【邪悪の樹】決闘フェイズ――神の樹

『智の剣』陣営『残酷』(@Akzeriyyuth_mm) 『理の盃』陣営『無感動』(@Az2_ady
0
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

まず目に入ったのは、奥にある大きなステンドグラス。 大理石でできたであろう床、何本もの柱、天井には細かい彫刻が成されている。 教会――…大聖堂、堂内。 ――扉の閉まる、重い音。 振り返ってみると、そこには荘厳で重々しい雰囲気を放つ、大きな扉。

2014-08-29 18:04:20
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

開けたときは木の扉だったのに、こちらへ来てみれば大聖堂の扉と化していただなんて…やはりこの空間は理解できない。 真っ直ぐ奥へと進む。 身廊には椅子も何もない。 コツ、コツと歩む音が聖堂全体に響く。 そして壇上に昇り、大きなステンドグラスの前へ。 本来ここは神聖なる場所、神の御所。

2014-08-29 18:04:55
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

――だが、ここにはその彫像も十字架もない。 ステンドグラスに描かれているのも、一つの大きな樹だった。 まるで自身が神の彫像になったかのようにそこに立ち、瞼を伏せ、そのステンドグラスから溢れる光を浴びる。 …どこか、懐かしい。 一時の静寂――…彼女は口を開き、聖なる歌を紡ぐ。

2014-08-29 18:05:09
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

――…Or if on joyful wing, cleaving the sky Sun, moon, and stars forget, Upward I fly, Still all my song shall be――… その時、鐘が鳴った。

2014-08-29 18:05:23
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

がらん、がらん、と鐘が鳴っている。扉を越えてやってきたところは、おとぎ話の王子様とお姫様が結婚式をあげそうな場所、だった。残念ながら少女にはそこが教会であるという知識はなく、ただそういった印象のみを受ける。 「すごーいすごーい!えほんのなかみたい!」 目はきらきら。胸はわくわく。

2014-08-29 18:34:51
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

ステンドグラスは見たことのない色のついた光を零していた。それがなおさら、少女の胸を躍らせる。ステンドグラスの下に、なんだか見覚えのある人が立っている。 「……アディおねえちゃん?」 祈っているように見えるその背に、問いかけ。

2014-08-29 18:35:00
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

どこか懐かしい声。 …でもそれは裏切りの声。 「…【残酷】」 振り向きその姿を確認する。 向けるのは共に屋敷でいた頃には見せなかったほどの、冷たい瞳。 「【不安定】と【無神論】は元気でしたか?」 少女からは彼女の表情は逆光で見えない。 しかしその声はその目と同じように冷たかった。

2014-08-29 19:50:57
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

もはや仲間としてみなされていないとわかる冷たい態度を察したのは、少女ではなくその周りにいるぬいぐるみたちだった。少女のスカートの裾から下りて、無機質な釦の目を爛々と輝かせながら、女を見返す。 「んーとね、イーアおねえちゃんは、おひめさまみたいでげんきだよ!」

2014-08-29 20:09:07
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

「バチカルおねえちゃんはかえってないの?カイのおうちにはいなかったよ」 それが、何を意味しているか。少女が察せないのは、無知にしては異様すぎた。 「アディおねえちゃん、エルね、ケーキがたべたい。おやしきにかえったら、ケーキたべられるかなあ」 呑気に、そんなことをのたまっている。

2014-08-29 20:09:12
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

「…そう。」 声色は変えず。 コツ、コツ、と少女に向けて歩みを進める。 「ケーキですか。いいですね…私は先程パイを作って食べましたよ。」 ちらりと少女の周りに目を向ける。 彼女を守るかのようにぬいぐるみ達がこちらを警戒している。

2014-08-29 20:33:51
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

「どうせなら、貴方の分も作って持ってきたらよかったかもしれませんね。」 他愛もない会話。 ――コツン、 少女の前で、その足を止めて。 「ねぇ、エル。」 思えば初めて彼女の言う『名』を口にした。

2014-08-29 20:34:11
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

「うさぎのぬいぐるみ、もう一度抱きたいの。」 少女に向けて両手を差し出す。 「エルは大人、なんですよね?」 こてり、と首を傾げ。 その少女の背に、氷の小さな刃が静かに形成されていく。

2014-08-29 20:34:24
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

「パイ!パイもいいなあ!エル、りんごのパイがすき!」 少女は無邪気に、何の裏もなく笑う。 「みんなでたべたの?ずるいよぉ。パイたべられたなら、エルちゃんとかえったのに」 純真に。一切の疑惑を持たず。 目の前まで迫った「おねえちゃん」を見上げる。

