不知火に落ち度はない その6

@yamoto 氏の #不知火に落ち度はない をまとめました。 以下本家より抜粋 【不知火に落ち度はない】 続きを読む
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yamoto @yamoto

「ほら、飲め。ゆっくりな」 冷蔵庫からスポーツドリンクをご進呈。 そのまま蓋を開けて、ごくごくと飲み出す浜風。 回復力早いな。流石若手だ。 ついでに汗ですけすけの服を扇風機で乾かしてやろう。 ブラつけてるけど見えてるし 「……生き地獄でした」 #不知火に落ち度はない

2014-07-13 23:20:59
yamoto @yamoto

「受け身の取り方は嫌でも覚えるし、内臓も強くなるだろ」 「提督、無茶苦茶です。なんであそこまで動いて汗一つかいてないんですか」 「それは、一応俺叩き上げだからです」 ほら、浜風、髪の毛べったりだぞ。直せよ。 手で両目を隠す髪を払ってやる。 うんよし。 #不知火に落ち度はない

2014-07-13 23:27:37
yamoto @yamoto

「暑いだろ」 「……あ。い、いえ、いえ!!?」 わちゃわちゃーっとまた髪の毛で顔隠した。 なんなんだお前。すだれみたいな髪の毛して。 「あ、あの。前髪に触らないでください。今度から」 「……もしかしてコンプレックスとか?」 う、と言葉が詰まった。 #不知火に落ち度はない

2014-07-13 23:29:28
yamoto @yamoto

「あー、いいいい。どうせそんなんだと思ってたし」 詳しく聞く気はない、こいつが話したくないなら。 手を振って答えを否定する。 「ありがとうございます……」 「いいって、隠したいことぐらい誰でもある」 扇風機の風を顔に当てないようにずらす。 #不知火に落ち度はない

2014-07-13 23:38:19
yamoto @yamoto

「それって……」 「ん?」 煙草を吸って、気分を少しずつずらす。 「提督も何か、コンプレックスなんです?」 「お、もしかしてこのヘアスタイル?」 キタローヘアのことを言ってるらしい。 もう今じゃすっかりおなじみのトレードマークだ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-13 23:45:58
yamoto @yamoto

「お前知らない? アニメとかでやってたろ、こんな髪型のやつ」 「……」 あ、睨まれた。 うーん。そーなー。 チキンかもなー、と思いだす。 「我が夫となるものはさらにおぞましきものを見るだろう」 「答えたくないんですか?」 そゆわけでもなく。 #不知火に落ち度はない

2014-07-13 23:50:54
yamoto @yamoto

「そうだな。見せてやるか」 前髪を上げてみる。 ひ、と小さな悲鳴が上がり、浜風の可愛らしい顔が引きつる。 その反応で充分だった。 #不知火に落ち度はない

2014-07-13 23:56:25
yamoto @yamoto

「それって……」 「気にしてるわけじゃないんだが。ほら、見る側って結構ヤな気分になるだろ?」 今のお前みたいに。 これ上官が見ても同じ反応なんだよなー。 例外は2、3人ぐらいしか居ないし。 「いわゆるマナーだよ、マナー」 そう、マナー大事。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 00:00:26
yamoto @yamoto

「それにこれだとモテそうだろ?」 「提督……」 ふふーん。俺はこれでもモテには気を遣うのである。 モテたことねえけどな。 「正直、そのヘアスタイルでモテることって少ないですよ」 「うわ、マジでか。俺の魂のスタイル全否定」 楽しげに笑う浜風。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 00:03:10
yamoto @yamoto

「でも、私その方が嬉しいです」 「凹む。モテない方がいいって本気凹む。お前あれか、逆キューピットか」 「ええ、彼女なんてできませんように、って思ってます本気で」 うっわー。なにこの冷血美少女。 心がナイフで刻まれていくわー。 俺どんだけ恨まれたの。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 00:14:04
yamoto @yamoto

「出会いが欲しい。割と本気で」 ぷかーと、一服をする。 俺現在やる気ゲージゼロ。 いや、軍人ですから女に縁ないの知ってますよ。 彼女が居ない奴、わりかし二次元率高いから。 あ、艦娘と寿退社組は当然別な。 みんなボルネオいっちまえ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 00:29:22
yamoto @yamoto

「……」 「いや、呪うって目で見ないでくれよ」 「さっき提督がしたことってどんなことでしたっけ?」 にっこり微笑む浜風様。 オウシット。これじゃ俺がミサワ状態じゃないですか。 彼女ほしさに部下の乳揉んであんあんいわせた最低野郎ですよこれ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 00:32:56
yamoto @yamoto

