おもちゃの時雨さん

おもちゃの提督ちゃんシリーズスピンオフ第二弾。タグがやっばい事になっていますがそれ以前に表現等がかなりエグいので少々覚悟はいります多分
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天宮ユウキ @amamiya1yuuki

『―――・・・付き合えない?なんで?』 『だって私女の子―――。それに提督とケッコンカッコカリをするのが―――』 「はっ!あの時の事を夢で見てたのか・・・」 時雨は上半身を起こして目を覚ました。悪い夢にうなされたようで顔が青ざめており呼吸が荒かった。

2014-07-03 02:18:57
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

(今日は新しい鎮守府に配属される日だ。失敗しないようにしないと・・・) 時雨がそう思うのには理由があった。 前の鎮守府で色々失敗してしまい転属を提督から直々に言い渡されていた。だからこそ失敗を恐れていた。 準備を済ませると新しい鎮守府へ向かった。

2014-07-03 07:55:09
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

鎮守府が着くとそこに大きな姿を見つけた。装備を見ると『長門』だった。 「ん?お前見かけない顔だな・・・。もしかして新しく配属される艦娘なのか」 「ええ、そうだけど」 「よしわかった。執務室に一緒に行こう」 時雨は鎮守府に入っていく長門の後についていった。

2014-07-03 08:01:20
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

鎮守府自体恐らくごく一般的なものである。しかし時雨には何か複数の視線を感じていた。何事もなく執務室に入る。目の前に幼い少女が提督だろう。しかし身震いが酷く時雨を見るなりガチガチと歯を立てていた。 「提督、心配しないでください。新しく配属された艦娘です。まずはあいさつをしましょう」

2014-07-03 08:18:50
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

長門がなだめると初めて提督から震えが弱くなった。どうやら何かあったのだろうとしか時雨には考えつかなかった。提督もゆっくりゆっくりと時雨に近づき手を差し出した。 「私がこの鎮守府の提督です。よ、よろしくね」 「僕は時雨。提督よろしく」 「・・・時雨はこの鎮守府に・・・」

2014-07-03 08:27:27
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

「?」 提督の最期に言った言葉がうまく聞き取れなかった。しかし長門は聞き取ったのか「提督・・・」と頭を抑えて小さく呟いた。 挨拶を終えた時雨は長門と一緒に時雨の自室に行った。荷物が置かれてあることを確認したと同時にまた複数の視線を感じた。長門が一通りの説明の間もそれは続いた。

2014-07-03 08:41:53
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

説明を終えた長門が部屋から出ると時雨は一息ついた。それと同時に誰かが扉をノックしてきた。 「誰!?」 「ゴーヤでち」 扉を開けると潜水艦娘特有のスク水が目に映った。そしてその潜水艦娘「伊58」ゴーヤの姿があった。 「新人さんでちね。これからオリョクルパーティがあるけど行かない?」

2014-07-04 13:54:08
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

「オリョクルパーティ?」 その言葉に時雨は首を傾げた。なぜならオリョクルは海域の名前であり、有名な潜水艦娘過労地域でもある。それなのになぜ潜水艦娘でもない自分が誘われるのか良く分からなかった。 「港に行けば分かるでち」 「え、ええ・・・」 ゴーヤに誘われるままに港に向かう事なった

2014-07-04 14:02:41
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

港に着くと色んな艦娘が水上で立っている。その中に海に浸かっていた艦娘もいた。恐らく潜水艦娘だろう。 「あら新人さん?」 「えーとあなたは・・・」 「那珂ちゃんだよ〜。よろしくね」 那珂と握手した後これから何をするのか聞いてみた。 「・・・これから憲兵がくるからそれから説明するね」

2014-07-04 15:38:10
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

あたふたとしている中、浮かんでいる憲兵が突然また溺れ始めた。 「ちょ!誰か助けないと・・・!?」 「やめなさい」 止めようとする時雨を那珂は止めた。時雨は言おうとしたが那珂の強い瞳に制止されてしまった。 「見てみなさい。あれがこの鎮守府の姿よ」 時雨は結局見る羽目になった。

2014-07-05 00:54:07
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

溺れている憲兵が何かを叫んでいるが海水を含んでしまっている為よく聞き取れない。港を見てみるとさっきまで海面に顔を出していた潜水艦娘がいなかった。 「那珂さん一体何をしているんですか」 しばらく沈黙を貫いていた那珂が口を開いた。 「憲兵を溺れさせて弄んでいるの」 「え・・・」

2014-07-05 20:03:40
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

その言葉に時雨は信じられなかった。艦娘が憲兵を弄ぶ?何故?前の鎮守府ではそんな事はなかったはず。 「この鎮守府にはね。表の負の側面として艦娘同士の格差があるの」 「表の負の側面?艦娘同士の格差?」 目の前の問題以外にも色々あるらしい。

