を、互いに垣間見てしまった後の気恥かしさから、目を合わせられずにいると、 「よう、平助」 何食わぬ顔で原田が現れた。 一部始終を見ていた原田は、気を利かせて絶妙の間を割って出た。

2014-05-14 17:46:06
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「さ、左之さん、いたのかよ」 「なんだ、いちゃ悪いか。千鶴を連れてたのは俺だぜ。 千鶴を一人で歩かせるわけがないだろ」 「そうだけどさ、今までどこにいたんだよ」 「新選組の藤堂平助と一緒にいるところを見られると困るんでな、身を隠してた」

2014-05-14 17:46:21
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

原田にかかるとまるで餓鬼扱いされてしまう藤堂だが、 見え隠れする培われた絆が、二人には心地よいのだ。

2014-05-14 17:46:53
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

雪村を発見し、原田にいつもの調子で話され、藤堂にも、彼らしさが戻ってくる。 「あ、そうだ千鶴。オレ、おまえを探してたんだ。 あ、いや屯所で、だけど」 「何か用事があったの?」

2014-05-14 17:47:07
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

雪村のふんわりとした笑顔は、 朝、藤堂が思っていたのとは違う感情を引き起こした。 「今度、休みの日にさ、一緒に花見に行かないか?」

2014-05-14 17:47:46
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

綺麗なものを見せてやりたい。 大好きな女の子の喜ぶ顔が見たいから。 美味しいものを食べさせてやりたい。 君の笑顔が見たいから。 珍しいものを見た時の顔も、全部全部知りたいから。

2014-05-14 17:48:31
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

この笑顔を守るため、もっともっと強くなる。 藤堂の剣は己の正義と信念に真っ直ぐなもの。 守るべきものに全てをかけて生きること、それが藤堂の新しい剣となっていく。

2014-05-14 17:48:51
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「じゃあ、時間だけど……あっ!!」 「なんだ、大声出して」 藤堂は雪村の手を引いて、慌てて前に進みだす。

2014-05-14 17:49:02
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「報告の時間、忘れてた! 遅刻は一くんの小言のもと、総司の冷やかしのもと、 新八っつあんはおかずを狙う口実にしてくるに違いない!」

2014-05-14 17:49:17
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

急げ!! 藤堂の掛け声とともに、走り出した三人の影が花屋町通りに落ちる。

2014-05-14 17:49:28
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「平助、俺は別に後から帰ってもよくねえか?」 「何言ってんだよ左之さん!千鶴を無断で連れ出しといて、 土方さんの説教を食らわないとでも思ってるのか!?」

2014-05-14 17:49:59
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「あの、それは私も一緒に怒られますから」 「大丈夫、千鶴のことは俺が守ってやるからよ」 「千鶴を守るのはオレだっつってんだろ!とにかく走れ!」

2014-05-14 17:51:47
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

騒がしい一行の中の二人が新選組の組長であることは、 町民にももちろん知られていて、 藤堂らが去った後には、彼らの間に笑いが満ちていた。

2014-05-14 18:37:15
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

阿弥陀堂門で待ち構える沖田が、雪村を連れた藤堂の姿を認めると、 刻限を守らなかったことは水に流してやろうと斎藤が呟く。 永倉は藤堂が想像した通りのことを考え、もう一人の相棒を抱き抱えるようにして迎え入れる。

2014-05-14 18:38:59
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

笑顔とともに戻ってきた藤堂は恋の色に染まり、 その背を見ながら原田は思う。 それはきっと桜と同じ色。 (了)

2014-05-14 18:40:00
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