古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #22
- dairokusentai
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「全艦今のうちに雷巡と軽巡を狙え!衣笠はあれを用意しろ!」 加古の声で青葉、吹雪、叢雲が敵の雷巡と軽巡を狙って主砲を放つ。私も慌てて準備に入る。今や敵は全艦が異常に接近してきた古鷹ねーさんを狙っている。そのおかげでこちらには敵弾が飛んでこないけれど。手が震える。ああ、早く、早く!
2014-05-07 00:24:22敵艦にある程度の距離まで近づいた古鷹ねーさんが左に転舵し、敵艦隊との距離を保って同航戦の形になる。あそこが古鷹ねーさんに敵弾を回避できるギリギリの距離ということか。それでもぞっとするほど敵艦隊と近い。 「当たって!」 吹雪の10㎝連装高角砲の放った砲弾が敵の雷巡に命中する。
2014-05-07 00:29:55見ればこちらの砲撃で既に敵の雷巡の一隻は沈み、軽巡が中破、もう一隻の雷巡も小破している。私たちが戦域から離脱する際に最も大きな障害になるのがこれらの足の速い艦だ。それらの艦にダメージを与えておけばそれだけ離脱が容易になる。あとは敵の艦載機に注意すれば―― ドガン!
2014-05-07 00:36:24「やっちゃった……。まだ、沈まないよッ!」 リ級の主砲が古鷹ねーさんの右肩に命中した。砲塔が吹き飛び、火の手が上がるけれど古鷹ねーさんの眼光は陰りも見せない。けれど私は戦慄していた。あの距離はギリギリなんかじゃなかった。完全にレッドゾーンなのに古鷹ねーさんはそこに踏み込んでいる!
2014-05-07 00:45:17その時、私は青葉が何かをしようとしているのに気が付いた。信号灯に震える手を添え、何かを発信しようとしている。砲戦の音は絶え間なく天地に轟いているけれど、声を張り上げれば味方には十分届く。こんな状況で誰かに信号を送る必要なんてない。青葉が一文字目を発した。 「ワ――」 「青葉ッ!」
2014-05-07 00:50:17私の叫び声に、青葉がはっとなって立ちすくむ。おそらくこの場の全員が、青葉が何をしようとしたか察しただろう。 ワレアオバ。 古鷹ねーさんに代わって自分が的になるつもりだったか。それとも混乱して敵艦を味方だと思おうとしたか。青葉は、サボ島沖夜戦の時のあの信号を発しようとしていたのだ。
2014-05-07 00:55:31自分のやりそうになったことを自覚して、青葉が今にも崩れ落ちそうになる。私は青葉に走り寄ってその肩を支える。加古が敵艦に砲弾を叩きこむ。 「青葉……青葉は……」 青葉が譫言のように繰り返す。 「大丈夫!青葉、大丈夫だから!」 その時、再び敵の艦載機の大群が上空に見えた。
2014-05-07 01:00:39ヲ級に着艦して爆弾や魚雷を補給した艦載機が、再び発艦したのだ。そして、その目標は――今なお艤装から煙を噴き上げながら戦う古鷹ねーさんだった。
2014-05-07 01:02:11