不知火に落ち度はない その3

@yamoto 氏の #不知火に落ち度はない をまとめました。 以下本家より抜粋 【不知火に落ち度はない】 続きを読む
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yamoto @yamoto

だが、流石に今のは不味い。 部屋の中でこれだけ大暴れしたのも当然不味いが、窓ガラスを叩き割ったのは物凄い不味い。 ガラスが散っちゃうし、音聞こえちゃうじゃん? ここに誰か来るじゃん? 司令室滅茶苦茶じゃん? 下手すると不知火更迭じゃん? #不知火に落ち度はない

2014-07-07 16:28:54
yamoto @yamoto

なんだこのスタートから詰んでますゲーム。 俺が一体何をした。 とりあえず司令室のドアに鍵をかける。 万一メスゴリラが来たらこんなドア数秒も持たんが、他の面子ならまだなんとかなる。 さて、あとは説得開始なんだが……あの獣っぽい不知火に話しできんのか? #不知火に落ち度はない

2014-07-07 16:30:44
yamoto @yamoto

「よ、不知火。元気だなー。何か良いこと──」 「司令ですか……おかえりなさい」 笑顔で手を振る俺に、まるで地獄の底から響くような声で返す不知火。 辛うじてまだ、会話はできそうなのが幸いだった。 「おうただいま。何してんだ?」 「ストライキです」 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 16:46:37
yamoto @yamoto

ストライキ──っていうか暴動だろこれ。 思いっきり大暴れして司令室滅茶苦茶だろ。 「あー。ストライキはわかったが、何を要求してるんだ」 「司令で考えてください」 酒瓶を足でこん、と蹴り上げて手でキャッチ。 器用だなお前。 だがお行儀は良くないぞ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 16:52:46
yamoto @yamoto

「てそれ、ボウモア25年──」 「うるさい」 ひゅん、と音がしてそれが俺目がけて投げつけられた!? うっわうわ、ちょっと待て! 避け──られるけど避けたらもう飲めん!! 俺はうまく速度を見極め──空中で酒瓶をキャッチ。 ふう。未開封な25年は無事だ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 17:01:35
yamoto @yamoto

ただし、俺の幸運はそこまで。 その後のことを考えてなかった。 不知火は次々と足下の酒瓶を持ち上げては、連続で投げてきていたのである。 見事なスローイング、見事な連射速度。 次々秘蔵の隠し酒瓶が飛んできて壁にぶつかって割れていく。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 17:06:52
yamoto @yamoto

「うわ、お、おい。もうやめろって、な?」 「うるさいです司令。貴方が全部悪いんです」 かしゃん、ぱりーん かしゃん、ぱりーん。 今度は窓に向かって投げ出した。 何この子の大暴れっぷり。 俺の部下になっていままで見た事がないよ? #不知火に落ち度はない

2014-07-07 17:09:04
yamoto @yamoto

む。むむ。何が悪いかさっぱりだが──あ、いや一応浜風の件はあったけど。 だからといって、ここまでになるわきゃーないわな。とりあえずやめさせよう。 「こら、不知火。命令だ──」 「聞きません。ストライキ中ですから」 ですよねー。 酒瓶が飛んでいく。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 17:11:51
yamoto @yamoto

あーもー、しょうがねーなー。 流石にもうこれ以上酒を投げ捨てられるわけにはいかん。 足下にある酒瓶は、偉いさんから預かってるのだけになってるし。 感情的になってもその辺の判断ができるのは、不知火らしい。 ほんっと嫌になるぐらい良くできた奴である。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 17:25:10
yamoto @yamoto

「不知火──」 「うるさい」 すまん、不知火。 今からずるいことするからな。 投げるモーションに入った不知火。 俺は息を吸い込んで叫ぶ 「──気をつけい!!!!!!!!」 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 17:28:55
yamoto @yamoto

まるで魔法だ。 不知火が雷にでも撃たれたかのように酒瓶を手放し、命令通りの直立不動の体制になる。 優秀な奴ほどこの『洗脳』じみた『訓練』は、条件反射のレベルで身体に刻み込まれている。 個人の意志とは無関係に、そ行動を取ってしまうのだ。 条件反射のレベルで刻み込まれているだ。

2014-07-07 17:34:17
yamoto @yamoto

その隙に俺は、不知火に飛びかかり押さえ込もうとしたのだが。 俺の動きを察して、即呪縛を解除した不知火が、遠慮なくこっちに拳を振るってくる。 長門とは違うタイプの攻撃パターン。 指を握りこんで、中指だけを立て急所をピンポイントで狙う拳である。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 17:36:53
yamoto @yamoto

