アイヌ語爺さんのアイヌ文化へのエール

アイヌ文化政策に関する研究者たちのツイートを巡っての、アイヌ語爺さんのアイヌ民族と文化へのエールです。
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丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 財団が難色を示したのは「アイヌ口承文芸の語りにアニメ映像をつける」という事業計画に反するのではないか、と恐れたからだったようだ。そこでまず、元の叙事詩テキストの台詞のみ抜き出して脚本にしてみた。これはすんなり通った。だが、はっきりいって使い物にならない。

2014-08-14 18:46:29
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 何とか日本語だけでできないかと思ったが、財団側は「アイヌ語の語り」は譲れないという。ようするに「脚本アニメは駄目」ということだ。そうなれば今後しばらくは「アイヌアニメとは口承文芸の語りに絵をつけるもの」ということになってしまう。

2014-08-14 18:51:09
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 役所の前例主義はおそろしいが、研究者や文化活動家の固定概念もおそろしい。いったん「アイヌアニメとは口承文芸の語りに絵をつけるもの」という前例ができれば、それは確実に固定されるだろうと思った。ちゃんとしたアニメが作られる未来が閉じられてしまう。

2014-08-14 18:54:07
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 時間は全くなかった。制作は進行しており、タイミングを逃せば脚本アニメの可能性はなくなる。仕方がないので、用意しておいた脚本の沙流方言訳を見せた。「世界初のアイヌ語アニメになります。口承文芸の世界をアイヌ語の語りで学べます」。財団はようやくOKを出した。が、

2014-08-14 18:58:13
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku だが私は気が遠くなる思いだった。砂沢クラ媼の叙事詩を「沙流方言脚本」でアニメにする!そんなことをすれば私は許してもらえないだろう。やはり「本格アニメ」は断念するしかない。叙事詩の語りに絵を付けたバージョンで誰も文句はいうまい。アイヌアニメの将来はもう仕方ない

2014-08-14 19:04:18
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku だが、諦めきれない私は結局、旭川方言の先生に泣きつくしかなかった。悪いことは出来ないものだ。先生は(内心どう思われたことか分からないが)快く引き受けてくださり、あっという間に旭川方言(石狩方言)版の脚本を用意してくださった。先生には本当にお世話になりました。

2014-08-14 19:11:39
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku こうしてアイヌ語脚本を用意することができて、ようやく「脚本アニメ」バージョンにGOサインが出たが、次の問題は声優だった。DVD全体の制作を統括する会社(アニメ制作者とは別)は「声優は1人だけ」という。予算を割くのが嫌だというのだ。これは私の権限外だ。

2014-08-14 19:16:07
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 実は財団の職員に「アイヌ語が出来てなおかつ学校での演技経験のある人間」がいた。だが、財団としては職員に事業への協力はさせられないという。仕方がないので、つてを頼って自腹でアマチュア声優に依頼しようと動き始めた。

2014-08-14 19:20:41
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 「ルロアイカムイ」の登場人物は、ポイヤウンペ、狼神、狼神の妹、ルロアイカムイの4人。「そのくらい自腹切ったるわい」と告げて動き始めた途端OKが出た。まあ、いろいろあるのだ。結局4人のプロ声優にお願いできることになった。財団にも統括会社にも感謝するしかない。

2014-08-14 19:25:23
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku そういうわけで、綱渡り、ギリギリのスケジュールで「オルシペスウォプ」は完成した。叙事詩「ルロアイカムイ」はマレウレウの川村久恵さんの歌に映像をつけたバージョンと、脚本アニメのバージョンの2つが収録されることになった。どちらも世界初の作品になった。

2014-08-14 19:28:07
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 私は当初、編集委員を1年しか引き受けるつもりはなかった。アニメ制作にかかわると、冬の調査シーズンを完全に棒に振ることになるからだ。だが結局、ある先生にやれと言われて、2013年度のDVD「オルシペスウォプ2」も監修することになった。

