日本の農業を取り巻く環境

今後、日本はどのような環境におかれるのか。まずはその条件を列挙し、考える材料を提供する目的でまとめてみた。
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shinshinohara @ShinShinohara

農作物は食の原材料だから、作って売るだけではネットワークの末端に位置してしまい、買い叩かれやすい。何らかの方法でネットワークの結節点になる必要がある。それは「親愛」「愛着」の結節点でもよい。情報発信し、情報の結節点でもよい。 pic.twitter.com/d3sgG7q9fR

2014-08-07 15:29:20
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養豚農家でイベントを開催し、会員に家族でバーベキューを楽しんでもらったりするところがある。「家族の楽しみ」「交流の場としての楽しみ」という結節点となっている。だから割高でも人が集まる。結節点の作り方は様々だ。 pic.twitter.com/Bix2pIBV9X

2014-08-07 15:34:32
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日本の農産物価格の形成を振り返ってみる。まずは戦前。農家はみな貧しかった。大きな要因として、納税がコメの現物納から現金での金納に変わった、地租改正がある。販売のノウハウがない小農は買い叩かれるばかりで生活向上は望めなかった。 pic.twitter.com/ZzUFdL18gK

2014-08-07 15:51:21
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地租改正はコメ販売のノウハウをもつ地主に特権を与えた。小作人はコメを地主に小作料として現物納して、販売の手間を省略できる代わり、手元にコメが残らないほど搾り取られた。地主は確実に利益が手元に残るようにしたので、格差は拡大した。 pic.twitter.com/F3v0Xj2ueE

2014-08-11 22:50:43
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小作料と納税の差額を利益として確実に手元に残せる地主と、困窮する小作人の格差は拡大。有り余る金で地元から離れ、都会に移住し不在地主、寄生地主化すると、小作人は「小作料を搾り取る対象」でしかなくなった。 pic.twitter.com/PLKmPdl8Xs

2014-08-11 22:57:18
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不在地主、寄生地主が容赦なく小作人から搾り取り、多くの農民を苦しめる問題は、当時の農商務省の官僚たちにとっても頭の痛い問題であり、解決を探っていたが、戦前の社会体制ではいかんともし難い。しかし一気に解決する好機が訪れた。敗戦だ。 pic.twitter.com/tGv9hLIaHC

2014-08-11 23:00:56
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農商務省はかねてから温めてきた改革案をGHQによる「外圧」を利用して実現しようと画策。農地解放が実現した。GHQによる指令の体裁だが、実際には戦前から小作人の困窮を救いたいと願っていた、農商務省の官僚たちによる努力によるものだった。 pic.twitter.com/0N3Jn8kGNh

2014-08-11 23:07:28
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多くが自作農に変わると、戦前の反省から「種子や肥料の購買、コメの販売は農家自身が実権を握らねば」と、農協が結成された。肥料や種子は大量に安く仕入れ、コメは国と対峙して高く買い取らせる。農家に利益が残るようにした。 pic.twitter.com/DIZHQqDoCS

2014-08-11 23:12:53
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農協の誕生は、買い叩かれるばかりで価格決定権を持っていなかった農家を、肥料や種子を買い叩き、コメを高く売ることのできる、価格決定権を主導する存在に変えた。日本国民が総じて豊かな生活を送れるようにする上で、農協の貢献は大きかった。 pic.twitter.com/GXNjjNqkAS

2014-08-11 23:15:39
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しかし農協が大活躍したのは「量の時代」。コメの量さえ確保すればよかった時代から、昭和40年代には「うまいコメ」という「質の時代」に変わっていった。時代が変わったにもかかわらず、農協は量の時代の販売戦略しか持ち得なかった。 pic.twitter.com/diiuen7es5

2014-08-11 23:19:25
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腕の良い農家のコメもそうでない農家のコメも混ぜて同じ値段で売ってしまうやり方では、もはや消費者は満足しなくなっていた。もし農協が「質の時代」に対応したシステムに変換できていたら、今のように批判を浴びずに済んだろう。 pic.twitter.com/n3syygoCRg

2014-08-11 23:22:10
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では農協が解体されるとどうなるだろうか。農業全体をカバーできる新たな団体が生まれない場合、農家は戦前と同じように、買い叩かれる存在になりかねない。大手小売業に価格決定権が移り、バラバラになった農家は各個撃破されるだろう。 pic.twitter.com/PBQ1sRA887

2014-08-13 18:03:44
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農協は衰えたりといえども半分程度のコメの流通を押さえている。大手小売業が安く仕入れたいと考えても、量を確保しようとすると農協の意向を無視できない。コメの価格をある程度維持し、農家の手取りが増えるようにする農協の力は侮れなかった。 pic.twitter.com/JjJqesoDCw

