対空射撃基礎講座
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第四航空戦隊の報告を読むと昭和20年に編纂された指揮官参考書と同様に敵機の攻撃はこちらの直掩機の有無、防御砲火の激しさによって攻撃のパターンを変えてくる。特に小沢艦隊においては空母を保有していたことから敵機も当初は直掩機の存在を警戒していたが、
2015-09-24 12:39:23直掩機の存在を確認できず、また空母を撃沈したことで脅威となるものが上空に存在しないとなると攻撃も大胆かつ勇敢に攻撃を仕掛けてくることがわかっている。相手を弱いと見ればこれに殺到し、強いと見れば距離を置く。まさしく指揮官参考書にある米軍機の戦法である。
2015-09-24 12:43:20マリアナ沖海戦時の利根対空戦闘実施経過を図にしたもの。対空戦闘時の砲戦距離の参考に。 pic.twitter.com/1ZxWhdCA44
2015-09-24 16:00:35B29に対する陸軍高射砲部隊の話でよくあるのが有効射高以上を飛んでいるにも関わらず当たらないのに撃っていたという類の話であるが、中隊長等はそんなの承知して撃たせていたところはある。B29に有効な射弾を送れなくても投下する焼夷弾や爆弾を照準してこれを空中爆破する目的もあったからね。
2016-01-29 15:29:08そういうところまでちゃんと調べないと、何故B29に届きもしないのに頑張って撃っていたのかということを理解できない。もちろん中には当たらなくても撃たなければと射撃した部隊もあるのも事実だ。
2016-01-29 15:35:26陸軍の高射砲射撃においては射表等にある弾道側視図の約2/3が有効制空高度と言われている。それを示した当時の図がこれである。 pic.twitter.com/r40CoTKRwk
2016-01-29 15:56:17航空機の速度は非常に高速であり、これを照準し、弾丸を装填、発射し、さらに目標に命中するまでの経過時間を総合するとかなりの時間を要する。弾丸の最高点に達する経過秒時も数十秒と長く、この間の目標の移動距離を考えると先図のB空域では範囲が狭く追随射撃は無理である。
2016-01-29 16:03:16そのことからも考えていくと追随射撃ができる範囲というのがA空域ということになり、これが有効威力圏、すなわち有効制空高度となる。そしてその数値は概ね最大射高の2/3とするのが妥当となってくる。
2016-01-29 16:06:23ボ式40mm高射機関砲の例を使って正しい照準方法を紹介する。図は対物環と呼ぶ照星環で、二目標があるのが確認できる。これに接眼環呼ばれる照門とを合わせて目標の照準を行う。 pic.twitter.com/UKh29Yklly
2016-01-30 22:15:58図を見ればわかるように対物環には400km/hの外側の円と200km/hの内側の円環でそれぞれ構成されている。豪軍使用のものと違う点は内側の円環が、豪軍のものは無く、上下二か所に黒点があってこれが内側の円環を示す。では早速図にある二目標に対して正しい照準要領を示していく。
2016-01-30 22:21:42それぞれを照準した状態の図である。説明する必要もないが、目標の航速(的速)及びその航路(針路)を見て、対物環の中心に目標が来るように接眼環の十字中央を合わせるようにして照準する。 pic.twitter.com/COe2AY8f2I
2016-01-30 22:26:32照門が25mm機銃の角度式照準器に使用されているようなただの円環だった場合も一緒で図の要領で照準すれば良い。茂木大尉が照準でいつも言われる「見たままの角度」というのがまさにこれである。非常に単純な話。 pic.twitter.com/el7o2W72XB
2016-01-30 22:30:51これが豪軍のボフォース40mm機関砲の訓練映像のものだが。見て分かるようにこの状態の照準は正しくはない。なぜなら目標の航路角がこの段階では決めていないからだ。 pic.twitter.com/X1qFMwx2hD
2016-01-30 22:41:03そして目標の航路角を決め、なおかつ航速も合わせたこの状態で初めて正しい照準状態となる。 pic.twitter.com/r0b8J5H5Dz
2016-01-30 22:44:19環型照準器の照準要領で一番難しいのが目標の速度判定。これについては日頃より訓練等で身に着けるしかない。実戦になると発射時の閃光や発射煙、射撃の振動によって目標を見失うことが非常に多い。そのため日本海軍では今の目標との関係速度を維持したまま追従する想像照準という照準方法を行っていた
2016-01-30 22:52:49合せて、機銃射撃の極致として環型照準器が無くとも瞬時に適切な的針、的速の判定が行えるまでの練度が望まれた。しかしながら茂木大尉考案の効果的な角度照準器、に新射法及び訓練方法が末端まで浸透しなかったことからこの極致に達したものはほんの一握りしかいなかった。その原因は言うまでもない
2016-01-30 22:56:29また実戦では先にも述べたように発射煙や硝煙、至近弾による爆炎、水柱によって目標を環型で捉えることができない場合には曳光弾の弾道を以て行う従来通りの射法も併用された。
2016-01-30 22:59:04高射砲というのは口径が増大するにつれ有効威力圏及び弾丸威力を増大し、逆に発射速度と機動性を減ずる特性がある。合わせて電気式照準算定具を付加することで射撃精度が増す。電波標定機は不可視目標を射撃するのに適し、中央指揮具を装備する大隊は火力集中が容易になるというと特性がある。
2016-01-31 11:12:28日本陸軍において聴測射撃を制式に認めたのが大正14年の高射砲隊教練規定案からで、まだこの頃の聴音機は試製の域を出ず、昭和3年になって九〇式空中聴音機大及び小が制式採用された。
2016-01-31 12:08:20WW1の時は聴音機の精度も不十分であったため弾幕射撃が行われた。日本においても当初同様の弾幕射撃が検討されたが編成部隊数、高射砲数が少なく、また弾薬補給の点でも弾幕射撃に向かず、聴測射撃とはいえ目標を追随して阻止するという移動阻止射撃をとった。
2016-01-31 12:13:01特殊な事例としては馬来クアランプールにおいて、夜間に照空隊の協力がなく、また聴音機も使えない状況から肉耳すなわち直接目標の飛行音を聴いて阻止射撃を行い、数機を撃墜した例がある。他には静岡防空隊が同様の射撃でB291機を撃墜している。しかしながらこのような例は非常に稀である。
2016-01-31 12:19:05固定阻止射撃については、先に示した肉耳もしくは勘による固定阻止の他にもいくつか存在する。1、全戦域における鉄道橋援護。2、夜間照明弾を投下して爆撃する敵に対して。3、敵が機上レーダーを使用して雲上より爆撃を行ってくる場合。
2016-01-31 12:31:444、船舶防空隊が敵の雷爆撃機の投弾前までに観測射撃を行う暇がない場合。5、夜間又は雲上より船舶を攻撃する敵に対してそれぞれ固定阻止射撃がとられる。
2016-01-31 12:33:06しかしながら高射砲の射撃については操典第354にもある「高射砲兵ノ射撃ハ昼夜問ハズ観測射撃ヲ行フヲ本則トス」を原則とし、射撃にあたっては所要の火力を集中させてこれを「撃墜」することを目的としている。
2016-01-31 12:40:14