転成合神ゲンキダーＪ〜序章〜

ゲンキダーＪ @Genkider_J

今日は日差しも気持ちいい日曜日。高尾山登山イベントだ。開催まで準備は大変だったけど、沢山の人が楽しみに集まってくれた。皆の熱気に、これまでの疲れも吹っ飛ぶ。「パパ！」足元ではあどけない笑顔でこちらを見上げながら、イベントの開催を待つ我が子もいる！さあ、開催宣言だ。

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開催宣言…しかし突如として現れるウザルス帝国。会場を荒らし周り、人々の悲鳴が山にこだまする。何てことだ！イベントを、楽しみに来た皆を守りたい。そして何より、不安そうにしがみつく我が子を守らねば！力が…強い力が欲しい！！

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その時木々の間から、異常を知らせる無数の烏の鳴き声。思わず見上げ、日の光に目を細める。「大変だ。ウザルス帝国の奴らが暴れている！よし、決めた。そこの君だ！力を求めるなら一緒に叫べ！」太陽の光に烏天狗のゲンキダーＪの影。「「転成合神！」」二つの声がユニゾンする。

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烏天狗と融合し、緑のテクターを身にまとう。そして敢然とウザルス帝国の前に立ちはだかる。「現れたな、ゲンキダーＪ！」「悪党め！何故こんなことをする！？」「うるさい！邪魔をするなら容赦はしねぇぞ」襲いかかってくるウザルス帝国の戦闘員。

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タコ杉の陰に身を潜めた我が子をチラッと見て、ひとまずの安全を確認し、視線を戻してゆっくりと構える。「よーし、来い！」これが天狗の力？漲るパワーに自分自身、舌を巻いた。これなら、負ける気がしない！！

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「おのれ、覚えていろ！」捨て台詞を残し、次元の狭間に撤退する。静かになった山に、再び鳥の鳴き声が響く。「ふう…」ため息を一つつき、自分の拳を見つめる。嘘みたいだ、あんなパンチが打てただなんて。そして我が子を見やると、こちらを見つめている。無事でいてくれたことに、安堵した。

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それがいけなかった。我が子がこちらを指差す。違う。そのさらに後ろだ。「殺人超音波！」この世のものとは思えない、地獄の底から響き渡る怪鳥の悲鳴にも似た音が脳裏に突き刺さる！！「な、なんだこれは？！」思わず膝を付く。しかし叶わなかった。先程の戦闘員が無理矢理引き起こしたのだ。

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「かかったな、ゲンキダーＪ。さすがのお前も、地獄鳥の声には叶わないようだな」戦闘員を束ねる将軍を思わせる男が、その顔を近づける。そして強烈な蹴りを見舞う。一度は撃退させるも、ウザルスの巧妙な罠にハマり大ピンチ。呻きながらも心配する先は……。

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幸いにもタコ杉の加護により、隠れていた我が子は無事だった。もとより、殺人超音波自体、ゲンキダーＪの苦手な周波数に合わせていて、一般人には効かないのかもしれない。しかし、魔の手が伸びては、シャレにならない。とっ捕まったら一巻の終わりだ。

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「逃がしてやってくれ」タコ杉にすがるように念を送る。動けない杉の木になす術は無い。ないはずだった。

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僕は指差すのが精一杯だった。突然現れて皆を助けてくれた緑のヒーローの後ろに、さっきの魔の手が迫っていたのを、僕は見ていた。見ていたのに、声が出なかった。怖かったからだ。捕まり引き起こされ、やられるがままのヒーローを見ていることしかできなかった。

ゲンキダーＪ @Genkider_J

「逃げちゃう？ねえ、また逃げちゃうの？」どこからか声がした。「あの時みたいに、逃げちゃうの？」あの時…。

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お使いのの帰り、猫のか細い声がした。そして野次るような声もした。ふと横の空き地を見ると、自分と同じくらいの子数人が、繋がれた猫に酷いことをしていた。どうしようかと思ったけど、僕はその場を立ち去った。だって…

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だって……浦島太郎は亀を助けた。でも結局おじいさんになった。だから、僕は、助けない。おじいさんになるくらいなら。「本当に？」さっきの声がする。「本当は？」本当、は…。

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すごい音がして、現実に引き戻された。象みたいに馬鹿でかい怪人が、自分のどでかい頭を外してブンブン振り回して、何度も何度も殴りつけているんだ。このままじゃ、やられちゃう！パパが、危ない！！

ゲンキダーＪ @Genkider_J

え？パパ？なんで、パパなの？なんで、そこにパパがいるの？僕にはわかった。そこにいる緑のヒーローは、紛れもなく僕のパパだ。そして、大ピンチなんだ！！

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「逃げちゃうの？」また声がする。「あの時みたいに」……逃げない、今度は逃げない！あの時は怖かった。だから、浦島太郎のせいにして逃げた。今だって、怖い。でも！僕は、もう、逃げない！！

ゲンキダーＪ @Genkider_J

「よーし、オッケー！」僕の前に小さな天狗が降りてきた。「じゃあ、いくよ？せーの…」驚く僕をお構いなしに、合図をする。「「転成合神！！」」