雁首鬼との遭遇

※暴力表現有り
0
シャオイー(小伊) @applex002

ここを通った方がずっと主人の家の近道になる。…いやいや、最近は物騒だと自分で言ったばかりじゃないか。そう思い直すも…、『あまり待たせると何をしでかすかわかりませんからね』 ふうと肩を竦め、一度は止めた足を裏路地の方へと差し向けた。

2014-06-07 20:16:54
シャオイー(小伊) @applex002

裏路地に入ったのはやっぱり失敗だったのかも知れない。滅多なことは起きないだろうと高を括た結果がこれだ。濃密なの果実のような、一面に咲き誇る薔薇のような…馨しく、嫌悪感を伴いながらも、甘く、甘く、甘い…

2014-06-07 20:30:50
シャオイー(小伊) @applex002

(そうだ、これは血のにおいだ)

2014-06-07 20:31:03
シャオイー(小伊) @applex002

@hakobiyasan_bot 角を曲がった瞬間だった。目に写ったものが何なのかを頭で認識するよりもはやく本能に従って足を止めた。 (やばい、やばい、なんかやばい) 壁、床、辺り一面血に塗れた一角に立っている男。その後ろ姿に鉢合わせた少年はその場から一歩も動けなくなった。

2014-06-07 20:37:59
シャオイー(小伊) @applex002

「……遅いわね。あいつ、使い走らせた当て付けにわざと道草食ってるんじゃないでしょうね?」すっかり冷めてしまった鍋に蓋をして時計を見やる。針は刻一刻と同じペースで時を刻み続けていた。

2014-06-07 21:25:46
運び屋 @hakobiyasan_bot

@applex002 こちらにもお客様がいらっしゃいましたか…… (振り向くことすらせず、ぽいとナイフを放る。それは風を切って石畳をひび割らせ、少年の足先に突き刺さった。固まった少年の影を確認し、そのまま会釈をする。手に掴んでいるのは、首から下の無い恐怖に固まった警官の頭だ。)

2014-06-07 20:43:32
シャオイー(小伊) @applex002

@hakobiyasan_bot 異様な光景に、少年は完全に怖気付いていた。『首、…首、雁首、鬼…?』逃げなきゃ、逃げなきゃ。ガスッ、という硬い地面の削れる音が少年の気を引き戻した。『っ…!』それを合図に弾かれたように来た道を引き返し駆け出した

2014-06-07 20:51:26
運び屋 @hakobiyasan_bot

@applex002 何故逃げるのです…?死を受け入れてこそ人は美しくなるというのに…(白く鈍い光が反射する。いつの間にかローブの男は少年の目の前で不思議そうに折れそうな首を傾げ、じっと少年の瞳を見つめていた。手には今だ頭を掴んだまま、少年の顎を持ち上げて尋ねる。)

2014-06-07 20:59:19
シャオイー(小伊) @applex002

@hakobiyasan_bot 『…っ、!?』何が起こったのかわからないという様子で突然視界に現れた相手に大きく目を見開いた。『主人を…待たせてますんでっ、!』覚悟を決めた少年は素早く身を低くすると相手の鳩尾に目掛けて拳を叩き込んだ。大凡少年の、いや人間の動きではない速度で。

2014-06-07 21:06:28
運び屋 @hakobiyasan_bot

@applex002 ……妖の類であろうが、その性別では諦めるしかないですよ。覚悟を決めたら如何です?(骨の折れる音がして、少年の拳が腹部にめり込む。が、男は微動だにせず口端の鉛色を拭うと少年の髪を優しく撫でた。表情を無くしたその顔が、綻んで行く。優しかった手が少年の頭を捉えた)

2014-06-07 21:14:24
シャオイー(小伊) @applex002

@hakobiyasan_bot 『っ、…ぁ…!!』頭を掴まれた痛みに呻くも、相手の腕を必死に掴む。ガシャリと持っていた買い物袋が床に落ちて中身の割れる音がした。(さっきの一撃、手応えはあった。骨を折るくらいなら…できる!)腕を掴む両手に持てる限りの力を込めて抗う。

2014-06-07 21:20:56
運び屋 @hakobiyasan_bot

@applex002 ……そう、そうやって必死に抗って、他人を痛めつけ、殺すのです。自分の感情もろとも、消し去ってしまえば良いのですよ。 (呪文のように、少年の耳元で吐息交じりに囁く。反応も待たずに塀に向かい少年を叩きつけると、瞬きをする暇すら与えず、頭を鷲掴んで持ち上げた。)

2014-06-07 21:29:48
シャオイー(小伊) @applex002

@hakobiyasan_bot 『なに、言ってるのか…、わかりませんけど!』叩きつけられた衝撃で痛む体に鞭をうって強がりを吐いた。本当に訳がわからない。なんで、なんでこんな…。無理矢理起こされた上半身。今度は迷うことなく自分を掴む腕をへし折って拘束から逃れると、また走り出した