2014-07-05 20:09:29
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

時雨の前に配属された鎮守府でも艦娘同士の格差や差別などはあったが憲兵がおもちゃにされるなんて話は聞いた事が無い。 「も、弄ぶのは分かったとしてなんで艦娘が憲兵を弄ぶの?仲が悪いの?」 「仲は良くないけど言うなら艦娘達の一方的なストレス解消よ」 「酷すぎる・・・」

2014-07-05 20:26:30
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

「酷くはないわ、時雨」 「どうして?仮に何か酷い事されたとしてそれでもこれが許される事なの!?」 時雨の剣幕は港に響いたのか一部の艦娘達に視線を向けられた。その視線はまるで時雨が余興を潰したような感じであった。時雨は視線に耐えられずそっぽを向いてしまった。 「那珂どうして・・・」

2014-07-05 20:33:59
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

「憲兵なんて艦娘と同じで替えが利く道具じゃない。死んでもまた来るわ」 「こんな事して提督は何も言わないの?思わないの?」 「ああそれね。提督だって替えが利くじゃない。潰してしまっても誰も思わないよ。だって現に私達は提督の名前さえ知らない。とりあえず形だけ保つ上での道具よ」

2014-07-05 20:39:31
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

「那珂いい加減に」 時雨が那珂に掴みかかろうとした時偶然憲兵の片腕が海面から出ていたのに気づいた。震え方からして溺れてしまっているだろう。 「那珂、憲兵を助けなきゃ!」 「無理よ。魚雷に巻き込まれたい?なら那珂ちゃんは何も止めないよ」 「そんな。どうすれば・・・」

2014-07-05 20:44:11
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

「・・・今からでも遅くない、転属した方がいいよ」 那珂が困った顔を見せた。 「そ、それは・・・」 「何か変えたくない理由があるの?」 「ゆ、夕だ、なんでもない」 「・・・」 時雨は誤魔化したものの那珂には察せられていた。悲しげな二人と対照的にショーは熱気を帯びていた。

2014-07-07 11:06:48
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

ショーが終わり時雨がトボトボ歩いていると誰かが時雨を呼ぶ声が聞こえた。時雨が振り向くとゴーヤがこちらに向かって走っている。 「見てくれたでち?」 「何よあれ。憲兵を溺れさせて何が面白いの!」 「・・・あれは溺れさせているだけで無いでち」 「溺れさせるだけでない・・・?」

2014-07-07 11:15:19
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

「そうでち。本当は憲兵同士で開発させていたでち」 「開発・・・?」 時雨が一瞬理解できなかったが次の瞬間理解した。 「なななななな」 「ハチが提案したからそんな事になったでち。でもイクだと内臓が水面に浮かんでいたしれないでち」 「内臓が・・・うっ!」 想像すると凄い吐き気がした。

2014-07-07 11:21:42
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

「大丈夫かでち?私は激しくするなって言ってるけどイクは木っ端微塵になるまで魚雷を撃つから嫌でち」 「なんで?なんで?」 理解できない状況が立て続けに起き時雨は混乱していた。那珂との話、ゴーヤとの話で今までの鎮守府を否定しているこの鎮守府のやり方に頭が回らない

2014-07-07 11:30:15
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

「辛いでちか?」 「え?」 「あんなもの見せられて辛かったでちか?」 「確かにキツいけど」 「でもイクやハチ達を責めないで欲しいでち。彼女らは元々辛い思いをいっぱいしてきたでちから」 「それでもさっきやってた事は」 「責めるなら私を責めて」 「止める事ができない私を」

2014-07-07 11:40:30
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

「え、あ、いや・・・」 時雨は不思議とゴーヤを責める事ができなかった。彼女の覚悟が目で読み取れたというのもあった。それにあっさりと自分の罪を認めるのも責める事ができなかった理由でもあった。 「無理でちか。でも聞いて欲しいでち」 「な、なんですか?」

2014-07-07 12:06:03
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

「この鎮守府が当たり前の様にあるのは変えるきっかけを作った六人とそれを後で支えた何人かで保っているでち。彼女らがいないとこの鎮守府は終わってしまうでち。それだけは分かって欲しいでち」 「え?え・・・?」 ゴーヤの言う事があまり理解できないがゴーヤは帰ってしまった為聞けなかった。

2014-07-07 12:12:59
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

その後時雨は部屋に戻る為一人歩いていた。駆逐艦が一人で歩くのは良くないらしい。理由は軽巡以上の艦娘が慰み物にしたり理由も暴力を振るうから。 「あれは」 時雨は見覚えのある髪の女の子を見つけた。 「誰っぽい?初めてくる時雨っぽい」 犬耳のような髪型で語尾にっぽい、そう夕立だった

2014-07-07 12:28:28
天宮ユウキ @amamiya1yuuki

しかし、夕立の顔はげっそりしており疲れている様に見えた。 「新しく入った。時雨よよろしく」 「そう、よろしく」 夕立が何事もなかったかの様に帰ろうとしたが時雨は止めた。 「ね、ねぇ夕立」 「?」 「僕と一緒に部屋に帰らない?」 (今度こそ、今度こそは・・・) 「嫌っぽい」

2014-07-07 13:24:40