全国学力テスト。公開是非を論じるよりも、まずこの悪問っぷりを知ってくれ。(平成26年4月22日実施/小6メイン)

公開の是非ばかりが論じられ、中身についてはほとんど論じられていない。それが全国学力テスト。 受験者50数万人のセンター試験も大規模だが、全国学力テストの受検者は224万人。桁が違う。 たしかに、その結果によって個人の人生が左右されるわけではないから、その意味ではセンター試験と同じ土俵では語れないかもしれない。 しかし、この悪質なテストの構成をもとにして多くの教師が「授業」を作っていくことになるのである。 続きを読む
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福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

続き) 書き出しの言葉に続けて、百字以上百二十字以内にまとめて書くこと。なお、書き出しの言葉は字数に含む。

2014-05-05 15:49:46
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

これらの条件を注意深く落とさずに書くだけでも小6には大変だ。そこで問われるのは、【科学に関する本や文章を効果的に読み,分かったことや疑問に思ったことを関係付けながらまとめて書くことができる】力ではなく、【出題者の指示を忠実に守り、期待される答えになるよう本文を切り貼りする】力だ。

2014-05-05 15:51:33
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

そして、いよいよ小Bもクライマックス。最悪なのはこれだ。大問3。今日は面倒なので省いているが昨夜つけていた評定でいけば、「D」レベルの悪辣問題だ。まど・みちおの詩「タンポポ」と、「たんぽぽさんが呼んだ」を勝手気ままに読ませて、勝手気ままに書かせる問題。

2014-05-05 15:56:28
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

まず冒頭、「北川さんの学級では、(略)詩1と詩2を比べて読み、考えたことについてグループに分かれて交流することにしました」。いやー、「交流」はないでしょ、「交流」は。……で、本題。

2014-05-05 15:58:48
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

詩の本文は著作権上アップできない(国立教育政策研究所のPDFでも消されている)ので興味のある方はネットでググってほしい。著作権を無視したテキストがたくさん見つかる。

2014-05-05 16:01:30
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

まずわき上がるのは、【グループでの交流の様子】に挙げられている、各種の「解釈」に対する疑問だ。「あーら ひょーら ぷーら しょ」を、ある子は「たんぽぽさん」の声だとし、ある子は「みんな(人間)」の声だとし、ある子は「しょ、だけが人間」だとしている。

2014-05-05 16:04:40
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

まあ詩文はたしかに解釈が多様性を持つことはある。しかし、それをテストに出すのであれば、一様な解釈へと収斂させていく必要がある。ところがこのテストは、それをしていない。いかにも、「先生方、こういうふうに授業すればいいんですよ」と、国立教育政策研究所がアドバイスしているかのうようだ。

2014-05-05 16:11:16
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

国立教育政策研究所は、「二つの詩を比べて読むことを取り上げたのは,今回が初めてである」と誇らしげに書いているが、その良さがほとんど発揮されていない。

2014-05-05 16:17:40
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

問いは4つあるが、1~3は単純すぎる。そして、例によって出題趣旨にそぐわない。「二つの詩を比べて読み,表現の工夫を捉えることができるかどうかをみる」とされている問1は、ただ単に、「ワン」「モーモ」を抽象化させるだけの問いになってしまっている。選択肢は、鳴き声、気持ち、名前。

2014-05-05 16:18:27
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

イヌは「ワンフォフォ」、ウシは「ワンモーモ」と表現しているところは、それぞれの動物たちの[ ア ]を「タンポポ」という言葉の響きに重ねているようだわ。 この[ ア ]を、先の選択肢から選ばせるだけ。これに答えられれば「詩の表現の工夫を捉えられる」という判定になってしまうわけだ。

2014-05-05 16:22:22
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

こういう問いをして「活用力を見るB問題」と言い切る。あり得ない。

2014-05-05 16:22:34
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

問2,3も同様にくだらないがもはや放置。問題は問4だ。

2014-05-05 16:23:43
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

出題趣旨はこうだ。「二つの詩を比べて読み,自分の考えを書くことができるかどうかをみる」。そもそも、「自分の考えを書けるかどうか」を、どうやって採点・評定するというのか。そこからして間違っている。

2014-05-05 16:25:10
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

【あなたは、詩1と詩2をくらべて読んで、どのようなことを考えましたか。次の条件に合わせて書きましょう。 詩の内容や表現の仕方などについて、共通点やちがう点を取り上げて書くこと。 「たんぽぽ」と「まど・みちお」の両方の言葉を使って書くこと。 八十字以上、百字以内にまとめて書くこと。

2014-05-05 16:27:23
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

模範解答を示す。 【2つの詩は、まど・みちおさんの植物や動物を愛する気持ちが伝わってくるという点で共通していると考えました。たんぽぽや動物たちの仲のよい様子を想像することができて、心が温まり、やさしい気持ちになりました】 これが、全国学力テスト(小)の最後を飾る設問の模範解答だ。

2014-05-05 16:32:15
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

やはり、国語科とは国にとっては「道徳科」なのだ。

2014-05-05 16:34:28
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

この問題を作った人はテクスト論も知らないのか。あるいは知っていて無視したのか。話者という言葉を知っているのか。それともあえて無視したのか。ともあれ、「まど・みちお」という言葉を必ず使えという指示がある時点で、そういうところを疑いたくなる。

2014-05-05 16:36:00
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

同じ雰囲気を持つ似通った2つの詩を比べさせるというのなら、共通点ではなく相違点をこそ書かせるべきだ。共通点を書かせても、「曇のち晴」と「曇ときどき晴」を比べてどちらも「曇と晴があります」、と書かせるくらいの、バカバカしい答えにしかならない。現に、模範解答がそうなっている。

2014-05-05 16:38:48
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

ところがこの設問は、共通点と相違点どちらを書いてもよいことになっている。「共通点やちがう点を取り上げて書くこと」だからな。「や」だからな。これは、相違点に限定すべきだった。もし「や」で通すなら、「共通点だけ、相違点だけ、あるいはどちらも」の三つがあり得ることを明示すべきだった。

2014-05-05 16:42:34
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

「や」に気がついて、どっちでもいいのかな、と考える子は、10人中2人くらいだ。いや、全設問の終盤、時間切れギリギリのところだから、1人にも満たないかもしれない。

2014-05-05 16:43:46
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

共通点をとらえる勉強は、差異が大きく意味の離れたものをくらべるときにこそ有益になる。エレベーターとバスの共通点とか。 相違点をとらえる勉強は、差異が小さく意味の近いものをくらべるときにこそ有益になる。幸運と幸福の相違点とか。

2014-05-05 16:48:16
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

エレベーターもバスも、自分の思うようには止まってくれない。目的地までの時間が読めない。混んでいると遅くなり、空いていると早くなる。等々。

2014-05-05 16:50:24
福嶋隆史@ふくしま国語塾 @FukushimaKokugo

幸運は短時間、幸福は長時間。幸福の入口には幸運がある。等々。

2014-05-05 16:51:00
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