アイヌ問題の現状

札幌市議の金子快之氏による「アイヌ民族なんて、いまはもういないんですよね。せいぜいアイヌ系日本人が良いところです」というツイートを発端として、アイヌ差別に対する問題意識が高まっています。そこで、アイヌおよびニブフ文化や言語の研究を専門とされている丹菊逸治先生による、アイヌ問題の現状についての一連のツイートや関連のやりとりをまとめました。なお、丹菊先生は北海道大学アイヌ・先住民研究センターに所属されていますが、ご自身のTwitterアカウントは非公式的なものであり、これらの発言は所属機関の公式見解ではありません。
33
前へ 1 ・・ 5 6 次へ
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 散発的な「混血」、つまり遠くから来た異民族の「客」が婿入りした場合の子どもたちの帰属についても決まっているのが普通である。これも別に不思議なルールではない。たいていは「育ち」が優先される。

2014-08-20 02:09:41
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku アイヌ民族の伝統的社会はアムールやサハリン北部の諸民族とは違って、双系制社会(祖母→母→娘→孫娘、祖父→父→息子→孫息子が両立している)だったから、対処方法も昔から違っていたはずだ。

2014-08-20 02:17:07
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku とはいえ、サハリンの事例などを見ると、異民族の男性と結婚した女性は、基本的にやはり出身共同体(いわゆる「実家」)の庇護下にあったことが分かる。だが、近代になって「差別」という要素が加わると、これらの仕組みは根底から揺るがされることになっただろう。

2014-08-20 02:21:58
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 現在のアイヌ民族のメンバーシップは、ものすごく簡単にいえば「異民族出身の配偶者はアイヌではないが、アイヌ共同体に加わりうる」「その間に生まれた子供たちはアイヌとして認められうる」というもの。さらに通常は「アイヌに育てられた人間はアイヌとして認められうる」。

2014-08-20 02:29:13
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku ようするに、現在のアイヌ協会の会員資格は実際のアイヌ民族のメンバーシップを反映したものなのだ。ただ、会員資格は「戸籍による証明」などが必要になる杓子定規なものだ。「民族」として受け入れられるかどうかは個々の事情による。昔は「戸籍」なんぞなかったのだから。

2014-08-20 02:38:54
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku アイヌ民族共同体は、当たり前だが今まで一度も消滅したことがない。つまり「お互いに誰がアイヌか知っている」ことが基礎になっている。そしてお互いの家系についても、ある程度の知識を有している。アイヌじゃない人間がアイヌだと主張しても無理なのだ。

2014-08-20 02:40:42
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku アイヌ民族同士は「戸籍による証明」なぞなくとも、お互いに誰がアイヌか知っている。だから、証明を必要とするアイヌ協会の会員資格のほうが、民族共同体内部の基準よりずっと厳しい。

2014-08-20 02:44:45
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 結局のところ、和人側による「誰がアイヌか分からない」という批判は、「嘘をついてる人がいても俺たちには確認できない」という意味なのだ。そういう意味では、現実の慣習的民族認定基準より厳しい協会員資格認定基準ぐらいでようやく許容できるものなのだろう。

2014-08-20 02:48:48
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku A民族がいるとする。彼らが隣接する大人口のB民族と継続的に結婚して、今では全員が元からみて「50%の混血」になったとする。「AA/BB」という状態から「AB/BB」という状態になったわけだ。だが、これで境界線があやふやになるかといえば、そんなことはないのだ。

2014-08-20 02:57:31
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 「AA/BB」→「AB/BB」という変化を見て、B民族は「B民族は変化していないのに、A民族は変化した」と思うだろう。あるいは「A民族はB民族に近づいた」と思うだろう。そして「境界線があいまいになった」と思うだろう。だが、A民族側からすればそうではない。

2014-08-20 03:05:34
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 外部から見ると変化していても、たいていの場合は本人たちにしてみれば変化していないのだ。同一性とはどちらかといえば、客観的なものではなく、主観的なものだからだ。

