「詩のレシピ」 pwGT組&現代詩手帖共同企画 個人の繋がり

2014.9月21日~10月5日「詩のレシピ」pwGT組&現代詩手帖共同企画に参加しました。個人の連詩をまとめました。しゆう詩50篇。
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春森しゆう @junju_usako

大雪の重さに負けたビニルハウス。 凍えた苺がもとに戻れない。 棚の葡萄が棚ごと倒れた。 実をつけるまで何年もかかる。 高騰、高騰、 あぁ、雪を 食べようか。 秋にすでに凍えた指先。 (詩のレシピ10) #pwGT組

2014-09-30 13:00:04
春森しゆう @junju_usako

集まれば昔の話になる。山の中の蕎麦屋の味の濃さ。大きな川の簗の鮎。釣り堀の虹鱒の炭火焼き。車三台での遠出。振り返って手を振れば、笑顔の従兄弟たち。道に迷って広げたシートの、お弁当。三世代の手の形。減ってもまた増えていく顔、声、思い出の味。 (詩のレシピ10)#pwGT組

2014-09-30 19:22:00
落葉[Rakuyou] @a_fallen_leave

代金は覚えていない 笑顔に誘われて小話をした この先に目的地は在る 良い思い出になるだろうか いつの間にか隠れた太陽は再び道を照らし出す 小さな黒い影が横切り 目で追いかけた 餌を目の前に綺麗な灰色の猫が顔を洗っている 気分も洗われた様だ (詩のレシピ10) #pwGT組

2014-09-30 10:27:51
宮尾節子*新刊『明日戦争がはじまる 対話篇』好評発売中です。 @sechanco

いけ が一つあったのよバス停の睫ヶ下に 青物狙いの朝まづめ アタリとアワセを 身体で 覚えた ほか 物も知らない 食えるか の問いがノウゼンカズラを昇って逝った夏 (父さん) なってない答えは末尾へ つづく きれいに洗ったらコスモスが 挿せる (詩のレシピ11)#pwGT組

2014-10-01 05:43:15
春森しゆう @junju_usako

しまいこんだ花器が泣いている。 顔だけ飾る洋花と 髪まで生える和のものと 派などいらない生き方で 自分がきれいと思えればいい。 挿した花、 どんどん抜かれて 雲のもと。 (詩のレシピ11)#pwGT組

2014-10-01 07:41:16
春森しゆう @junju_usako

竈にくべても燃えないナナカマドが 山にいながら燃えている。 釣れた魚の針を抜いてくれた人が いなくなってから 魚は狭いなかを泳いだまま。 お湯は黙って湧いているだろう。 紅い鳥居が夢にみえた。 (詩のレシピ11) #pwGT組

2014-10-01 08:40:46
春森しゆう @junju_usako

眺められるだけのニシキゴイと 河を上るコイと どちらが幸せですか。 どちらにもなれないで どちらともになれない。 突然変異の色つきが愛玩される。 色が欲しくて自分で塗る しか、ない。 食べられない、しね。 あう水槽を探す。 (詩のレシピ11) #pwGT組

2014-10-01 16:47:36
春森しゆう @junju_usako

怒られたかったのかもしれない。 もう怒る人がいないから。 優しくするしか、できなかった。 もう嫌う人がいないから。 遡るほどに母になりたい。 卵から抱きたい。 すべてが生にはならない。 すべてが正にもなれない。 海のなかの針の穴。 (詩のレシピ11) #pwGT組

2014-10-01 20:53:04
梁川梨里(やながわりり) @riri_yanagawa

前頭葉が蔓を巻き 螺旋階段を駆け上る 足の裏がきれい かばかりが気になって、しかたない 背中に書かれた、わたしの名前 がしりたい 頭上から見下ろすあまたの魂 が雪崩のように送る電波信号 を幼いシナプスと第七感覚 がキャッチ出来ますように (詩のレシピ11)#pwGT組

2014-10-01 17:54:22
バンバサナエ @tombolo2010

シに名前をつける。星のように。名づけることは見つけること。彼岸花には千の名、千の貌。アイヌ語でシは「真の、本当の」の意と知里真志保の辞典にある。鮭はシペ=本当の食物。溯河魚へのアイヌのまなざし、畏敬と謝意が表れた名だ。シは食えない? シペは美味し!(詩のレシピ12)#pwGT組

2014-10-02 03:15:14
春森しゆう @junju_usako

名前がすでに愛ですと、何度も何度も名前を呼ぶ。 つけた名で振り向く猫の、尻尾を振るのが返事。 この花はなあに。 教えてくれた人にも知らない名があることの安堵。 雨にも月にも名をあげる人びと。 唯一の名を呼ばれたい。 (詩のレシピ12)#pwGT組

2014-10-02 09:54:21
春森しゆう @junju_usako

繋がれた名前が途絶える。 名のために生きなくていいと。 つかめない雲を食べている。 て、あし、くち、みみ、 教える名がない。 洗えば、抱く、タオルケットの、柔らかさを見ている。 愛おしくて触れられない名。 「これ、なあに」 (詩のレシピ12)#pwGT組

