@_h_japan さんの「自殺率の規定要因分析」

@_h_japanさんの「自殺率の規定要因分析」研究ツイートのまとめ。 かなり詳細に研究プロセス・結果を記述なさっています。   (関連まとめ) 清水康之さんの自殺対策支援活動:http://togetter.com/li/72533
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→ 「殺人率」は、中核地域の辺縁に位置する「半周辺地域」(中核地域と競争関係にありつつ経済的に劣位にある地域)、つまり「都市化が進んでいるが中核地域よりは貧しい地域」、で多い。 http://bit.ly/cjxQqH

2010-10-23 11:05:00
h @_h_japan

→西日本に偏っているのは、西日本は古代より直系家族であり、核家族化が進んで(http://bit.ly/c7BCqr )集団圧力が弱いため、経済競争で追い込まれた人々(とりわけ求職上不利な低学歴中高年男性http://bit.ly/8nwZzo )は、自殺より他殺を選ぶのだろう。

2010-10-23 11:19:46
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→同様に、「周辺地域」(農村地域http://bit.ly/cRlysT )つまり「都市化が進んでおらずそれゆえ同時に貧しい地域」では、中核地域との競争関係にすら入れず絶望に追い込まれるため、また農村的な集団圧力により、他殺より自殺を選ぶ。http://bit.ly/anGFFT

2010-10-23 11:26:41
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→自殺率と相関が最も強いのは「農業率」だが、農村部では若者が都市部へ流れて高齢化が進むため、「高齢者率」が高くなり、「ガン死亡率」「脳梗塞死亡率」が高くなる。自殺率とそれらの率は、高い相関にある(http://bit.ly/c5fTbv )。病苦による高齢者の自殺が考えられる。

2010-10-23 11:56:33
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→ただし、日米韓独仏露フィンランドでは高齢者(と中年男性)の自殺が多い(http://bit.ly/d4l8nx )が、英・ニュージーランド・ノルウェーでは高齢者の自殺が不思議と少ない(http://bit.ly/99HKqMhttp://bit.ly/bdSRWS )。

2010-10-23 12:02:11
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→自殺率の高い秋田県や島根県などは、中高年の自殺率は並程度で、高齢者の自殺率は高いhttp://bit.ly/3TJ8C4 。自殺率と殺人率は直系家族うんぬんよりも、高齢者率で説明すべきだろう。→

2010-10-23 17:47:24
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2009年の、殺人による死亡者は474人、交通事故による死亡者は4914人、自殺による死亡者は30649人。それ以上の死因は「老衰<不慮の事故<肺炎<脳血管疾患<心疾患<悪性新生物」とつづくhttp://bit.ly/80qZMC 。1986年から2007年まで「自殺≒老衰」だ。

2010-10-24 01:31:15
h @_h_japan

老衰ほどの数がある自殺は、老衰ほどは自然的でない。http://bit.ly/nKfYE は国内での分析の結果だが、そこでの「定数(-7.5)」のなかに、全都道府県に共通の要因(国レベル要因)が隠れている。人口調整後の自殺率は、他国より高いからだ。他国の定数はもっと低いのである。

2010-10-24 01:42:33
h @_h_japan

国内分析では解明できないのが、国レベル要因であり、具体的には、経済水準・発展速度・離婚率・結婚率・出生率・女性労働率(社会経済要因)、緯度(自然要因)、そして、住宅補助・積極的労働市場支出(国政要因)、が有意である。そのうちわれわれが合意によって最も改善しやすいのが、国政要因だ。

2010-10-24 01:46:45
h @_h_japan

ぼくはここ5年ほど、国政要因(公的支出)の規定要因を研究してきた。でも、重要なのは規定要因(決定論的部分)ではなく、標本誤差(非決定論的部分)であることに気づいた。標本誤差はつねに0よりも有意に大きかった。ここに合意による変革の可能性がある。ではどうやって合意を形成するのか。

2010-10-24 01:50:28
h @_h_japan

それが問題だった。そこで、老衰と同頻度の自殺、とりわけ「国政要因による自殺」は、流動化した後期近代では、われわれの誰にとっても生じうるリスクであり、われわれの合意によって減らせるものであるから、それを(ルーマン的意味で)「科学」的に認識さえできれば、合意を形成できると思われた。

