不知火に落ち度はない その10

@yamoto 氏の #不知火に落ち度はない をまとめました。 以下本家より抜粋 【不知火に落ち度はない】 続きを読む
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yamoto @yamoto

と、いうわけで今回は短い目の話ですがこれでおしまし。 ちょっと今日TLで黒い薔薇の話題を見かけて作ってみましたわ。 楽しんでいただければ幸いです。 #落ちぬい

2014-07-22 00:27:03

番外編

yamoto @yamoto

「長門ー。お前好きな文房具ある?」 「私はそうだな……筆ペンが好きだぞ?」 「ほう、筆ペン。筆じゃないのか」 「墨と硯を持ち歩くわけにはいかないからな。筆文字の方が色々込められる気がするから好きだ」 「お前、そゆとこ大和撫子だよな」 #落ちぬい

2014-07-21 13:55:19

浜風編

yamoto @yamoto

「よう。浜風」 「司令……夜中の散歩ですか?」 「そんなもん。今日は星観測なしでな」 ぷらぷらっと手を振って別れる。 そのまま鍵をくるくる回して歩く。 今日は大事な日だ。 星よりもやるべきことがあるのだ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-22 23:27:44
yamoto @yamoto

「で、何着いてきてるんだ浜風」 「今日は夜中の散歩に切り替えたんです。あと鍵回すと落としますよ」 「ご忠告どうも」 散歩したい気分なんだろうか、浜風。 まあいいけど。 こいつの期待通りにはならんわけだし、今晩は。 #不知火に落ち度はない

2014-07-22 23:30:07
yamoto @yamoto

そのまま歩き、基地の中の隔離された場所へと向かう。 一応自由に使って良いって話になってるが。 それでも「ここを使う」という意味が分かっていれば使わない者が大多数だ。 すなわち── 「ここって……」 「シューティングレンジ」 #不知火に落ち度はない

2014-07-22 23:36:02
yamoto @yamoto

「ほら、これからおじさんが銃を使うんだからさっさと帰って寝てろ」 声をかけると、ぼうっとした様子から浜風が戻り、慌てて首を振る。 「いえ。折角だから見ていきます」 「楽しいもんじゃねえぞ、見てても」 耳当てをぽいと投げつける。 「え?」 「付けろ」 #不知火に落ち度はない

2014-07-22 23:39:12
yamoto @yamoto

「そのまんまじゃ耳やられるぞ。密閉空間の銃声はかなり来るからな」 「あ。は、はい!! すぐつけます」 慌てて浜風が耳当てを付ける。 まあ、知らなくても当然か。 好きこのんで銃を使うやつなんてそう居ない。 俺の知ってる中で使える奴は、不知火ぐらいだ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-22 23:41:55
yamoto @yamoto

不知火は俺の護衛中に使う必要があるかも知れない、という理由でたまにここで練習している。 一方俺は── 「……え、司令。何ですかその銃」 「ん。ああ。かするだけで人間を爆殺できる銃」 名前はデザートイーグル。50AEマグナム弾を撃てる心強い奴だ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-22 23:58:11
yamoto @yamoto

「……?」 「あー。そっか。耳当てしてるもんな。聞こえるわけねーか」 耳を軽く指さしてやった後、自分も耳当てを付ける。 さすがになしで撃ちたいとは思わんわ。 スイッチを入れて、的を出す。 いわゆる人間型のターゲットが書いてある紙切れである。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:04:40
yamoto @yamoto

1つ、2つ、3つ──計5つの的が現れる。 さて、開始するか。 スライドを動かし弾丸を装填。 片手で構えて、目標をロック。引き金を引く。 馬鹿でかい炸裂音が鳴る。 ハンドキャノンの名に恥じぬ威力で、風船のように的が破裂する。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:11:06
yamoto @yamoto

発射、破裂。 発射、破裂。 発射、破裂。 発射、破裂。 それらのシークエンスを2秒内に終える。 砕け散った破片が散乱する。 少し遅くなってる気がする。 だめだねこりゃ。鈍ってるわ。 残り2発残したままで、耳当てを外す。 浜風はというと── #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:15:39
yamoto @yamoto

