バック・イン・ブラック #2
血の涙が零れ、パラポネラの装束を染める。彼はニンジャスレイヤーの双眸の変化を察知した。邪悪なセンコ花火じみていた超自然の眼光は何故か鳴りを潜め、人間らしい瞳に変化していた。パラポネラは一抹の希望を抱いた。交渉の余地を感じたのだ。「聞け、ニンジャスレイヤー=サン」「なぜ殺した」24
2014-08-06 00:11:29「何だと……?」「なぜ殺した」「何……何でも答えよう!ソウカイヤに恨みがあるのなら、情報を売る……俺は所詮末端のニンジャに過ぎぬ、ゆえに力になれるかはわからぬ、だが……」「なぜ殺した!」パラポネラはその瞬間、完全に絶望した。ニンジャスレイヤーの双眸を染めるのは憤怒だった。25
2014-08-06 00:17:28「イヤーッ!」拳が降ってきた。「グワーッ!」パラポネラは逃れられない。「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」殴られながら、パラポネラは殺戮者をもう一度見た。殴るほどにその右目の瞳は収縮し、人間らしさを残す左目と極度の対照を示した。「イヤーッ!」「グワーッ!」26
2014-08-06 00:20:37「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」やがて左目も右目同様に収縮し、先刻の恐るべき悪鬼の形相が再び戻った……「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」血の涙は燃えながら蒸発した。そしてニンジャスレイヤーは笑い出した。27
2014-08-06 00:24:00「イヤーッ!」「アバーッ!」クローンヤクザの胴体をチョップ突きが無慈悲に貫通した。「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」クローンヤクザ達は一斉にアサルトライフル掃射をかけた。ニンジャスレイヤーは胴体貫通殺したヤクザの身体を盾とし、銃弾を受けながら急接近した。「イヤーッ!」 29
2014-08-06 00:30:24「グワーッ!」掃射ヤクザの首が折れ曲がり、即死した。ニンジャスレイヤーが肉盾を投げ捨てながら、恐るべき精度のケリを繰り出したのだ。「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」他の掃射ヤクザが同様の死体となるのに10秒とかからなかった。30
2014-08-06 00:34:01「バカな!」信じがたい殺戮光景に色を失い後ずさったのは、ソウカイヤのニンジャ、ヘルディーラーである。港湾倉庫前の禁止薬物取引の現場は、突如乱入した赤黒のニンジャに破られた。取引相手の請負業者役員……従業員を薬物労働させる為の取引だ……は既に惨たらしく引き裂かれ、死んでいる。31
2014-08-06 00:41:20「一体貴様は……俺はソウカイ・シンジケートのニンジャだぞ!俺を殺せば貴様はいずれ」ニンジャスレイヤーはツカツカと接近する。もはやこの港湾倉庫前において、生存者は彼を除きヘルディーラーただ一人!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」32
2014-08-06 00:44:52強烈な殴打の衝撃でヘルディーラーの捻じ曲がった身体は弾丸めいて吹き飛び、赤いドラム缶に叩きつけられた。「サヨナラ!」ヘルディーラーが爆発四散すると、赤いドラム缶に満たされた危険物質が誘爆!KABOOOM!港湾倉庫が炎に呑まれる!「ハハハハハハ!」ニンジャスレイヤーは哄笑! 33
2014-08-06 00:50:18「イヤーッ!」その時、暗い海の方向から飛来したスリケンあり!ニンジャスレイヤーは振り向きながら手をかざし、この飛び道具を指先で掴みとった。死神の視線の先、冷たい水面をジグザグに動きながら向かってくるのは新たなニンジャだった。その足元にホバーホイール!あれで水面を滑るのだ!34
2014-08-06 00:56:57「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン」水面をジグザグに滑りながら、そのニンジャは先手を打ってアイサツを繰り出す。然り。ニンジャスレイヤーの名を呼んだのだ。「ラバーダックです」「……ドーモ。ラバーダック=サン。ニンジャスレイヤーです」ニンジャスレイヤーは炎を背にアイサツした。35
2014-08-06 01:01:09「テロリストめ!貴様の狼藉は既にシンジケートの知るところだ。命運尽きたり!」水面を滑りながらラバーダックが宣告した。「ソウカイヤに仇なす者の末路の新たなサンプルとなれ、ニンジャスレイヤー=サン!」その上空を横切る四角い影あり!ナムサン!それは凧!ニンジャが凧を背負っている! 36
