J・フォン・クリースとマックス・ウェーバー補遺(因果分析の方法論を中心に)

以前もまとめられていた「J・フォン・クリースとマックス・ウェーバー」(http://togetter.com/li/668538)や「toshisato6010氏による「ウェーバーを挟むかたちでの実証性/実定性の転換」という仮説の彫啄過程」(http://togetter.com/li/679576)に関連する一連の書き込みを、個人的な備忘としてまとめました。 冒頭で言及されている書評については、まだ書誌情報が確認できませんでした。
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佐藤俊樹 @toshisato6010

どちらも同時代では超有名な学者で、vonの有無もあるから、当時は混同されなかっただろうが、Weberは両方の大学に縁が深く、さらにKniesには『統計学』という著作もあるから、今の社会科学者には区別しづらいかも。実は私も長い間、混同してました、ハイ。

2014-08-14 04:36:26
佐藤俊樹 @toshisato6010

『ロッシャーとクニース』でWeberが批判しているのは、歴史学派のKniesの方だ。で、その第三章「クニースと~(続)」で、批判するWeberの方の枠組みが生理学者で統計学者のv.Kriesにもとづくことが、Weber自身によって言明される、といういささかややこしい関係にある。

2014-08-14 04:37:01
佐藤俊樹 @toshisato6010

さて話を本筋に戻すと。独語圏での研究をうけて、英語圏でWeberの方法論だけでなく、研究全体の読み直しを進めた一人が、Fritz Ringerだ。『読書人の没落』や『知の歴史社会学』の著者の、あのRingerである。

2014-08-14 04:37:46
佐藤俊樹 @toshisato6010

これに気付いたときは、さすがに頭を抱えた。一つは、こういうことを見逃してきた自分の愚かさに。もう一つは、日本語圏ではこういう形で、Weberの方法論や学説研究と経験的な歴史社会学研究が接続されてこなかったことに。

2014-08-14 04:38:10
佐藤俊樹 @toshisato6010

Ringerの関連する著作は二つある。 Max Weber's Methodology (1997年)と、Max Weber: An Intellectual Biography (2004年)だ。Ringerは2006年に亡くなるので、最後の著作群にあたる。

2014-08-14 04:40:27

【参考】Ringer, Fritz, 1997, Max Weber's methodology : the unification of the cultural and social sciences, Harvard University Press.

佐藤俊樹 @toshisato6010

1990年代後半から2000年代前半は、日本語圏でも歴史社会学が流行してきた時期だ。私が知らなかっただけなのかな。それならいいけど。いや、それだといいけれど。 Ringer自身はかなり論争的な主張をしていて、実際、かなり論争になっている。

2014-08-14 04:41:05
佐藤俊樹 @toshisato6010

だから定説ってわけでは全然ないが、そういう形で論争されることがとても健康的に思えた。方法は具体的な研究のためにある。経験的分析と接続しなくなった理論や方法の研究は、どんなものでも自閉していく。私はそう考えているので。

2014-08-14 04:41:36
佐藤俊樹 @toshisato6010

もう一つ羨ましいなあと思ったのは、Ringerの方はW.Salmonら、英語圏の科学論の研究との並行性も視野にいれていることだ。経験的分析のための方法の研究や再検討であれば、当然、現時点の科学論の研究成果と無関連ではいられない。

2014-08-14 04:42:44
佐藤俊樹 @toshisato6010

あたりまえのことだが、そのあたりまえが眩しく思えた。 Ringerの視座は、彼がいた研究教育環境ともたぶん関わっている。Ringerは主にPittsburgh大学で教えていた(1984~2001年)。

2014-08-14 04:43:44
佐藤俊樹 @toshisato6010

ここはCarl Hempelが最後に教えていた大学だ。そして、Ringerの数年前にPittsburgh大学に来て、Hempelの後継者となったのがWesley Salmonである。SalmonはUCLAで、ベルリン学派のH.Reichenbachの下で博士論文を書いた。

2014-08-14 04:45:04
佐藤俊樹 @toshisato6010

von Kriesとはそこで繋がってくる。v.Kriesはウィーン学団のR. von Misesの確率論にははっきり否定だったが、Reichenbachについては明示的に判断を留保している。『確率計算の~』第2版序文(1927年)。

2014-08-14 04:46:26
佐藤俊樹 @toshisato6010

v.Kriesの立場からすれば当然で、v.Misesの確率定義は数理的なオモチャにしか思えなかっただろう。その辺は、K.Popperの確率定義や反証主義とも絡んでくるが、実はWeberの方法的検討の、いや正確には、それをめぐって私が書いた書評の、重要な論点の一つでもある。

2014-08-14 04:48:12