2014-08-29 21:59:03
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

「エルのうさぎ?もーいっかい?……なんで?」 少女のきらきらしい笑顔が、ここで初めて怪訝に陰った。きつねの「せんせい」が、少女のスカートの裾を必死に引っ張っている。 「…………おねえちゃん?」

2014-08-29 21:59:06
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

「…貸してくれないの?」 手は差し出したまま。 ひとつ、またひとつと彼女の背後に氷の刃。 「…ねぇ。」 まっすぐ少女の瞳を見つめる。 「エルは…私に、いじわるするの?」 冷たく、冷たく、氷のように。

2014-08-29 22:29:07
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

「いじわるなんてしないよ」 子供らしい元気いっぱいだった声が、静かになる。 「いじわるなのはおねえちゃんだよ」 犬が、猫が、きつねが、クマが、少女が引き連れたぬいぐるみたちが、跳ねた。 「なんでやさしいおねえちゃんのふりするの?」

2014-08-29 22:49:40
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

「…ふり?」 ひらりと少女から距離を置き、元のステンドグラスの前。 「優しいふりなんてしてませんよ。ただ…」 少女の背後に控えさせていた氷刃はぬいぐるみ達に向け。 「そんなに大事そうにしているから、潰してあげようとしてあげただけです。」 そうした方が、貴方は私を恨むと思ったから。

2014-08-29 23:13:52
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

「――…裏切り者の【残酷】。」 スッと右手を空に掲げる。 ――聖堂が、凍る。吐く息が白くなるほど凍てつく聖堂。 そして少女の周りには鋭い氷の刃。 「ここは神の御前――…裁きを、受けなさい。」 ――…振り下ろす。 無数の凍てついた刃が少女に向かう。

2014-08-29 23:14:55
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

びしびしびしっ。柔らかい綿の詰まったぬいぐるみたちのお腹に、少女の背にあった氷刃が突き刺さる。ぽとぽと落ちたぬいぐるみは、刃を腹に突き立てたまま再び立ち上がる。 「なんで?なんでうさぎさんをつぶしちゃうの?おねえちゃんがたおさなくちゃならないのはエルでしょ」

2014-08-30 00:30:05
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

今更ながら手紙の内容を思い出した少女はそう独り言ちる。 「うらぎりってなに?エル、こんなことされなきゃいけないことしたの?カイのおうちにあそびにいっただけだよ?おともだちのおうちにあそびにいくのは、そんなに」 わるいことなの。続けようとして、息が詰まった。 ぬいぐるみが跳ねる。

2014-08-30 00:30:16
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

刃はぬいぐるみたちに突き刺さり、ぬいぐるみの手の届かなかった刃は少女の衣服を、皮膚を、切り裂く。 「いたい、」 そうだ、勝手に「部屋」から出たときもこんな風に叱られた。頬を叩かれて、頭を叩かれて、お父さんもお母さんも怒り狂った。 「おうち」から出てはいけなかったのだ。

2014-08-30 00:30:25
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

「おうち」から出たエルをこうやって叱る。おねえちゃんも、お父さんやお母さんと、おんなじだ。 「やだ、やだ。やだやだやだやだ」 うさぎがひしゃげる。 「『おうち』にかえるのはいや。いたいのもいや。しんじゃうのもいや!エルはいや!いやなの!エルはしにたくないの!」

2014-08-30 00:30:34
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

全身に氷の刃を刺さらせたまま、ぬいぐるみたちはいつの間にかカッターナイフや包丁を握っていた。綿を撒き散らして、犬と猫が先陣を切って駆け寄り飛び跳ねて、カッターナイフを振り下ろす。追従してきつねとクマが、包丁の刃を無感動の腹に向かって突き出した。

2014-08-30 00:30:48
【愚鈍】雪 @Setsu_MM

「エルはしにたくないんだから、おねえちゃんがしんでよ!」

2014-08-30 00:31:39
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

「あれもこれも嫌だ嫌だと、わがままな子。」 犬と猫を避け、そのまま氷刃で追撃、壁へと貼り付ける。 残り二つは流石に避けきれない。 腹に食らうよりかは、と両手でその包丁を掴む。 ――赤い血が、滴る。 「…コレ、邪魔ですね。」 包丁ごとそのままぬいぐるみを氷漬けにして…落とす。

2014-08-30 01:25:44
1 ・・ 4 次へ