「ったく──危ねえ、な!」 拳を腕で受け流し、背負い投げ。 「っ!?」 細く軽い不知火の身体が円弧を描き、真っ直ぐ床に叩きつけられる。 かは、と口から肺の空気が吐き出された。 破片のない所狙って、頭を打たないように上手く投げられて良かったわ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 17:41:04
yamoto @yamoto

長門ならここで10発ほどストンピングを頭に入れておかないと危ないが、不知火の場合そうじゃない。 そのまま身体に覆い被さるように、腕と足を押さえ込んだ。 「司令……っ! はなし…て、くださ……!!」 「ダメだっつの。ここまで暴れた理由を聞かせろ」 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 17:43:31
yamoto @yamoto

不知火が藻掻いて居るが、体格差は決して埋まらない。 鍛えこんじゃいるが、それでも俺を上回る程ではないのだ。 「話したら解放してやる」 「司令に……話す事なんてありません…っ!」 珍しく不知火が表情を歪め、顔を上気させて言う。 おいおい、そう言うなよ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 17:50:01
yamoto @yamoto

「あのなー、不知火。話してくれなきゃ、俺もやりようないぞ」 顔が触れそうなほどの距離。 息を乱す不知火に、なるべく穏便に話しかける。 押さえ付けた手足がこわばり、顔がみるみる真っ赤になっていく。 あ、こりゃ怒ったか。 「不知火に落ち度はないです!」 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 17:55:59
yamoto @yamoto

その勢いある言葉と共に頭が振りかぶられる。 おっとあぶね。 流石にそれは回避させて貰いながら、話を続行する。 「落ち度はないのはわかった。そじゃなくてだな……」 「不知火が何か、努力を欠かしましたか?」 ん? #不知火に落ち度はない

2014-07-07 18:00:56
yamoto @yamoto

「司令は私に……何か問題があったと……?」 じわりと。 不知火の目尻に涙が浮かぶ。 「だから……何も話さないんですか?」 気丈で。冷静で。 いつもやることなすこと完璧で。 落ち度などなにもない、不知火が。 泣き出していた。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 18:13:47
yamoto @yamoto

あー……。 「あのな不知火」 すっかり忘れてた。 こいつは、機械なんかじゃないのだ。 何考えてるかわかりづらいし、何でもそつなくこなしている様に見える。 だが、その実恐ろしく努力をしているのだ、他人の何倍も。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 18:20:15
yamoto @yamoto

それをちゃんと認めてやるべきだったのだ、俺は。 少しでもいいから、よくやったと頭を撫でてやるべきだった。 多分、この大荒れ模様の原因はそう言うものの発散だろう。 「すまん。上司失格だなこりゃ」 「司令…?」 腕を押さえつけていた手を離し、頭へ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 18:24:15
yamoto @yamoto

そのまま頭を撫でてやる。 「よし、良い子良い子」 「し……司令……」 もぞもぞと嫌がるようにし始め、顔を紅潮させる不知火。 「もちょっとちゃんと褒めてやるべきだったよ」 「……。そう、不知火をちゃんと……」 「ちゃんと不知火を認めて」 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 18:36:05
yamoto @yamoto

「わかった。努力する」 撫でくり回すことで、おとなしくなった不知火を見て安堵の息を吐き。 俺は身体の力を抜く。 何が原因で怒ったのかはさっぱりわからんが、発散が終わればいつも通りになる。 「だから、許してくれ。な?」 その言葉に不知火は目を細め。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 18:50:14
yamoto @yamoto

「嫌よ、絶対に許さないわ」 がぶり。 「痛ぇえぇええ!?」 おい不知火。 ここは感動のシーンだろ。 部下と上司がわかり合うそんなシーンだろ! だが、不知火は知ったことかと、思い切り噛みちぎらんばかりに、俺の首に噛みつき続ける。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 18:53:57
yamoto @yamoto

痛ぇ! すげえ痛ぇ! まさかの行動過ぎるぞ不知火! ちょ、ちょとま! 千切れる! 必死のタップも無視。 爪を食い込ませ、歯を首の肉に突き立てる。 たまらず転がって距離を離そうとするががっちり食い込んだ爪と歯が俺を一切離さない。 本物の狼も真っ青。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 19:00:23
yamoto @yamoto

そのまま不知火は足を突っ張って俺を押し倒す形にシフト。 攻守逆転の瞬間である。 「痛い痛い痛い不知火痛い」 爪を立ててくるだけじゃない。 指でつねりだした。 知ってるか? 打撃やひっかきは訓練で慣れるが、つねるというダメージは別なんだ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-07 19:17:26
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