もうすでに終わりかけの所で、17年前受けたショックは、もう随分薄まっていると思っていたが、観ていて、あの時ほどでは無論ないが、人間がどれほどの自然環境の破壊をやってきたかという事にあらためて胸が塞がる。
2014-07-05 01:59:24先ほどツイートした「型」の意味について、自分の理解がまだまだ浅いことは自分自身よく理解しているが、人間が今まで犯してきた罪に対する自覚の深さが(まったく自慢になる話ではないが)私ほどある者は稀だろう。
2014-07-05 01:59:4417年前は3ヶ月くらい酷く辛くて、その後ゆっくりと治まっていったが、2年後に初めて宮崎駿監督の書斎のある二馬力の2階でお会いした時、折角2人きりで話せる機会であったのに、あまりお話しも出来ず、ただ窓から見える栃の大木を話題にした程度だった。
2014-07-05 02:00:26その時、宮崎駿監督の中にも私に似たどうしようもない思いと、それを何とかしようという思いとを共に感じたが、その事がそう見当外れでなかった事は、その後2000字にも及ぶ御手紙を頂いた時、あらためて分かった気がした。
2014-07-05 02:00:55この御手紙に関しては昨年の9月、私のメールマガジン『風の先・風の跡』の中に連載していた「この道に踏み入って」の中で、宮崎監督の御了解を得て全文公開させて頂いた。そこでは宮崎監督の人間の業の深さに対する絶望、闇、それでも何とか幼い子ども達に希望を届けたいという思い…。
2014-07-05 02:01:20しかし、それらが闇や虚無にみ込まれて行くことへのどうしようもなさ、それでもアシタカやサンの友情の重さで何とか希望をつなごうとしつつ現実の世の中に戻ってみると、この映画がヒットして、ただ稼いだ全額だけが話題になることに再び虚しさを感じて…
2014-07-05 02:02:21当時、宮崎監督は、すでに50代後半になられていたが、この年齢の大人でこれだけ誠実に、人がやってきた事と向き合い、真摯に考えられている方が存在している事が驚きであり、それはそれは深く共感できたが、そうなればなるほど辛くなるということである。
2014-07-05 02:02:51当時、徳間書店から対談本の企画もあったが、宮崎監督が「会って話したのですから、もうそれ以上はないですよ」と言われたのは、まったく正解だったと思う。もし会って話した事をまとめても、とても人が読めるような本などにはならなかったろうから。
2014-07-05 02:03:04何しろ宮崎監督から、「もののけ姫」に関して、甲野さんのような感想は、他に聞いた事がないです・・・」と、コメントされていたから。
2014-07-05 02:03:16今は急ぎの用件が何件もあるのだが、何だか今夜はすべて止まってしまった。と言って、何かせずにはいられないので、いまここで宮崎駿監督から頂いた御手紙を読み返しながら、その一部を抜粋して載せたいと思う。
2014-07-05 02:03:28甲野善紀様 ご本をありがとうございます。それに 先日は 体調がすぐれないのに スタジオのみんなに技を見せていただいて 本当にありがとうございました。-中略-
2014-07-05 02:03:45もののけ姫は 言葉でつくるまいと努力をしました。 言葉で語ると たちまち 何物かに粘りこく からめとられて、折角 描こうとしたものが みすぼらしいものになってしまうためです。
2014-07-05 02:04:00説明、解説、判りやすさも 放りださざるを得ませんでした。 通俗作品の作り手としては、 ストレスではありましたが、 それが最底の誠意のように思い込んでいました。今でも それが良かったのだしか言いようがりませんが…
2014-07-05 02:04:13出来あがれば メルヘンチックな作品ととられてしまう作品も、その過程では 言葉や理屈にたよらず、闇…としか自分には表現しようがないのですが….から湧き出て来たものをたよりに とにもかくにも 商品らしき姿に仕上げるのが実状です。
2014-07-05 02:04:45もののけ姫は 度がすぎて 今までになく フタをあけたのだと思います。あけざるを得なかったと言った方が正確です。映画を公開したあとでの 自分の状態からも それが判ります。一体自分が何を作ったのか まったく判らなくなったのです。
2014-07-05 02:05:32いろいろ 口走りましたが、整合性と論理性とその領域では、自分のつくらんとした作品を 自分で把握できないのは当然で、苦痛の日々がつづきました。
2014-07-05 02:07:26ぼくらは 自分の存在の奥の方に 闇のかたまりをかかえています。虚無というのか、空なのか、ニヒリスムというのか またまた言葉の問題にぶつかってしまうのですが…
2014-07-05 02:07:38人間の業という言葉もまた、その中に飲み込まれてしまう もっと根源的な、もっと本質的な虚無だか、闇だか、なにか判らぬ圧倒的な およそ人間性という うすい皮膜など 何の力にもならぬほど 強力で奪い去っていく何か から、生命が生まれてきたのだと認めざるを得なくなりました。-中略-
2014-07-05 02:08:43ぼくらは、観客、それも若い幼い観客にはげましや楽しみを伝えたい、その上、できるならば心の奥の方の神経索 ちょっぴり電気を流したい。希望もよろこびも そうしたものだからと 仕事をして来ました。
2014-07-05 02:08:58しかし、ぼくらの作品を支持してくれる人々や、これから そうなってほしい幼い人達の中で かつてなく闇や虚無や、くいつくす何かの力が ほころびから顔を出して来ていて、自分達が これだけは本当だと思うと 映画にして来た世界が どんどん力を失っていくのを感じるようになりました。
2014-07-05 02:09:16