2014-08-13 18:11:36
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しかし農協が解体され、各個バラバラの地域農協になってしまうと、主導権は大手小売業に移るおそれがある。「この値段がいやなら、よそで買うからいいよ」と、価格決定権が小売業に移ってしまう。競争で農家は疲弊するかもしれない。 pic.twitter.com/qN1Vw00ZyE

2014-08-13 18:14:00
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これまで農協から距離を置き、高付加価値路線でがんばってきた農家にも影響が出るだろう。農協という組織が農産物価格の底上げをしていたから、農協より品質がよければさらに利益を上乗せして売れた。しかし農協が弱体化すると底が抜ける。 pic.twitter.com/8J2Z7AtmB3

2014-08-13 18:16:35
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コメの価格の底が抜けると、コメ以外の高付加価値で売れていたものまで連れ安になるだろう。コメのような基礎食料が安くなると安い賃金でも生活する人が増え、賃金低下を招き、結果として消費者の購買力が低下するからだ。 pic.twitter.com/fKknbBbnBS

2014-08-14 23:48:29
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農協が弱体化すればTPPに反対する勢力も弱体化し、実現する可能性が高まる。TPPがひどい形で実現すると小麦など基礎食料が関税なしに入ってくる。100円だったパンは30円になり、パン食に移行する人が増えればコメを食う人も減る。 pic.twitter.com/8oYVtoXGfF

2014-08-14 23:51:50
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コメの需要が減ればコメの価格も下落する。TPPで小麦の輸入が自由化されればコメなどの基礎食料が下落し、最低賃金の下落圧力も強まる。1ヶ月3万円もあり得る。結果として日本人全体の購買力が下がる。それがまた農作物の価格を押し下げる。 pic.twitter.com/D4NSxCEa7d

2014-08-15 00:02:58
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農協が崩壊し、それに代替する団体が登場しないのであれば、いかに小規模団体が差別化販売を目指しても農業が政治を動かす力は減退、他産業に荒らされ、安値競争にも耐えきれる大規模農業だけが生き残るだろう。そうなれば「荘園化」が始まる。 pic.twitter.com/i55K2V2wZ1

2014-08-26 18:24:35
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実は平安時代と現代は似通っている。班田収受法で公平に口分田を耕させようとしたのは、戦後の農地解放で小作人が自作農化したのと似ている。そして約60年が経過して、耕作放棄地が目立ち始め、制度疲労を起こし始めた時期も似ている。 pic.twitter.com/4Viv6w4dFL

2014-08-26 18:31:26
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耕作放棄地を取り込む形で大規模営農する荘園が発達。さらに藤原摂関家など貴族に名目上の寄進をし、守ってもらうと同時に政治力を強めた。現代の大規模法人がイーオンなど流通大手と提携し存在感を高めるのと同じ。大企業はかつての貴族の機能。 pic.twitter.com/7yvr0bCdN2

2014-08-26 18:38:25
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荘園には田堵(たと)と呼ばれる人が現場で活躍し、荘園を経営。大規模化を進める担い手農家と呼ばれる人たちは現代の田堵。田堵は周辺で生まれる軋轢を減らすため、藤原摂関家に寄進して発言力を強めた。今後、担い手農家も同様の動きを始めるだろう。 pic.twitter.com/1BrjRb4yyQ

2014-08-26 18:42:58
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このように述べると、国内農業を食い物にする他産業はけしからんと思えるが、話は単純ではない。工業をはじめとする他産業にも頑張ってもらわなければ日本の存立は危うい。国内の農業だけでは全国民を養えず、海外から相当量輸入せねばならないからだ。 pic.twitter.com/BqfYuoMZdt

2014-08-26 18:47:08
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今後も、貿易などで儲けた利益で海外からの食糧を買い付けなければ国民は餓死してしまう。しかし貿易赤字は慢性科、経常赤字も昨年後半、そして今年前半と続いた。この状態が続けば、海外から足りない分の食糧を買い付けることができなくなる。 pic.twitter.com/jepL6fSttp

2014-08-26 18:50:43
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今の日本は、かつて繁栄を誇った電子産業も弱体化し、貿易黒字を出せなくなった。工場の海外移転が進み、産業空洞化が進む一方。世界から稼ぎ出せる産業が生み出せなければ、それは日本国民の餓死を意味する。食糧を輸入できなくなるからだ。 pic.twitter.com/2CAaJY4cpD

2014-08-26 18:53:35
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