不知火に落ち度はない その10

@yamoto 氏の #不知火に落ち度はない をまとめました。 以下本家より抜粋 【不知火に落ち度はない】 続きを読む
19
yamoto @yamoto

「訂正、案外俺だけかも」 「今、何となくで喋ってませんか?」 「単純にあらゆる事態を想定してるだけだって」 例えば── 基地撤退戦に入った場合。 移動中に襲撃を受けた場合。 身一つ守れないんじゃ意味がない。 そう言うと、ますます浜風の顔は曇る。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 01:11:27
yamoto @yamoto

「それは、私達が任務を遂行できていれば──」 「できん場合もあるだろ。俺は生憎軍人であっても、軍師じゃないんだ」 海域からの撤退戦だってやったことがある。 戦争ってのは予想できないことが面白いぐらい起こるからな。 それに全て対応は不可能だ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 01:18:45
yamoto @yamoto

「でしたら、私が撤退戦の際、側にいることにします」 浜風、お前の方がそりゃどうかしてる。 お前が銃の代わりになるつってるようなもんだぞそれ。 それで銃を捨てろとか無茶苦茶だろ。 「却下だ却下。何のために秘書艦がいるか考えてるかお前」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 01:24:00
yamoto @yamoto

うぐ、と言葉を詰まらせる浜風。 「いざって時は、あいつにある程度任せる。艤装状態ならあいつの方が強いからな」 「でも提督──先程の言葉は、秘書艦が居ない状態を想定していました」 今度は俺が言葉を詰まらせる番だった。 何と答えればいいだろうか。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 01:27:20
yamoto @yamoto

「作戦内容によってはあり得る話で──」 「真っ先に艦娘を逃がす、とか考えてたんですか」 うーわー。すっごい目で睨まれてない? 疑念とか疑惑を塗り固めたような目してるぞお前。 「それもない」 ちょっとはある。 「ただ、依存する気はねーってことでな」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 01:31:59
yamoto @yamoto

「そうですか。わかりました」 「理解してくれたかね」 むすっとしたままで、浜風が言う。 「ええ。提督が一人で取り残されてる場合、即任務放棄。貴方の居るところに行きます」 なんですと。 いやちょっと。 そんな堂々と命令違反しますって言われましても。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 01:45:57
yamoto @yamoto

「いや待とう浜風。俺が一人で取り残されてるって事態を想定するとだな」 「提督が格好付けて、この武器でも何とかなるぜーははははーって半分投げてる時じゃないですか?」 ぐさー。 なにそれ、そんなこと言われたの初めて。 「そんな真似許しませんから」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 01:52:06
yamoto @yamoto

「お前が許すも許さないも──そもそも不知火が」 「彼女の態度を今まで見てきましたけど」 こほん、と咳払いを一つして、浜風が言う。 「提督が命令厳守の上で口約束をすれば、半分騙される形で離脱しますね」 うっわ、お前いつプロファイリングしたの? #不知火に落ち度はない

2014-07-23 01:58:03
yamoto @yamoto

「反応を見越した上で、銃の練習をしてる。私はそう判断します」 「デタラメだな」 だいたいあってる。こえー。 「提督は嘘つくとき、視線がちょっと上に行きますよね」 「TVの見過ぎ」 やっべ、顔に出てたか? 「はい、視線を下げましたね」 はめられた。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 02:09:09
yamoto @yamoto

「そうやって、咄嗟に嘘が出るようにしてるんですか?」 「今の誘導尋問だろ」 「本音を話してくれないからです」 あのな。そういうのは言わないのがマナーなんです。 「私はあの時言いましたよね?」 ──貴方の足を止めて踏み込むって。 うん、言ってた。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 02:18:52
yamoto @yamoto

「だから提督が本音を話すまで、踏み込んでみることにしました」 「断固黙秘権を主張します」 俺の権利を守ってください。 「認めます」 「お、マジで?」 「代わりにこちらは黙ってても質問攻めにしますけど」 やめて。お前の追求怖いんです。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 02:21:12
yamoto @yamoto

「降参してくれますか?」 「今日は徹底抗戦の構えを取りたいなぁ」 そう毎回毎回踏み込まれて溜まるかっての。 あ、そうだ。 耳当てつけちまえばいいんじゃないか。 「耳当てつけたら不意打ちで射線上に立ちますよ?」 血も涙もない浜風の言葉に俺は屈した。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 02:29:09
yamoto @yamoto