2014-08-06 01:09:28巨大な凧には「キリステ」「囲んで棒で叩く」「逃げ場は無い」などの恐るべきショドーが為されている。不用意にそれらを目にすれば、手練であっても動揺は避けられず、心弱き者ならば即座に失禁、泡を吹いて倒れるであろう。だがニンジャスレイヤーはこの精神攻撃に耐えた。「アメンボに、蚊か!」37
2014-08-06 01:13:51そしてニンジャ視力をお持ちの方であれば、凧を背負うニンジャがもう一人のニンジャを抱えている事に気づいた筈だ。「イヤーッ!」凧のニンジャが手を離すと、その者は空中をクルクルと回転しながら落下、ニンジャスレイヤーからタタミ数枚離れた間合いに着地した。「ドーモ。スクワッシャーです」38
2014-08-06 01:19:46「イヤーッ!」港湾至近距離を滑りながら、ラバーダックは無数の火炎瓶を投擲!炎をもって退路を塞いだうえでスリケン攻撃を開始!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは側転でスリケンを回避、着地と同時にスクワッシャーにオジギした!「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」39
2014-08-06 01:24:25「俺様にスリケンは効かぬ」スクワッシャーの鉛色ニンジャアーマーが、無差別的に投擲されるラバーダックのスリケンを跳ね返す。彼はじりじりとニンジャスレイヤーに接近する。「だがお前にはスリケンが効く」然り。ニンジャスレイヤーは飛来するスリケンを躱しながら対峙する事を強いられている。40
2014-08-06 01:27:41「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケンの合間を縫ってチョップを繰り出す!スクワッシャーはこれをガード!「ヌルい。容易なカラテよ」スクワッシャーが勝ち誇った。「スリケンと炎によって貴様のカラテは直線的にならざるを得ない。この挟み撃ち殺法で貴様のカラテは確実に半分以下だ!」 41
2014-08-06 01:32:16「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」背後の水上からはラバーダックがスリケンを無数に投擲!スクワッシャーの身体にもフレンドリーファイアするが、意に介さない!「俺様にスリケンは効かぬからな!イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスクワッシャーのチョップを受ける。重い! 42
2014-08-06 01:34:38「イヤーッ!」再びスクワッシャーのチョップ。重い!ニンジャスレイヤーは圧力に押され後退する。中腰姿勢を取る。その背にスリケンが突き刺さる!「避ける力も無くなったか」スクワッシャーが言った。「ミュルミドン=サンを殺したお前も半分になれば所詮弱敵以下よーッ!」「イヤーッ!」 43
2014-08-06 01:41:13「グワーッ!?」スクワッシャーが呻いた。彼の脇腹にチョップ突きがめり込んでいた。「バカな!」スクワッシャーは目を剥いた。ニンジャアーマーの接合部は必然的に装甲性能が落ちる。そこを突いたというのか?「ヤメロ!イヤーッ!」チョップを振り下ろす!ニンジャスレイヤーはガード! 44
2014-08-06 01:44:12「なんたる蛮勇行為」スクワッシャーは腕に力を込める。ニンジャスレイヤーの背に再びスリケンが突き刺さった。ニンジャのスリケンは銃よりも遥かに殺傷力の高い投擲兵器である。もう数度スリケンを受ければ、ニンジャスレイヤーは実際死ぬであろう!「どちらにせよ貴様は死ぬ!」「イヤーッ!」45
2014-08-06 01:47:48「グワーッ!?」次の瞬間、ニンジャスレイヤーとスクワッシャーの立ち位置は逆転していた。まるでオスモウのドヒョー・リング際だ。スクワッシャーのアーマーに片手をこじ入れ、カラテを削いだニンジャスレイヤーは、その重いニンジャアーマーごと、スクワッシャーの身体を動かしたのである。 46
2014-08-06 01:50:31「貴様……」スクワッシャーの背中が飛来するスリケンを次々弾いた。これでは盾だ。彼はニンジャスレヤーから離れようと身を捩った。だがニンジャスレイヤーはそれを許しはしない。スクワッシャーは残忍な笑みを前にしていた。不意に彼は恐怖を覚えた。「何を……」「イヤーッ!」「グワーッ!」47
2014-08-06 01:52:57スクワッシャーのニンジャアーマー胸部が、剥がれた!スクワッシャーは狼狽えた。脇腹にこじ入れたニンジャスレイヤーの手だ!接合部から力を込め、装甲を破壊したのである!「バカな!」スクワッシャーの背中はラバーダックのスリケンを弾き続ける。このとき彼は狙いを悟った!「ヤ……ヤメロ!」48
2014-08-06 01:58:08