ただ目を丸くしてこちらを見るばかり。 おーい、浜風ー? 手を振ってみるが反応がない。 おい。乳つつくぞお前。 しかたないので、つかつか歩いてデコピンを一発。 「ひきゃ!?」 お、仰け反った。 良い反応するなあ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:19:18
yamoto @yamoto

「な……何をするんですか提督!!」 額を抑えてこちらを睨み返してくる浜風。 いや、お前ね。シューティングレンジでぼーっとする奴が悪いと思う。 「アッチの世界に飛んでたみたいだからな」 「そんなことはありません──ただ、そのそんなので人撃つんですか?」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:23:48
yamoto @yamoto

べちこーん 「ひきゃう!!?」 ちょっと本気でデコピンをプレゼント。 浜風が思いっきり仰け反って尻餅をつく。 あ、パンツ見えた。 視線に気づいたのか、慌てて浜風はスカートを押さえ、こっちを涙目で見上げる。 「こんなん人間相手に使うかばかちん」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:26:30
yamoto @yamoto

「うう。だからってデコピンはあんまりじゃ……」 「失礼なことを言うからですよ浜風くん。ボディアーマー着てる奴ならともかく普通は人間相手に撃ちません」 こんな爆殺するようなの撃ったら死んじゃうじゃん、人間。 ねえ。 「じゃあなんでそんなのを──」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:36:03
yamoto @yamoto

「……もしかして?」 「おう。多分アタリ」 こいつは深海棲艦向けて使う奴だ。 とはいえ、あいつらにはソフトエアガン程度のオモチャにしかならないんだけどな。 「いくら何でも……」 無理じゃないでしょうか、と言いたげな浜風の様子。 全然間違ってないな。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:39:44
yamoto @yamoto

「まあ、あいつらには正直オモチャだよ。ロケランでも持って来なきゃ話にならん。ほとんどエアガンだ」 人間を爆殺する銃ですら、あいつらの装甲の前には無意味である。 だが── 「目に当たりゃそれなりに効くかも知れん」 正直無茶話だと自分でも思う。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:44:16
yamoto @yamoto

「目……ですか?」 「おう。後は鼻の穴、耳、どこでもいい。人間の感覚器官に近いところに打ち込めば」 「でたらめです。接近する前に殺されますよ」 まあな。普通はそう思うだろう。 「あいつらな。人間単体は弱すぎてオモチャ程度にしか思わないんだわ」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:47:02
yamoto @yamoto

「どういう……ことですか?」 「連中、軍艦や戦闘機なんかは警戒する。自分たちが怪我をする可能性があるからな」 だが── 「逆に言えばそれらを持たない人間は、蟻とそう変わらない。いつでも潰せるのを警戒はしない」 「それは実体験ですか、提督」 「まあな」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:52:27
yamoto @yamoto

あー、ほら。またそんな苦虫潰した顔すんなっつの。 もう過ぎた話なんだし、そんな顔されたら思い出す。 「他にも火炎放射器なんかは効くかもしれんな」 「提督。そんなに私達が信頼できませんか?」 お? 「そんな練習しなくてもいいと思います」 「おいおい」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:55:07
yamoto @yamoto

気持ちはわからんでもない。 お前らが無能だから、俺はこんな練習をしてるように思われてるんだろう。 「浜風な。お前いろいろ背負い込みやすいって自覚してる?」 「提督ほどじゃありません。いちいち命懸けの事態を──」 「ちょっと話聞こうぜ。なあ」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 00:58:11
yamoto @yamoto

「いいえ。言わせて貰います。他鎮守府の提督の中でそんな人はまず居ません」 「案外いると思うぜ。中にはロケラン常備なんてのもいるかもしれん」 深海棲艦と一度でも生身で遭遇した奴なら、そうしないと眠れないことだってある。 艦娘がいるから、は救いにならない。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 01:01:35
yamoto @yamoto

いや、浜風の言うことも一理あるな。 もう『生き残り組』の現役はそんなに居ないのかも知れん。 大抵は退役するか、或いは──拳銃頭に突きつけてズドンするか。 陸に逃げて生きた方が平穏に暮らせることだってある。 俺はたまたま逃げそびれてるだけとかな。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 01:07:45