「あのな。ほんっと、そういう脅し良くないぞ」 「嘘をつくのが一番いけないと思います」 銃からマガジンを抜いて話す。 こいつ下手したらこの銃盗りかねないもん。 「で、いざというとき提督は何を優先する気でしたか」 「艦娘の撤退を優先させる気だったよ」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 02:35:13
yamoto @yamoto

いわゆるお察しの通りと言う奴である。 ええい、どうせシューティングレンジに人は来ない。 この場でどんな恥ずかしいことがあっても、ばれやしないんだちくしょうめ。 「それは何故ですか? 私達はそも──」 「多くは恋も知らんような小娘共の集まりだ」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 02:37:27
yamoto @yamoto

うっわはずかし。 口に出すと恥ずかしすぎるだろコレ。 拷問か。いっそ殺せ。 「万一の場合は国からの保護が出るし──それを嫌うなら『伝手』がないわけじゃない」 脳裏に龍田の顔が浮かぶ。 もしブラック鎮守府というものがあるなら、あいつは手出しをするはずだ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 02:39:16
yamoto @yamoto

「知ってるか。世の中がこうなっちまう前は、命を賭けるのは男の仕事だったんだよ」 「それいつの時代ですか。第一差別発言ですよ」 「差別多いに結構。死に損ないのおっさんと、未来ある小娘共なら天秤にかけるまでもねえよ」 酒飲みたい。 しらふで話したくない。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 02:42:09
yamoto @yamoto

「……。提督はどうしようもない人ですね」 「うっせ。俺はお前らをあくまで国とかから預かってるだけなんだよ」 もちろん戦力として、である。 だが、その中身が人間であることも知っている。 こんな時代に生まれて来ただけで、そこは否定されるべきじゃない。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 02:52:25
yamoto @yamoto

「それ、不知火さんにも聞かせられない本音ですよ」 「知ってる。子供扱いするなと怒るだろうな」 「全然違います」 ぴしゃりと言われる。 「死に損ない、とか自分で決めつけてるとか。不知火さんが怒ります」 「浜風は?」 「もう怒ってます」 うわぁ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 03:03:24
yamoto @yamoto

「そうやって自分をないがしろにするとか。何様のつもりですか」 「いやー……ええと?」 「私決めましたからね。貴方が一人で残ったら──私は全部投げ出して、貴方の所に向かいます。 貴方がどんな理屈をこねようが、全部無視します」 えー。それ困るんですけど。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 03:39:28
yamoto @yamoto

「軍規上で言うなら、上官は最後に逃げ出すのではなく、最初に逃げるべきです」 「それ世間じゃわりとクソ上司だって言われるぞ」 「その上で背負ってください。貴方の命は部下が助けたものだと知って、生き延びてください」 浜風の言葉に容赦はない。 正論過ぎる。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 03:45:45
yamoto @yamoto

「と──言っても貴方は絶対聞かないでしょうね。そういう人だと知ってますから」 それにそういう人だから好きになったのだし。 浜風はさらっと恥ずかしいことを言う。 これって恥ずかしいことを言い合って自滅しましょう大会? 優勝賞品は心の傷とか。 嫌すぎる。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 03:47:40
yamoto @yamoto

「だから、そんな悪い癖を出したら、私が側まで行って貴方を引っ張り出します」 「俺に拒否権をくれ」 「嫌なら、最後は一人で、なんて考えないでください」 じゃないと、私はどんな状況下でも貴方の所に向かいますから。 すこん、ととどめを刺してくれる。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 03:53:31
yamoto @yamoto

どうして浜風はそこまで生存にこだわるのか──と考えて。 そう言えばこいつは、『護れなかった』側の艦だったんだな、と思い出す。 精神面にそれが少なからず影響しているのだろう。 だがな。だったら俺も条件付けさせて貰うしかないな。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 04:00:43
yamoto @yamoto

「わぁったよ。最後に一人で残ったりはしないよう努める。 最大限最後まで生き残る方向で考えよう。 だからお前は──」 もうちょっとばかり未来を想え。 兵隊としてではなく、一個人として。 それが俺の提示する条件だった。 もー。恥ずかしいったらねえぜ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 04:11:49
yamoto @yamoto

「いいですよ。それじゃ、私は平和になった後──提督と四畳半で暮らす願望を持ちましょうか」 「あー……えっと、もうちょっとマシなのにしない?」 「それ以上に望ましいことは、あまりないですし」 「慎ましやかすぎる。石油王と結婚する、ぐらい考えろ」 #不知火に落ち度はない

2014-07-23 04:14:57