連続体の定義可能な整列順序づけと連続体仮説の関係について

「もしも連続体に定義可能な整列順序づけが存在するなら連続体の濃度はアレフ1なのだろう」という漠然とした感じを、古い知識にもとづいて @tenpyon がツイートしたら、必ずしもそうともいえないことを @DaiskeIkegami が最新の知見にもとづいて教えてくれました。
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ゼルプス心太か? @tenapyon

志賀浩二先生がルベーグ積分について書いたある本で「連続体仮説」が一貫して「連続体仮設」と表記されている。意図的なのかミスなのか判断に苦しんだり。

2014-06-12 17:06:55
ゼルプス心太か? @tenapyon

前にも言ったことがあるけど、正直な話、連続体が整列順序づけされることに何か内在的な理由があり、かつその濃度がアレフ2以上、という状況を、俺はイメージできない。

2014-06-12 17:12:06
ゼルプス心太か? @tenapyon

これはムードだけの話じゃあなくて、たとえば Pi^1_1-AD と連続体濃度の Delta^1_3整列順序づけとは (L[μ]などで成立し) 整合するが、そのさいはどうしてもCHが成立せにゃならんことがわかっている。いっぽう、

2014-06-12 17:14:06
ゼルプス心太か? @tenapyon

ZFCだけなら、連続体がDelta^1_3整列順序づけされ、しかもその濃度がいくらでも大きいことが整合する(ハリントンのLong Projective Wellorderings)

2014-06-12 17:15:25
ゼルプス心太か? @tenapyon

ハリントンは同じ論文で可測基数の存在と連続体のDelta^1_4整列順序の存在と連続体が「大きい」ことの整合性をも示している。さっき言ったように、この場合はDelta^1_3整列順序は作れない。

2014-06-12 17:16:47
ゼルプス心太か? @tenapyon

このあたり、もっと大きい基数たとえば AD^{L(R)} やなんかとの関連はどうなのだろうな。 (と、雨乞いの踊りを踊っておく。)

2014-06-12 17:18:30
ゼルプス心太か? @tenapyon

再帰理論から出発した俺には、連続体を理解するというのが「ひとつひとつの実数がどのように生まれてきたのかを整理して理解する」ことであるべきと、思えてならない。これは実数の定義(不)可能性の階層をどこまでも考えていくことを[俺にとっては]意味する。

2014-06-12 17:20:48
ゼルプス心太か? @tenapyon

いまの稲妻すごかったなあ。

2014-06-12 17:20:57
ゼルプス心太か? @tenapyon

電光と雷鳴、そして大粒の雨!! 豪快だなあ。(PC大丈夫かなあ。)

2014-06-12 17:25:07
ゼルプス心太か? @tenapyon

はっ、いまの突然の大雨はひょっとしてこれのせい? twitter.com/tenapyon/statu…

2014-06-12 17:26:32
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon 「内在的」の意味にもよると思いますが,強い強制法公理(例えばPFA)を仮定すると,H_{ω2}でΔ_2定義可能な連続体上の整列順序で長さがω2なものが存在します。ただし,この定義にはω1の部分集合を一つパラメータに使っていて,その点が内在的ではないです。

2014-06-14 02:18:04
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon 一方で,このような整列順序でlightfaceで定義可能なものが強い強制法公理と共存しうるか,という問いが考えられますが,PFAやMMについては答えはYesです。MM^++とそのような整列順序の存在が共存するかはわかっていなくて,予想はNoです。

2014-06-14 02:21:51
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon また,ご存知かもしれませんが,整列順序の代わりに擬整列順序を考えると,連続体仮説の否定のエフェクティブなwitnessはいろいろ考察されていて,例えば,MMの仮定の下では,δ^1_2はω2と等しくなり,特に連続体仮説は成り立っていません。