2014-06-07 21:37:51
シャオイー(小伊) @applex002

血のにおいが酷い。そうすることを最初から知っていたように体が軽い。もっと、もっと。何かを求める声がドクリドクリと鳴り止まない。 何か、なにが… 闇雲に走っているようで向かう場所はわかっていた。もっと力が要る。生きて帰るために、力が要る。

2014-06-07 21:41:14
運び屋 @hakobiyasan_bot

@applex002 ああ、いけませんねェ…真後ろに刃物を持ったこわぁい鬼が潜んでいるというのに、背を向けては………それとも、こうして突き刺して欲しかったのですか?(焦ることもせずにやれやれと溜息を吐き、傷口の一つから抜いたナイフを少年の背に向け放った。風を切る音が響く。)

2014-06-07 21:46:12
シャオイー(小伊) @applex002

@hakobiyasan_bot 辺りは暗闇だというのにやけに視界が鮮明だった。風の音一つでさえ場の状況を知るのに充分だった。少年は振り返ることもなく、タイミングを合わせて前に転がることでナイフをよけるとそのまま綺麗に立ち上がって暗闇を走る。一つ、先程の死体の転がる場所を目指して

2014-06-07 21:58:11
運び屋 @hakobiyasan_bot

@applex002 …外しましたか。 (特に何も感じなかったのか、走って行く少年を視界に入れつつ地面に突き刺さったナイフを引き抜く。面倒だ、と顔を顰めながらも塀に飛び乗ると、少年の目的地に合わせ走り出した。音も無く白ローブが空を裂いていく。)

2014-06-07 22:02:28
シャオイー(小伊) @applex002

外が騒がしい。先ほどから何人も警官が街を行き来している。また殺人鬼が現れたのかも知れない。物騒な連中の中には男ばかりを狙って襲うものもいるという。あれはそう簡単に死ぬような生き物ではないのだけど。…嫌な胸騒ぎがする。

2014-06-07 21:47:26
シャオイー(小伊) @applex002

「こんな時間だもの、日傘は必要ないわね」 パタリと扉を閉め、鍵を確認すると、夜から分離するような色彩の少女が一人、生温い風の中を走り出した

2014-06-07 21:50:29
シャオイー(小伊) @applex002

@hakobiyasan_bot 漸くたどり着いた一角。中ば飛びつくように目当てのものに駆け寄ると、妨げるものがなにもない死体の首筋に鋭い犬歯を突き刺した。口の中にぶわりと広がる鉄の味に顔を顰めながらも、嚥下する。まずい、不味い。気持ち悪くて、恐ろしくて、…甘くて、吐き気がする。

2014-06-07 22:09:32
シャオイー(小伊) @applex002

まるで獣みたいだ。初めて"吸血"という行為を行ったのにも関わらずまるで最初からそうすることを知っていたような、本能が囁く声がする。もっと、もっと、と脈打つように、強く、強く、強く強く強く強く…、

2014-06-07 22:16:22
運び屋 @hakobiyasan_bot

@applex002 駄目ですよォ、折角綺麗に飾ったというのに… (少年の首根っこを掴むと、それを空に放り投げ蹴飛ばした。死体の首から零れる液体を拭ってから、幼児の身長ほどはあろう工具を拾い上げる。月に鈍く光るバールの先端でとんとんと手を叩きつつ、苛立った様子で歩を進めた)

2014-06-07 22:20:26
シャオイー(小伊) @applex002

@hakobiyasan_bot 『うわっ、!?』後ろに強く引かれる力に抗うこともできずに少年の細い体が宙を舞う。それでも、地面に打ち付けられるようなことはなかった。宙で身を翻し見事に着地した少年の瞳は赤く、紅く、仄暗く闇に浮かび上がる魔物のそれに他ならなかった。

2014-06-07 22:25:18
シャオイー(小伊) @applex002

裏通りに入るとビリビリと嫌な空気が漂っているのに気がついた。なにが、と具体的には表せないのだけど。例えるならさっきからずっと感じている嫌な予感がむわっと強く膨れ上がるような、そんな不確かだけど、確信めいた嫌な予感。 「…ノラ猫一匹居やしないわ」

2014-06-07 22:55:21
シャオイー(小伊) @applex002

「…すれ違いになったのかしら?」世話の焼ける執事を探しに出て随分と経った気がするが一向に出会うことはない。もしかしたらもう家に戻っているのかしら。裏路地を通ったとも限らないし、それにこの辺りは入り組んでいて一本道というわけではない。引き返そうか、そう思案したときだった。

2014-06-07 23:28:33