2014-08-20 03:11:26
丹菊逸治 @itangiku

「アイヌ利権」なるものが存在するのであれば、私も非常に興味がある。私だけでなく多くの関係者の注目を集めるだろう。過去の不正であれだけ痛い目に遭い、再発防止に努めているはずだが。もちろん、研究者が何でも知ってるわけではないから、事実が知りたい。他人事ながらドキドキして待っている。

2014-08-20 17:44:01
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 私自身が思い当たる「アイヌ利権」は、アイヌ文化関連事業でハコモノやクオリティの低い成果物が次々に作られている、という事実だ。以前はそこが問題にされていたのに、最近は追及がなくて残念だと思っていた。ハコモノつぶし、無駄な事業つぶし、大歓迎である。

2014-08-20 17:53:25
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 「アイヌの血が入ってないのに会員になれる」例といえば、アイヌ協会では、非アイヌでも配偶者が一代限りの会員になれる。これは「アイヌ民族ではなくとも配偶者であれば、アイヌ共同体に参加し同じ利益」というアイヌ民族の慣習的共通理解を反映したものといえる。

2014-08-20 18:22:20
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 配偶者など「非アイヌのアイヌ民族共同体への参加」には慣習的共通理解というルールがある。これは個人が変更できるものではない。私の知る限り、それらのルールに反する形で非アイヌが次々に会員になっている、という事実はないが、もしあるなら興味深いことだ。

2014-08-20 18:28:57
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku もちろん、万が一そういう事例があったからといって、研究者としては簡単にその扱いが「おかしい」と断ずることはできない。だが、一般向けには何らかの説明が必要になるかもしれない。

2014-08-20 18:37:30
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku なぜならば、日本のマジョリティである和人(大和民族)は血にもとづく民族観念を強固に持っているからだ。これはもちろん、他の民族とは必ずしも同じ基準ではないのだが。

2014-08-20 18:39:57
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 誤解を避けるために書いておくと、アイヌ民族の「民族」も基本的には「血」にもとづいている。多くの民族がそうであるように。だが、「血」の観念やそれを反映させるための仕組みは民族ごとに微妙に異なる。当たり前のことだ。「血」だって幻想なんだから。

2014-08-20 18:43:50
丹菊逸治 @itangiku

私はとぼけているのではない。私のような下っ端研究者が全てを知っているわけではない。事実があるなら知りたいのだ。

2014-08-20 18:56:12
丹菊逸治 @itangiku

小野寺道議はアイヌ文化活動家の不正告発だけでなく、かつて「和人業者の利権」の少なくとも一部に斬り込んだ。金子市議にも勇気を持って「和人業者の利権」に斬り込んでもらいたいのだ。大いに期待している。

2014-08-20 18:58:52
丹菊逸治 @itangiku

私は本当は「和人業者」といいたくない。出自がなんであろうと、問題は同じだからだ。だが「実際アイヌ関係だからアイヌ利権と呼ぶ」のであれば「実際和人の業者なんだから和人業者と呼ぶ」のが公平というものだろう。

2014-08-20 19:16:49
丹菊逸治 @itangiku

これだけ「敵に塩を送る」と私も周囲から何を言われるか分からない。だが、私は物事がちゃんと行われることが好きなのだ。好きなものはしょうがないだろ。

2014-08-20 19:27:36
丹菊逸治 @itangiku

基本書。小川正人『近代アイヌ教育制度史研究』 hup.gr.jp/modules/zox/in…

2014-08-20 20:16:52
丹菊逸治 @itangiku

基本書。山田伸一『近代北海道とアイヌ民族―狩猟規制と土地問題―』 hup.gr.jp/modules/zox/in…

2014-08-20 20:18:38
丹菊逸治 @itangiku

イチャルパ(先祖供養儀礼)などの伝統儀礼をするときに補助金を受けるか、判断が分かれるところだろう。もともと自腹でやってきたんだから、と補助金なしでやってる人たちもいる。だが、伝統儀礼には金がかかるんだし補助金はありがたいじゃないか、という考え方もある。それに、

2014-08-20 20:43:57
前へ 1 ・・ 5 6 次へ