2014-10-02 10:02:55
春森しゆう @junju_usako

どこにでも咲いている花。 摘まれて摘まれて弾かれて、帰り道の鉄砲玉。 貧乏草と呼ばれても、最後に残ったものの勝ち。 赤いランドセルに、挿したもの。 見下ろす背丈になった。 姫女苑、 きれいな名で 咲ける場所が限られていく。 (詩のレシピ12)#pwGT組

2014-10-02 16:59:47
春森しゆう @junju_usako

シの音からはじまる曲が好きで たくさん弾いていた。 曲名は忘れてしまったけれど、指が憶えている。 陰と書いて陽と読むひとに 本当の名前で呼んでほしい。 シがシャープになっていく。 西からの風が温かい。 削いで削いで残る糸を 紡ぎつづけている。 (詩のレシピ12)#pwGT組

2014-10-02 18:39:25
春森しゆう @junju_usako

線と線で繋がれた 触れない世界が いっせいに飛びたとうとする。 すぐには開けない翼。 ぎゅうと、握った拳の熱に ルビーが光る。 震える心臓を晒すのは 深い深い海の底の真。 万人にいかない絵にひまわりが12本並ぶ。 (詩のレシピ12)#pwGT組

2014-10-02 20:52:27
加藤生物 加藤明日花 @katouseibu

混雑している 心に多数の虫食いを見つけ、私は殺虫剤を撒かれる。、いらない。淵に立たされた。夜に迷う影。吐露が耳を横切り、旅先のコンパスが盗まれる。 「私の復興」に顔を埋める、私の故郷を人は笑った。 (詩のレシピ12)#pwGT組

2014-10-02 11:18:30
カニエ・ナハ @naha_kanie

(人の國の牛馬淋しや秋の風 蛇笏) ―ミンナドコヘ行ッテシマッタノ? ―コンナニ堅ク閉ザサレテハ私タチトテ入リコメナイ ―サッキハ酷イ雨ダッタネ ―終ワリニヨク似タ始マリダッタ (詩のレシピ13)#pwGT組

2014-10-03 06:34:45
春森しゆう @junju_usako

中学生と交換日記をしている。 お祭りが好き、感じるのが好き、交換が好き。 遠出は怖い。人混みが苦手。「ひとり」が嫌い。 変わらないところと変わったところ。 「落ち葉が舞うより桜が舞うのが好きです。」 机の落書きを消さなかったんだね、母さん。 (詩のレシピ13)#pwGT組

2014-10-03 09:17:08
春森しゆう @junju_usako

触りたいが先か 触れているが先かに分かれる。 猫に出逢えば手を伸ばす。 触れずにもう触れている柔らかな毛。 好物を食べたなら浮かんでくる顔。 熱が出たら豆腐とプリン。 白を選んで着るのは空がつながっているから。 窓を眺めない間に青い鳥が横切った。 (詩のレシピ13)#pwGT組

2014-10-03 18:34:54
春森しゆう @junju_usako

積み上げられた優しさががらがらと音を立てて崩れた。としても優しさは消えない。始まりがどちらからだったか憶えていないけれど今はどちらでもいい。雨に打たれるのがきらいで傘を手放せない。のは口実であなたがくれた傘に咲く花。手の甲が割れてくちびるが芽を出す。(詩のレシピ13)#pwGT組

2014-10-03 18:46:41
春森しゆう @junju_usako

閉じたり開いたりする花が 何度も生き直す。 笑顔を見たら開いていく 朝の傘が折れて夜にぽとぽと落ちた。 握ることで開いてみせる赤い指が胸を掴む。 馬上の風は馬に乗らないと見えない。 蹴る腹に私が痛む。 タテガミが高く高く跳ねた。 (詩のレシピ13)#pwGT組

2014-10-03 19:36:36
akutsu ayumu ꪔ̤̮" @ayusuke_

あらざるべき白煙の春は 野生の雨となった しとしとしとしとしと、続く、 腐乱する屋根 町中まで跳ねた尾鰭 鴉 飼い猫は消え 蠅は飽いた 誰も看取ってはくれない傘が 仄かに 土を掻く (詩のレシピ13)#pwGT組

2014-10-03 18:41:41
s.kaneco @000214

@000214: たてまわした障子の中 椀種のような太陽を見た 獺のように膳を広げ 家族は待つ 十月十日 長い旅が残した渇きが 母を呼ぶ声になった 古い産衣と肌守りも見なくなって久しい いつかの安堵もどこにあるのだろうか (詩のレシピ14) #pwGT組

2014-10-04 08:40:21
春森しゆう @junju_usako

雪見障子からの眺め。 縁側の暖かさが本を読むには眩しい。 羽子板が弾いたみんなの奇声が羽になる。 並んで座る暇のなかった父母が 暗闇に並べる日は ずっと先でいい。 もがりを塀に変えておいたのは守り神。 五種の花が舞う。 砂利を踏んで闖入者を追う。 (詩のレシピ14) #pwGT組

2014-10-04 15:44:50
春森しゆう @junju_usako

北から南から届いた酒瓶。 修学旅行土産の灰皿。 親戚中から届いた人形。 酒屋さんのおまけのコップ。 ぎちぎちに詰まったリビングボードに 飾りきれない想いが溢れる。 昔、友達の家ごとに匂いがあった。 今日、みゆきちゃんちの匂いがした。 (詩のレシピ14) #pwGT組

2014-10-04 16:02:48