- treeofevil
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「……少なくとも、二人とも異論は無さそうだな」 話し合う『色欲』と『物質主義』を交互に眺め呟くと、『貪欲』は彼らに背を向けて大広間の扉へと歩み寄り扉を開けた。 「先行くぜ。また此処に集まれるよう、気ィ抜くなよ」 そしてそれだけ言うと、返事も聞かずに大広間を出た。
2014-08-16 16:18:21パタン、と扉が閉まる。 早足で廊下を行く。その足は、迷いなくピアノの部屋へ。辿り着いたその場所で、『貪欲』はピアノに一瞬触れ。 「……行くか」 5の扉の前に立つ。触れたノブは冷たく、カチャリと回る音が響いた。
2014-08-16 16:18:25「ありゃりゃ、『貪欲』行っちゃったねぇ。全くせっかちなんだから。」 とはいえ、扉が決まった以上ここに居続ける理由もないのも事実。 まぁ僕もそろそろいこうかな、とあくび混じりに立ち上がった『色欲』は、くるりと辺りを見回し、ひらりと手を振ると大広間を後にした。
2014-08-16 16:39:13「うん、それでいこう。」 『色欲』の言葉にこくり、と頷く。大広間を後にする『貪欲』と『色欲』を視線で追った。 「じゃあみんな、またね」 また、と強く発音してひとつ笑う。『愚鈍』と『醜悪』にちょこりと手を振って、二人を追うように大広間を抜けた。
2014-08-16 17:37:44仲間たちの話に耳を傾け、頭をぬいぐるみに預ける。薄く唇を緩めた。あの空間に行ける。それだけで笑みは深まっていた。 次々出て行く仲間たちを見送る。誰もいなくなった大広間はぞっとする程に静かで、『醜悪』はそっと息を吐く。 ゆっくりと目を伏せ、またゆっくりと開く。紫紺が虚ろに煌めき。
2014-08-16 17:57:44「ぼくもそろそろ行かなくちゃねぇ」 笑う。静かな大広間に響く声は、ただ淡々と広がり、そうして消える。ぱたり、ぱたり。ぬいぐるみが発てる足音、大広間の扉が開く音。いつの間にか照明が消え、薄暗い室内を、紫紺はぐるりと見回し。 「それじゃ、またね」 声と共に、大広間の扉は閉まる。
2014-08-16 17:57:57大広間を出た『醜悪』は、ゆっくりと急ぐことなく、中庭へと向かう。 青空。風の通る音。それらを肌で味わいながら、森の中へ。開けた空間。先程と変わらぬ其処に、一枚の扉。よく見ると蔦が這っているそれに近寄り、双頭のぬいぐるみから下りた。 「……綺麗だね」 そっと扉に触れ、装飾を撫ぜる。
2014-08-16 17:58:11その様子はいつもの彼と違ったが、紛うことなく、其処にいるのは『醜悪』だった。 把手に手を伸ばす。屈んで、額を把手に近づける。黒髪が揺れる。 かちゃりと把手が回る音、扉が開く。倒れ込むようにその姿は扉の向こうへ。 「——いってきます」 緑が広がる空間に解けるような声だけが響いた。
2014-08-16 17:58:25