- treeofevil
- 1276
- 0
- 0
- 0
「大義名分が馬鹿馬鹿しいのは、大昔からよ そんなモノのために、何百何千という人が命を懸けたり、私や何十人という人が生涯をそれに託したのよ だから、馬鹿馬鹿しくても、間違ってても、少しでも正しい結果が得られる方を、私は選ぶわ」 剣と盾を、しっかり構えて駈ける。
2014-08-19 12:07:48色欲の双眸が隠れた。いやその直前に人形に意識が逸れた。攻撃を警戒して禍罪を瞬時に発動させる。 足場を乱して投げナイフの軌道を不安定にするためだ。
2014-08-19 12:07:53「弱者は間違ってはいない。正しいともいえない。でも弱者の生活と心の平穏を守りたい ……あなたは人を背負った事がないかしら?この、人を背負う重責を知らないかしら。教えてあげたいわね この生まれ持った責務の!!人々の怨恨と歓喜を!纏めて担い」 足並みが遅くなっていく。
2014-08-19 12:07:57「いいえ、私は担いきれなかったわ。そう、確か……失脚して」 神託政治の汚濁に、それと思い出せない『何か』によって失脚した。 「それでも!私はあの人々を、全ての民を背負った『重み』を、忘れたりなんかしない。今後、ずっとよ」 また、足が早くなる。
2014-08-19 12:08:03「あなたも私も我儘、そうそれでいい。この場に本当に清らかで正しい人なんていない でも、互いにとってどちらも悪なら、殺し合うしかないじゃない! あなたは初めて会った男だけど!私にとって大嫌いな最低の、人ですらない化け物よ」 こんな悪態をつく自分が、清らかははずがない。
2014-08-19 12:08:29だから、きっともうこれは、嫌い嫌いと言い合ってるだけの、互いを嫌悪するものによる、私闘なんだろうな……なんとなく、そう思った。
2014-08-19 12:08:34「人を背負うなんて、ごめんだね」 嘲る様に、『色欲』が笑う。その瞬間、ぐらり、と足元が揺らいだ。 「…っ、」 急に床が抜ける様な、いきなり泥濘にはまった様な、そんな足の浮遊感。 反射的に手を伸ばし、その先に新たなブランコを生み出した。
2014-08-19 14:31:32なんとかそれに捕まり、大きくそれを漕ぎだせば、キシリと天井が軽く軋む音がする。 彼女の今の目線は、恐らくこのブランコだ。 また足場を崩されてはたまらないと、大きくブランコが振り切れた所でその手を素早く離し、落ちていく中でボールを一つ、自分の落ちる方向とは真逆に放った。
2014-08-19 14:32:13…これで彼女の上手く意識が向こうに逸れればいいが。 身体をぐるりと一回転、落下の衝撃を和らげようと速度を落とし地に足をつけようと体制を整える。 「…君みたいなたった一人の人間に、誰が大事な自分の命を背負わせるもんか」
2014-08-19 14:34:53ボールに視線が合わさり、誘導される。 やはり、間違いない。色欲の本体から意識を外す、心理作用の禍罪だ。 ボールが飛んできた方角に盾を構えて屈む。 ボールを投げる動作を色欲がとったのであれば、その方角からナイフを投げてくるはず。
2014-08-19 15:09:59「命を誰かが預けてくれたかどうかは、思い出せない。だから、きっとあなたに勝っても負けても、私は苦しむわ 結果として、私は何もなしていないまま屋敷に来た。期待に沿えなかったという事実は、変わらないから」 深呼吸を、一つ。虚をつかれないようにと緊張状態だ。
2014-08-19 15:10:05(手詰まり、ね。このまま距離を取られ続けると、決着がつかない こっちの緊張から来る集中力が切れた瞬間に、決着って結果も十分ありえるわ) 少し後方にカラクリがあるのは気づいていたが、どれだけ効果があるか分からない。 だが、距離を詰めないことには可能性すら生まれない。
2014-08-19 15:10:09天井を向いていた赤色の光を天井に放っている照明演出器具(カラクリ)を蹴り飛ばして色欲に向ける。 この明るさに眩んでくれるかは分からないが、カラクリを蹴り飛ばした瞬間から駈け始めて接近を行った。
2014-08-19 15:10:12光光、光、『濁った溝水の様な 色』をした、ひかり。 「………っあぁああ!」 掠れた悲鳴をあげ、目を覆う。仮面の下に潜む彼の目を覆ったのは、焼ける様な激痛だった。
2014-08-19 15:41:48ーー眩しい、いたい、痛いまぶしい、痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたい!! ーーなんで、なんでだ。 ーーこいつまさか、僕の『目』の事を知っているのか。
2014-08-19 15:42:59常人とは違う彼の瞳、その事が相手に知れてしまったのかと『色欲』はたじろいだ。 けれど、知られたとして、このまま目の事を確信されてはまずい。誤魔化さなければ。誤魔化せ。誤魔化せ。
2014-08-19 15:43:33痛みを堪えて目を見開く。 予想以上に接近していた相手の目の前でまた一つ、ボールを生み出し、真横に大きく放つ。 ここまで近づかれたなら、仕掛けるしかない。大振りのナイフを手に、勢いのままに突っ込んだ。
2014-08-19 15:43:57双眸から意識が逸れた。瞬時に禍罪を発動させて、盾を色欲が居た位置に構えた。 横を向いていく無神論の顔。重い衝撃が盾を通して左腕の傷口に伝わる。 「あぐぁぁぁっ……!」 片足を半歩退く。
2014-08-19 16:14:46(骨までいってたか、さっきのナイフ) いまさら傷の深さを自覚しつつ、盾を取り落とした。 そして無神論の意識は色欲本体に戻る。 ――つま先が触れ合うほどの距離。 (位転位[コモン・クイーン]――――ッ) この一撃、この一撃のために剣の柄尻を双頭槌にしてある!!
2014-08-19 16:14:50無神論はこの技を熟知している。『コモン・クイーン』。足場を乱す禍罪である、『喪地』の唯一の応用技であり、互いのつま先が触れ合うほどの距離でようやく成功する。その過程は、相手と無神論の足場を回転するように乱す。すなわち、向きをそのままに、位置を入れ替えるのだ。
2014-08-19 16:14:53そして、成功した際に発生する背中合わせの状態から、剣を後ろに振り抜けば、振り返りざまに剣の柄尻にある双頭槌のハンマーが相手の頭に激突する。その修練は欠かさなかった。 コモン・クイーンの成功を可否を確認する間もなく、最速で、全体重を乗せたハンマーを振りぬく。
2014-08-19 16:14:56もっとも、ここで失敗していれば、まさに敵前であらぬ方向を向き体重を乗せた空振りを演じるのだ。 成功するか分からない以上、この勝負は五分の賭けであった!
2014-08-19 16:15:00振るった筈のナイフの感触は、『なかった』。 ――まさか、あの距離で空ぶったのか…! 瞬発的にぐるりと体を捻り、背後の敵へと片腕を大きく振り上げようとした。 …その行動が吉となったのか、それとも凶となったのか。瞬間に『色欲』の耳に響いたのは、ごぎり、と何かが抉れ、潰れる音だった。
2014-08-19 17:26:58――あれ、なんだ、これ。 彼女の振るう剣の柄尻にあった槌。力強く振るわれたソレに喰われ、トマトの様にその身を弾けさせたのは、振り上げようとした腕、その肩口だった。 びくり、と全身の筋肉が痙攣し、最早痛みとも言えない強烈な刺激が彼の脳を支配し始める。
2014-08-19 17:27:30