2010-10-24 01:56:24
h @_h_japan

訂正: ×「標本誤差はつねに0よりも有意に大きかった。」→○「国内レベルでの攪乱項(誤差)の標準偏差はつねに0よりも有意に大きかった。」

2010-10-24 02:39:03
h @_h_japan

なお、「住宅補助」の支出規模は「積極的労働市場政策支出」の半分程度であり、単なる(所得に応じた)給付で手続きも簡単であるから、労組などを通じた組織的な運動ではなく、「自殺率抑制」などのための国民の合意(や世論)によって、拡充可能だと思われる。

2010-10-24 15:06:02
h @_h_japan

今日は一日中、先行研究を再収集していたけど、いちばんびっくりした文献は、これ。なんと、パトナムのソーシャルキャピタル指数が高い州では、自殺率が「高い」という分析結果(表1、表2)。もちろん失業率や社会支出で統制してある。理論的解釈は無し。http://bit.ly/bjoHrX

2010-10-25 20:37:27
h @_h_japan

もし↓の先行研究の分析が妥当なら、人の「孤立」を救うのはいかに難しいかを、考えさせられる。地域のコミュニティで救われない人は、いくらか存在するわけで、そういう人にとっては、地域コミュニティが活性化するほど、そこでの孤立度を強めるのかもしれない。→

2010-10-25 21:02:34
h @_h_japan

そういう、そもそも孤立しがちな人にとっては、地域コミュニティを活性化するよりも、むしろ「ドライ」な行政的支援(公的支出にもとづいた救貧給付や積極的労働市場政策)のほうが、彼らを絶望や孤立から救うのかもしれない。

2010-10-25 21:05:54
h @_h_japan

しかし↓の分析には一つ盲点があったかもしれない。それは、アメリカでは高年齢者のほうが自殺が多いという年齢効果を、コントロールできていない(高齢者率による擬似相関かもしれない)ことだ。あと、住民移動率とソーシャルキャピタルが負の相関があって多重共線性を引きこしている可能性もある。

2010-10-25 21:41:05
h @_h_japan

もう一つ最新文献を紹介。こちらは非常に周到な分析。しかも掲載誌は医学分野でインパクトファクター第2位を誇る『Lancet』誌である。積極的労働市場政策支出が、失業率上昇による自殺率の上昇度を有意に抑えるとの分析結果だ。http://bit.ly/8h2qB8

2010-10-26 00:54:17
h @_h_japan

→ただしこの分析では、年齢調整はされているものの、離婚率などの統制はされていない。その点でまだ不十分だ。離婚率・結婚率・出生率など、統制すべき第三変数は多い。

2010-10-26 00:56:39
h @_h_japan

失業率と自殺率の関係について、先行研究が興味深い。たいがいの国では、固定効果モデルを使った分析でも、失業率が増加した地域で自殺率が増加した。しかしNeumayer (2004 http://bit.ly/bTFyDe )はドイツの1980-2000年データで逆の関係を見いだした。

2010-10-26 23:30:40
h @_h_japan

アメリカの1972-1991データ(Ruhm 2000)や1990-2000データ(Flavin and Radcliff 2009)では、固定効果モデルで、失業率と自殺率は正の関係。つまりアメリカとドイツでは失業率と自殺率の関係の正負が逆であることが示されている。

2010-10-26 23:56:22
h @_h_japan

日本については、West (2003)と金子ほか(2004)が、2001-2002と1989-2000のデータで、pooled OLSやGMMにより、失業率の自殺率への正の効果を示している。固定効果モデルなどのパネル分析を使った文献は、まだ見つからない。

2010-10-27 00:01:59
h @_h_japan

国内分析の文献が多いけど、国内分析では(とりわけ所得再分配における地方自治体の権限が弱い日本では)分かりにくいのが、「所得再分配制度が自殺率を抑制する効果」だ。そこで出番なのが、多国間比較パネル分析。

2010-10-27 00:39:33
h @_h_japan

昨日つぶやいた『Lancet』誌掲載のStuckler et al. (2009) はEU26ヵ国の1970-2007年データを固定効果パネル分析している。ちなみに使っているソフトはStataだ。

2010-10-27 00:40:13
h @_h_japan

「失業率の変化率」と「積極的政策への支出」あるいは、「失業率の変化率」と「家族への支出」の、交互作用が、それぞれ、「各支出」と「失業率の変化率」(自殺率に正)とは独立に、有意な自殺抑制効果(p<0.05, p<0.01)を示した。前者のほうが係数が大きいため政策的効率性が高い。

2010-10-27 00:44:02