地獄鎮守府の日常 #－19842014

白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「終わったの……かしら」 妹が、私に近づき不安を伝える。 「わからないわ、でも」 その先を言おうとした時だった。 ブロロロロロロロ ブロロロロロロロ 上からプロペラが鳴る、音がした。 見上げると、何十機もの輸送機が飛んでいた。 #地獄鎮守府の日常

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その輸送機から、夕暮れの空を背景に人型の『何か』が身投げ自殺するように落ちてくる。 何人も、何人も、何人も。 そして『何か』は私の目前にも落下し、水柱を発し、そして浮上する。 浮上した『何か』の姿を見て、私はぞっとした。 #地獄鎮守府の日常

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　 　 それは、私と同じ顔をした、艦娘だったのだから。 #地獄鎮守府の日常

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私と同じ顔、同じ艤装の艦娘。 『それ』が何かはすぐに私は認識する。 第二世代の艦娘。 ヒトではなく、『モノ』である艦娘。 『それ』は私を認識すると、そのアーム式の連装砲を私に向ける。 覚悟していた、認識していた私は彼女より先に、連装砲の火を放つ。 #地獄鎮守府の日常

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私と同じ顔の『それ』は一瞬にして頭部を破砕され、海に没して行く。 「どういう、事なの……！？」 伊勢が狼狽する。私達より離れた位置に降下した、『それ』から既に砲撃の嵐は飛んできている。 「用済みだから、強引に消すって事よ」 私は彼女に返した。 #地獄鎮守府の日常

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「それって」 祥鳳が何かを言おうとする間に、彼女は飛んできた流れ弾で胸を貫かれ、衣類型の予備バッテリーが粒子として消費され破け散るも、それも虚しく一撃で裸体を晒しながら、胸に穴を空けられる。 「……ああもう、ここから突破して離脱するわよ！」 私は叫んだ。 #地獄鎮守府の日常

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とめどなく振ってくる『それ』から逃げる為に、指揮権は気づけば伊勢から私に代わっていった。 髪留め等を私は外す、それは同じ顔の艦娘と遭遇した場合、識別をする為の行為だ。 敵に囲まれた状態で突破する、水上を疾走しながら、敵の駆逐艦娘の胴体に風穴を開ける。 #地獄鎮守府の日常

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その駆逐艦は暁型の響で、弾丸が直撃してもフィールドで多少減速するだけで、私達第一世代のように衣類型のバッテリーが損耗すると言う事はなく、胸に直撃し、内部の機械が露出する。 グロテスクな、ヒトでない証を示しながら、『それ』は平然と、砲撃雷撃による反撃を行う。 #地獄鎮守府の日常

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同じく妹が魚雷を当てた、陽炎型三番艦に至っては下半身が吹き飛びながらも戦闘を継続させる始末だ。 「ゾンビがっ！」 私は叫んだ、私達を基に造られた、苦痛も何も感じない怪物たちを相手にしながら嘆くように叫んだ。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

叫びながら、アーム式の砲撃ユニットで砲撃を続ける。 艤装を背負う体に、重みと苦痛、湿り気の気持ち悪さが襲ってくる。 だが、彼女らはこんな感覚すら無縁なのだろう。 ゾンビなのだろう。 或いは、ポスト・ヒューマンなのかもしれない。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

ポスト・ヒューマン、新人類を意味する言葉。 さしずめ私はその新人類のサンプルの一つになって、用済みになった女なのだろう。 だけど、私は諦めなかった、妹も諦めなかった。 「私は人間よ！……『モノ』になんてなってたまるか！アンタみたいな『モノ』なんかに！」 #地獄鎮守府の日常

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逃げてやる、妹と、伊勢と三人で逃げて、どこか争いの無い地で人生を謳歌してやる。 こんな『モノ』として酷使され、ロートル品になったら廃棄処分される現実なんて認めてたまるか！ #地獄鎮守府の日常

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魚雷が私に向かって何十発も飛んでくる、回避するために動くも、アクティブソナーが感知し軌道修正する。 それに対し私機雷を放ち、魚雷を迎撃し、そのまま魚雷を放った暁と睦月に接近、両肩の連装砲で２体の頭部を吹き飛ばした。 #地獄鎮守府の日常

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私が振り向くと伊勢は扶桑と山城の襲撃を受け、衣類も艤装もぼろぼろになりながら近接戦闘を繰り広げていた。 逃げろ。 そう伊勢が送ったアイサインを受け取る。 「不知火、いいえ、■■■、離脱するわよ……！」 もう『モノ』の名前なんて名乗りたくなかった。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

強引に突破すると、その先には陣取った金剛型二番艦比叡が居た。 「……やれますか？」 妹が、私に不安げに聞く。 「何時も通り、近づいて雷撃を放てばいいだけよ」 「そうね、でももう弾切れしそう……」 不安げな、妹の声、確かにもう、弾薬は尽きかけている。 #地獄鎮守府の日常

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「大丈夫、これを突破すれば後は追撃なんて来ない筈よ」 「そうね……きっとそうよ」 そう、妹に言い聞かせ、戦闘に突入する。 戦艦から主砲副砲の弾丸の嵐、それを回避しようと斜めに移動する。 だが、副砲の弾丸が足に直撃した。 体勢を崩し、視界が空を見上げる。 #地獄鎮守府の日常

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斥力フィールドの予備バッテリー機能を果たした衣類が破け、大破状態になる。だが、脛に砲弾は当たり、血は流れ出ていた。 苦痛が、体を支配する。 「あぁぁぁぁぁぁぁ！」 私は一心不乱に、苦痛を抑えるように叫び、砲を、魚雷を比叡に向け放っていた。 #地獄鎮守府の日常

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そうしていると私の砲撃に比叡は注意を向き、その隙に接近した妹の、魚雷と砲撃の乱射が彼女の肉体をバラバラにした。 妹が、私に近づいてくる。 逃げてと言おうとしたけど、声が枯れて、出なかった。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

妹は私に近づき、手を差し伸べる。 その瞬間、上空を飛んでいた小型ＵＡＶが目に入る。 機関砲で迎撃しようとするが、弾は出ず、ＵＡＶは小型爆弾を落としてく。 服が剥げ、妹の艤装が爆ぜた。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

彼女が、私に抱き着くかのように密着し、その衝撃で私の躰も無茶苦茶になり、互いに沈んでいく。 深い。 深い海の底に。 でも、私は悔しく何て無かった。 悲しく何てなかった。 むしろ、嬉しかった。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

だってそこにいけば、私も、妹ももう、『モノ』じゃなくて『ヒト』でいられるのだから。 一緒に、深い海の底で、仲良く暮らし手られるのだから。 誰にも邪魔はされず。 誰にも。 誰にも。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

以上即興姉妹百合編と言う名の黎明期編終了。 戦闘描写は個人的に砲雷激戦縛りにしましたが、どうだったでしょうか。 見てくれた人、楽しんでくれた人がいたのなら嬉しいです。 #地獄鎮守府の日常