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treeofevil
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「『醜悪』、すごい」 自分なんかは『貪欲』に探してもらったようなものなのに、一人で見付けることが出来た『醜悪』に拍手を浴びせる。 傍から見れば馬鹿にしているようにも見えるが『愚鈍』は至って真剣だ。 「じゃぁ、みんなの、とこ……行く?」 『醜悪』と『貪欲』の二人に向けての問いかけ。
2014-08-15 02:58:50![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
『愚鈍』と『醜悪』の会話に、長く息を吐き出す。苦言を呈するのはもうやめだ。なんだか馬鹿らしくなってしまった。『貪欲』は二人を眺め見て、頷く。 「ああ。一度、大広間に戻るぞ」 そして、それだけ言うと、返事も聞かずに大広間へと歩き出した。
2014-08-15 09:34:46![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
褒められるのはくすぐったい。嬉しげに、しかし何処か恥ずかしそうに、笑った。 「ごめんねぇ、ありがとう」と先行く『貪欲』に後ろから声をかける。聞こえているかは分からない。言いたいから言った、それだけだ。 ぬいぐるみを大きくし、抱き上げられ。 「行こっか、『愚鈍』」 紫紺を緩めた。
2014-08-15 10:43:49![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ごめん、ありが、とう」 『醜悪』が『貪欲』に言ったのを見て、自分も真似をする。なぜ謝ったのかは分からないが、感謝することは良いことだと知っていたので自分も言うことにした。 「う、ん。行こう」 『醜悪』の言葉に頷き、大広間の方へと歩き始めた。
2014-08-15 11:53:41![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
大広間の扉の前、仮面をつけ忘れていた事に気が付いた『色欲』は慌てていつもの仮面を被りなおしていた。 …素顔を見られるのは苦痛だ。 何故だかは分からないが、その顔を晒す事は『色欲』にとって何よりも耐え難い事であった。
2014-08-15 13:20:41![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
こんな醜い顔を晒さずに済むのなら、やはり自分は道化師であるのがお似合いなのだろう。 自嘲的に、『色欲』は息を漏らした。 「…もう、みんな帰ってきてるかな。」 例えまだでも、どうせじきに戻って来るだろう。 仮面がしっかり己の顔を覆っている事を確認すると、その大きな扉を開けた。
2014-08-15 13:24:33![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
中庭を出て、廊下を歩く。迷うわけもなく辿り着いた大広間の扉の前に『色欲』が立っている。その周りに子供はおらず、どうやら置いてきたらしい。扉を開けて中に入って行った『色欲』を追いかけるように『貪欲』もまた大広間へと入り。 「……『色欲』だけか」 辺りを見回し、そう呟いた。
2014-08-15 15:37:31![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「やぁ、『貪欲』。どうだい、扉は見つかったかい?」 部屋に入って来た『貪欲』の姿に、『色欲』は緩く手を振りながら答えた。 「僕はそれらしきものは見つけたんだけど…どうもノブが壊れているみたいでね。扉が開かなかったんだ。『1』と書かれた扉だった」
2014-08-15 15:59:27![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「こっちも同じだ。扉は見つけたが、ノブを動かしても開かねぇどころかビクともしねぇ。まあ、今はその時間じゃねぇってことなんだろうがな」 『色欲』の傍に歩み寄り、答え。 「見つけたのは3と5、それから……おい、『醜悪』。お前が見つけたのは何だったよ?」 振り返り、『醜悪』に尋ねる。
2014-08-15 16:06:09![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
『貪欲』に言った言葉を繰り返す『愚鈍』に思わず吹き出し、笑いを堪え、『醜悪』も歩き出す。 暫くし、大広間に着くと『色欲』の姿があった。『貪欲』の後に続いて入り、大広間を見回していると、彼の声。此方を向き、問うそれには、親指だけを曲げて、指を四つ立て、答える。 「四番だったよー」
2014-08-15 16:19:55![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
のんびりと歩いていた『物質主義』が角を曲がると、大広間の扉が開いているのが目に入った。その奥には見慣れた人影が、ひとつ、ふたつ……全部で4つ。どうやらのんびりしすぎたようだと、小走りで彼らに駆け寄る。 「申し訳ない、すっかり遅れちゃったみたいだね」
2014-08-15 18:26:00![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ひとつ頭を下げてから、皆をぐるりと見上げる。どの顔にも焦りは見られない。それぞれ扉を見つけられたのだろうか。「僕がいちばん最後なのかな」と独りごちて、己の成果を告げる。 「湯船の底に2番の扉があったよ」 ひょいと首を傾げ、開けられそうもなかったけど、と続けた。
