《2011年3月18日、FM放送の電話インタビューで語った山下俊一氏の談話に関する解説》
- karitoshi2011
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25 解説:原発事故で放出されている核種の問題を、山下氏が専門としている放射性ヨウ素の問題に収斂させようとしている。他に、α核種やβ核種の放出も問題であるのに、その話は避けて、放射性ヨウ素の話だけにする。理由は簡単。他の核種のことは、山下氏は詳しくわからないからだ。
2014-05-06 13:20:1226 解説:もう一つ問題なのは、安定ヨウ素剤の服用指示は、単純に国が出すのではなく、原子力安全委員会の専門家が出した指針に基づくものであり、山下氏本人がその「専門家」であることを、ここでは隠している。法律上の規定として自分に権限があることを、山下氏は言わなかった。
2014-05-06 13:20:4327山下氏の主張10:安定ヨウ素剤の服用は、役場または避難所で、子どもに対しては水溶液で服用させる。役場や避難所には、水溶液を作る設備が整っている。安定ヨウ素剤は、国内の他の原発周辺の自治体から支援されるので数量は不足しない。
2014-05-06 13:21:1228解説:この日福島県に入っている山下氏は、福島市が大規模な断水になっていることを知っているはずだ。福島県内の他の地域でも断水しており、避難所では水の確保が難しいことを知っている。どこの避難所に何人いるかの情報も錯綜している段階で、安定ヨウ素剤水溶液の配布は困難と知っている筈だ。
2014-05-06 13:22:0829 山下氏の主張:避難した人には、既に外部被曝の問題はない。一応、体等に付着した放射性物質は洗い流すことを推奨する。外に放射性物質が飛散している状況では、マスク着用や、屋内への退避も推奨する。
2014-05-06 13:22:3530 解説:現在、最大の問題がこのポイント。避難者の中には10万cpmを超える汚染が付着していた人が相当の人数存在し、その把握が困難だった時点だ。さらに、2011年3月12日には井戸川克隆氏が1号機爆発の飛散物を遮蔽なしで体や衣服に受けた後で福島県立医大に被曝検査に来ているのだ。
2014-05-06 13:23:4131:井戸川氏は、その検査データを受け取っていないが、福島県立医大はそのデータを所持しているので、当然山下俊一氏も知っているはずだ。「外部被曝の問題はない」というなら、井戸川氏のデータを例にして、国民を安心させることもできるはずだが、山下氏は一切触れていない。現在も、だ。
2014-05-06 13:24:0432:さらに付け加えると、井戸川氏はこの時点で急性被曝症状が現れるレベルの被曝をしている可能性があるので、井戸川氏と一緒に避難した人たちも「問題はない」レベルかどうかは、積極的に検査をすべきはずだが、検査はされていない。検査しないことによって、被曝はなかったことにされているのだ。
2014-05-06 13:24:4633:この放送の前の時点で、井戸川氏は双葉町民の県外避難を実行している。検査データの開示もなく、他の町民への検査も実施されない以上、福島県内では検査を受けることが困難と判断せざるを得なかったのだろう。実際、内部被曝検査は、半減期が短い核種が消えるまでは実施されなかったのだ。
2014-05-06 13:25:1434 山下氏の主張:現在の主な問題は内部被曝。汚染された食物を食べることは問題。なので、20キロ圏内で取れた物は、計測してから流通させることが大事。厚生労働省の基準をチェックすること。汚染された食物は現在流通していない。
2014-05-06 13:25:3735 解説:ここには問題が二つある。1つは「主な問題は内部被曝」と言っていることそのものだ。まだ事故原発の状況は安定しているとは言えず、毎時5μを超える空間線量の地域が福島県内外の生活区域に広大に存在した。しかし、外部被曝は主な問題ではないと断言してしまった。
2014-05-06 13:26:0136:もう1つは、内部被曝の詳細についてだ。山下氏は食物の内部被爆だけを問題にしているが、実際には飲料水の内部被曝、呼吸による内部被曝の問題が存在した。山下氏の専門外だから、割り引いて考えるとしても、あまりにも粗雑な発言だ。
2014-05-06 13:26:2437 山下氏の主張:事前の予防としては、ヨウ素が多く含まれるワカメやコンブのスープを飲んでおくと良い。日本人は、甲状腺の中のヨウ素がいっぱいになっているから、ブロックになる。
2014-05-06 13:26:5538 解説:「日本人は日頃からヨウ素を食品で多く摂取しているから、放射性ヨウ素を体内に蓄積しにくい」という、安全安心の人がその後も多く使う未証明の命題を、この時点で既に持ち出している。スープを飲んでおくのは「安心」に繫がるが、放射性ヨウ素を体内に摂取しない方法は、口にしない。
2014-05-06 13:27:2240 解説:これまた、安心させるための話に過ぎない。この後明らかになる放射性ヨウ素やセシウムに汚染された食品の流通を警戒させることよりも、国民を安心させることに偏った表現になっている。農水産物の汚染がどれだけ広範囲に及ぶのか未確認の時点では、無責任すぎる。
2014-05-06 13:28:2341 終りに。山下俊一氏は、この時点で既に「被曝医療全般の専門家」としてマスコミに登場している。しかし、山下氏に理解できるのは、彼が専門とする甲状腺に関する放射性ヨウ素の話だけであり、β核種の拡散や被曝防護の話はできない。
2014-05-06 13:28:5442 山下俊一氏に「被曝医療全般の専門家」としての格付けを与えているのは、山下氏の業績、では勿論ない。山下氏をそのように誤解させる地位に付けた長崎大学内部の問題や、「被曝医療」関係の医学関係者だ。言い換えると、日本の「被曝医療」自体が「原子力ムラ」の一部になっている事の問題だ。
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