2014-06-14 02:26:30
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon これについては,聞いたことも考えたこともないです。どうなんでしょうね。この問題も,整列順序を擬整列順序に置き換えると面白い話があります。ZFCのモデルで,AD^{L(R)}が成り立ちL(R)の中のΘがω3より大きくなるものがあるかどうかは有名な未解決問題です。

2014-06-14 02:33:22
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon この未解決問題に関連して,ZFCのモデルで,AD^{L(R)}が成り立ちL(R)の中のΘがω3と等しくなるものが存在することはわかってます。一方で,PDが成り立っているとき,任意のprojectiveな擬整列順序の長さがω_ω未満になることが知られています。

2014-06-14 02:36:45
ゼルプス心太か? @tenapyon

@DaiskeIkegami 池上さん、ありがとうございました。あのとき「雨乞いの踊り」と書いたのは、池上さんやUSBさんやトリイロさんが俺の一連のツイートを見て何か適切なコメントを投下してくれると期待してのことだったのですが、その直後にリアルに大雨が降ったので、大変焦りました。

2014-06-14 08:17:45
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon その立場で,Vに強い巨大基数の存在を仮定してCHについて考えるとすると,実数の定義可能性の多くはあるカノニカルな内部モデルの中で捉えられ,そのモデルではCHが成り立っているので,そのような定義可能性のレベルでCHの否定のウィットネスを探すのは難しいと思います。

2014-06-16 02:15:42
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon そのため,現存のカノニカルな内部モデルで捉えられない定義可能性について考察する必要があると思いますが,その典型例としてはΣ^2_1(uB)が考えられます。Σ^2_1(uB)論理式は,Σ^2_1の形で,三階の量化子の動く範囲を普遍ベール集合に制限したものです。

2014-06-16 02:21:24
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon 以前(bit.ly/1qhJ0nG)ツイートしましたが,Σ^2_1(uB)は,現在の内部モデル理論で到達しうる限界になっています。現存のカノニカルな内部モデルでウディン基数を非有界に持つものの自然な整列順序は全てΣ^2_1(uB)になってます。

2014-06-16 02:26:12
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon また,現存するマウスに属する任意の実数は,Vで,可算順序数をパラメータにしてΔ^2_1(uB)で定義できることがわかっています。逆に,そのような実数が必ずあるマウスに属するか,という問題があり,これが成り立つ,という内部モデル理論の大きな予想があります。

2014-06-16 02:37:27
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon Σ^2_1(uB)について「知っていて」,可算順序数をパラメータにしてΔ^2_1(uB)で定義できる実数全てを含むある程度「自然な」モデルがあるか,という問いが考えられますが,答えはYesで,僕が知る限り,そういうモデルは二つあります。

2014-06-16 02:40:05
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon そのどちらのモデルでもCHが成り立ち,どちらのモデル内の実数全体も,可算順序数をパラメータにしてΔ^2_1(uB)で定義できる実数全体と一致し,どちらのモデルもVでΣ^2_1(uB)な整列順序を持ちます。

2014-06-16 02:42:31
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon というわけで,殿下の立場で,Vに強い巨大基数を仮定してCHについて考える(つまりCHの否定のエフェクティブなウィットネスを探す)とすると,Σ^2_1(uB)より複雑なもの,あるいは普遍ベール集合を超えたなにかを見ようとするのが自然な気がします。

2014-06-16 02:45:14
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon ウディンのUltimate L公理は,VのΣ3な命題は全てΣ^2_1(uB)に還元できることを示唆しており,この公理の下ではCHが成り立ちます。非常に大雑把に言って,この公理がどんな巨大基数とも共存する,というのがUltimate L予想の哲学(の一部)です。

2014-06-16 02:57:33
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tenapyon これらの話に関連して,面白い未解決問題があります。強い巨大基数(例えば超コンパクト基数)の存在下で,任意のΣ^2_1(uB)集合が普遍ベール集合になるか,というものです。

2014-06-16 03:00:39