「えー、大変遺憾な事故でした」 「そうなんですか。へー」 何その冷たい応対。めっちゃ恨まれてる。 でもあれお前が原因じゃん。 「触ってみてどうですか」 「大変柔らこうございました」 素直に言います。嘘つきません。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 00:37:16
yamoto @yamoto

「もう! そうじゃなくて……あの」 「それ以上に感想とか申し上げられません」 迂闊なことは言えない。 ボルネオ待ったなしである。 ここは事故という線で解決せねば。 「なんとも──思わなかったんですか?」 「……よいものをお持ちで?」 これか? #不知火に落ち度はない

2014-07-14 00:47:46
yamoto @yamoto

「あー、もう違います! ドキドキしましたかって聞いてるんです!」 うっわキレました。 夏は若者をキレやすくします。 真っ赤に染まった突撃浜風が、俺にライドオン!! 顔超近いですよ浜風君。 ドキドキなら今してますよ。主に危機で。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 00:55:05
yamoto @yamoto

「どうですか! ほら! 答えてください!」 手を握って誘導開始。カッカしてるの良くないよ君。 しっかり豊かなバストに埋まる我が右手。 右手がうずく! とかしたら許されないだろうかこれ。 「あー、してるかも……」 目をそらして、煙草を吸い込む。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 01:03:04
yamoto @yamoto

その反応が良くなかったと見える。 キッと睨み付けて、ぱっと煙草が奪われる。 「うそつきうそつきうそつき!!!」 煙草関係ないッスそれ。 大変カッカ来てるのはわかったけど。 そうまたがって責められてもですね。 あと煙草返して。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 01:09:34
yamoto @yamoto

「あーもう、落ち着こうぜ浜風。アクシデントとはいえ悪かったよ」 この体勢、人に見られたら不味いし。 またがらせて煙草持たせて何やってるんだよ。 すっと指を伸ばして煙草を取り返す。 頭を撫でて、どうにかクールダウンを願う。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 01:13:37
yamoto @yamoto

「……じゃあ、ちゃんと答えてください」 お、効いてる。 これはもしかすると不知火にも有効かも知れない。 ありがとうマニュアル書いた人。文学賞とかあげる、俺権限で。 「難しい質問だぞそれ。状況的にどうこうできるあれじゃないだろ」 それは事実である。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 01:17:46
yamoto @yamoto

「じゃあ……今はどうですか?」 「ふへ?」 あ、変な声出た。 心拍数がやや上がる。 汗に混じった香りが登ってくる。 煙草じゃどうしようもない匂いが漂ってくる。 いかんな。浜風なんでそんなに理性が飛んでる。 変なところで不知火そっくりだぞそれ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 01:22:25
yamoto @yamoto

「ちょっと待てよ。喉乾いたんでな」 手を飲みかけの酒に伸ばす。 ロックグラスに浮いた液体がさぞ精神を冷やしてくれるだろう。 このやけに甘ったるい──ラフランスのような香りは、ピート香と混ぜて打ち消すしかない。 口に運ぼうとしたその瞬間。 「えい」 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 01:26:05
yamoto @yamoto

ぱっと手からグラスが奪われる。 両手でそれを持った浜風は、きゅーっと俺にまたがったまま一気飲み。 ぷは、と声を上げたあと、とんっとグラスを置いて向き直る。 「大人はずるいです。こんなものに頼って」 半目で睨み、手を頬に伸ばしてくる。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 01:28:05
yamoto @yamoto

「提督はもっとずるいです。こんなので隠し続けて」 見上げる目は潤み、髪の毛がかきあげられる。 小柄で柔らかな身体が押しつけられ、酒と女の香りが混じったものが鼻の奥に入り込む。 指で『そこ』を愛おしそうに撫で、愛撫する。 本格的にまずくねえ? #不知火に落ち度はない

2014-07-14 01:32:07
yamoto @yamoto

そうしてただ、無言で見上げ浜風が目を閉じる。 頬は紅潮したまま俺に身体を預け、何かを待ってるかのように。 どく、どくと、心臓の音がやけにはっきり重ねられた胸から聞こえ── #不知火に落ち度はない

2014-07-14 01:38:08
yamoto @yamoto

こてん、とそのまま浜風が俺の胸に身体を埋めた。 つーより、一気に力が抜けて俺にもたれかかった。 糸が切れた人形のように。 「あれ?」 ふんにゃりしてる。 ぐんにゃりしてる。 手を持って見ると、やけに身体が熱い。 あ、これ。 あかんやつや。 #不知火に落ち度はない

2014-07-14 01:40:47
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