2014-08-15 18:27:31![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「気にしないで白衣君。僕らも集まったばっかだから」 少し遅れた『物質主義』の登場に、笑顔で返す。 手持無沙汰になったのか、『色欲』はどこからか取り出した粘土の様な物をこね始めた。 「1から5ねぇ…これって扉の番号によって何か違ったりするの。僕が見つけた扉は随分と朽ちてたけど」
2014-08-15 18:41:27![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
頭を下げた『物質主義』に、気にするなと首を振り。 「湯船の底に、ね。随分とまあ色んなとこにあるもんだ」 腕を組み、首を傾げる。現れた扉の差異は、いったい如何なる意味があるのか。それを考えようと思考して、止める。扉の差異など、大したことではない。少なくとも、『貪欲』には。
2014-08-15 20:59:05![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「さあな。だが、入ってみりゃ分かることだし、何処に入ろうが殺り合うことに変わりはねぇんだから、深く考えんのは後にしようぜ」
2014-08-15 21:01:41![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「…まぁ、それもそうか。」 『貪欲』のいう事も最もだ。結果が同じならそこに至る過程など些細な事だろう。 話を聞きながらぐにぐにと粘土で器用にこねあげたそれは、笑顔の子供の姿になった。 …出来上がった事に満足したのか、すぐにその粘土の片腕を引きちぎってしまったが。
2014-08-15 22:33:23![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「どうせどの扉に入った所で、そこに居るのは『女』とかいう人たちなんだろうし……おっかなかったらどうしよ」 おお怖い怖い、とわざとらしく怯えた声を出して、『色欲』は肩を竦めた。 己の先刻までの所業に関しては、棚に上げてるのか、無意識か、ともかくその「恐ろしい」には入っていない様だ。
2014-08-15 22:35:55![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「おかえりー、『物質主義』」 現れた姿にひらひらと手を振り、『色欲』と『貪欲』の話に耳を傾ける。ぬいぐるみに頭を預け、ゆったりと寛ぎつつ、言葉を味わった。時折、ふふっと笑みを零し、眼を緩ませる。 ——と、不意にあっ、と声を上げた。頭を上げる。首を傾ぐ。黒い雲のような髪が揺れ。
2014-08-15 23:04:04![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「そうだ、行く扉は見つけた扉でいーの? ぼく、四番の扉がいいんだけどぉ」 問うように、珍しく緩んでいない紫紺が四人を見回す。
2014-08-15 23:04:07![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「お、俺……三番が、いい」 番号を唱える『醜悪』に釣られ『愚鈍』も大きな手を挙げ宣言する。 先に言っておかないと取られてしまうのではないかと焦っているのか口調がいつもよりどもり気味だ。 『醜悪』と同じように皆を見渡す。洞穴のような瞳には不安の色がちろりと映る。
2014-08-15 23:50:56![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
おっかなかったら、なんて、お前が言うことかよ。そう口から出かけた言葉を飲み込み、『貪欲』は片腕の千切られた粘土の人形からなんとも微妙そうな表情で顔を背ける。余計なことは、言わないに限るものだ。 フゥ、と溜息を吐く。不意に声を上げた『醜悪』の問いかけに頷き、
2014-08-16 01:20:32![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
それから『愚鈍』に目を遣って。 「まあ、他に意見が無けりゃそれで良いんじゃねぇの。……少なくとも、俺はそれで良いし、『醜悪』と『愚鈍』の選択にも異論はねぇ。ちなみに、俺の希望は五番だ」
2014-08-16 01:21:00![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「僕は別に、見つけた扉でもその他の扉でもいいやぁ。ああでも、この様子だとみんな見つけた扉に行くのかな?」 グリグリと人形に爪を立てて、鼻歌交じりに『色欲』は答えた。 ぐちゃぐちゃと彼が弄る度に、粘土で出来た筈のそれからはぼたぼたと赤い液体が滴っていて、見た目とてもグロテスクだ。
2014-08-16 07:53:03![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
仲間たちの声にありがとう、と安堵したように笑う。くて、と首を傾けて皆の意見を反芻し、選択肢は1か2かと結論を出す。 「僕もどちらでも構わないよ。このまま見つけた扉を開けるってことでいいのかな?」 赤い液体に濡れた粘土を捏ねる『色欲』を見上げる。
2014-08-16 13:21:54![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「んー、それでいいんじゃない?互いに希望がないなら。わかりやすいし。」 『貪欲』君の言った通り、どうせやることは同じだし、と笑う。 『物質主義』に特に希望がないのなら、わかりやすく互いに見つけた扉を行けば良いだろう。
2014-08-16 16:10:12