2014-08-14 19:35:21
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 2年目はなんと、1年目が「前例」となって我々を縛ることになった。もちろん、それは予想していた。1年目のような綱渡りは御免だったので、前例踏襲でいいことにした。いろいろ問題はあったけれど、まあそれも想定の範囲内ではあった。

2014-08-14 19:38:41
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 「オルシペスウォプ2」の「ニタイパカイェ」は、今の事業体制、2012-2013年のチームで出来る最大の「大作」である。10分近くの長尺であり、声優も5人に増えている。これ以上の規模(長さ)にすると確実にパンクする。長編用に体制を整え直さないと無理である。

2014-08-14 19:42:33
丹菊逸治 @itangiku

ここまで長々と「オルシペスウォプ1・2」の顛末を書いてきた。私に才能があるといいたいのではない。才能や経験によってではなく「やるべきことをやる」ことで事業が行なわれたのだ、といいたいのだ。

2014-08-14 20:14:28
丹菊逸治 @itangiku

アイヌアニメについては、一般からの感想はとても嬉しい。「面白い」「つまらない」など全てが参考になる。だが、同業研究者には誉めてもらいたいわけでもけなしてもらいたいわけでもない。同業研究者のそんな能天気な感想には悲しくなる。私が担当しなかったらどうなったと思っているのか。

2014-08-14 20:16:17
丹菊逸治 @itangiku

1千万円もかけてまともなアニメが作られない事態になって、そのまま素知らぬふりを決め込むつもりだったのか。アイヌ文化財団のアニメ制作は明らかに「有識者懇」の報告を受けた公共事業だ。有識者懇・政策推進会議には研究者から選ばれた人間も参加している。第一みな知り合いではないか。

2014-08-14 20:16:50
丹菊逸治 @itangiku

現在の行政によるアイヌ文化事業に研究者は多かれ少なかれ責任がある。途中で背を向けた人間も含めてだ。「みんなで手を放せば事業は沈む、関わっている奴の責任だ」ではすまない。手を放したって事業は継続される。大切なのは、事業を無くすにせよ存続させるにせよ正しい道に進むよう努力することだ。

2014-08-14 20:17:30
丹菊逸治 @itangiku

みんな私が遊びでアニメ事業を担当したとでも思っているのか。あれは同業研究者への「あんたらも責任を取れ」という脅しだ。

2014-08-14 20:18:54
丹菊逸治 @itangiku

(1)私はあのアニメで「これ以上アイヌ語の向上が見込めないレベル」まででアイヌ語は諦め、リソースを「映像の質の向上と確保、まともな事業進行」のために配分した。これは従来のアイヌ文化事業に欠けていた判断だ。これは同業研究者に向けたメッセージである。

2014-08-14 20:19:44
丹菊逸治 @itangiku

(2)私はあのアニメで「全部入り(伝統文化、現代、アイヌ語)でもプロ(クリエイター)の仕事はここまでできる」ことを示した。この水準が実現できないなら、事業計画を見直すべきである。これはアイヌ文化行政関係者および納税者へのメッセージである。

2014-08-14 20:20:43
丹菊逸治 @itangiku

ようするにアイヌ文化関連の研究者が無条件にコーディネイターとしてふるまうのはよくない、ということだ。そのような仕事からは手を引くべきだ。

2014-08-14 20:22:57
丹菊逸治 @itangiku

私は、研究については「研究したいから研究しているだけ」だ。だが、アニメについては「アニメを作りたいから作っただけ」ではない。メッセージ(1)(2)として制作した。もちろん私の意図がどうあろうと、あのアニメはそのようなメッセージにしかなりえない。そのために調整してあるんだから。

2014-08-14 20:23:41
丹菊逸治 @itangiku

研究者が始めたことが、巡り巡って良くない結果につながっていることは、本当にたくさんある。良心的な研究者が途中で手を引いても、別の研究者がそれを引き継いで良くない結果を招いたりする。

2014-08-14 20:25:40
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 「駄目な事業」からは、ただ手を引くだけでは不足なのだ。

2014-08-14 20:27:16